小1国語科「わらしべちょうじゃ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小1国語科「わらしべちょうじゃ」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・小野田雄介
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、昔話の読み聞かせを聞き、我が国の伝統的な言語文化に親しんだり、文章を読んで感じたことを共有したりする力を育てていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、1.で示した資質・能力を育むために、「昔話の読み聞かせを聞いて、感想を伝え合う」という言語活動を設定します。
読み聞かせる昔話は「わらしべちょうじゃ」です。「わらしべちょうじゃ」は、男が夢の中で「最初に触ったものを離さないでいれば、きっとよいことがある」と言われ、その通りに最初に触ったわらしべを手に歩いていると、出会った人々によって、わらしべがみかん、布、馬と交換されていき、最後は立派な屋敷を手に入れる、というお話です。
一本のわらしべが、次々と交換されて変わっていくところは、このお話の面白いところでしょう。
このように単純に物々交換が成立していくことは、現実的には考えにくい展開です。しかし、出会った人物によって交換の理由が語られつつ、次々と交換が成立していくような、このシンプルな展開こそ、昔話という言語文化のもつ特質の一つと考えられます。
また、一方で、このお話には、男が人に出会い、その人が持っているものと交換する、という繰り返しの構造も見られます。この繰り返しによって、お話がテンポよく進んでいると言えるでしょう。
このような構造は昔話や民話に多く用いられており、この点も昔話という言語文化の特質の一つと言えます。
本言語活動における、伝統的な言語文化に親しむ姿とは、ここまで述べたような昔話がもつ、シンプルでリズミカルな展開を楽しんでいる姿、と考えられるでしょう。
「わらしべちょうじゃ」を聞いて、感想を伝え合うことは、そうした面白さを感じた1年生が、1年生なりの言葉でそのことを表現することになります。児童が感じている面白さを認めていきながら、昔話という言語文化に親しめるようにしていきましょう。
4. 指導のアイデア
本単元では、教師の読み聞かせという「対話的な学び」を通して、昔話という言語文化に親しみます。
対話的な学びは、読み聞かせを聞いて感想を共有することです。近年は、デジタル教科書等の発達で、あらかじめ吹き込まれた音声データを教室で聞くことは珍しいことではなくなってきました。児童が聞きたいタイミングでそうした音声を聞けるようになったこと自体は、様々な側面からその価値を語ることができます。
しかし、一方で、データへのアクセスが容易になったからこそ、教師の声で読み聞かせを行うことにもまた、価値を見出せるようになった、とも言えます。
口伝えの文芸と呼ばれる昔話の場合、教師の声で児童に聞かせることには十分な価値があります。1年生にとって、身近な存在である教師の声でお話を聞けることは、安心感もあって、お話の世界を楽しめることでしょう。
教師も子供たちの反応を見ながら、読むことで対話的な学びの空間を演出することができます。
大人から子供へ、お話を声で聞かせる行為そのものが、口伝という言語文化の実践とも言えます。
タイミングを見て、「昔から、こうやって大人が子供に、お話を読んで伝えてきたんだよ」と伝えられると、言語文化へ親しむことにつながります。
5. 単元の展開(1時間扱い)
単元名: きいてたのしもう わらしべちょうじゃ
【主な学習活動】
・第一次(1時)
①「きいてたのしもう」という学習課題を設定する。
②「わらしべちょうじゃ」の読み聞かせを聞く。
③ お話を聞いて感じたことを交流する。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美