小4国語科「心が動いたことを言葉に」板書例と全時間の指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「心が動いたことを言葉に」(光村図書)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小四 国語科 教材名:心が動いたことを言葉に(光村図書・国語 四下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/千葉県教育庁東上総教育事務所指導主事・積田裕子

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、児童が日々の日常のいろいろな場面で、五感で感じたことや体験したこと等から自分の心が動いた瞬間を詩に書きます。自分の思いを詩に表現するために、詩の組み立てを考え、言葉を吟味したり、言葉のリズムや響き等に着目したりして表現ができるようにします。
その後、書こうとしたことが明確になっているかなど、詩に対する感想や意見を伝え合うことで、自分の詩のよいところを見つけることができる力を育てていきます。互いの詩を読み合うことで、語彙を豊かにすることにもつなげていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

これまでに児童は、詩を楽しく読んだり、詩集を作ったりするなど、「詩」に関する学習を積み重ねてきています。
本単元では、何気ない日常の場面において、「心がどのように動いたのか、どのような感情が湧き上がったのか」と、自分の心の動きと向き合うことから学習を始めます。
その後、自分の心が動いたその瞬間を詩に表現しようとするとき、これまで、「楽しかった」「おもしろかった」「驚いた」等の限られた心情語で表現することが多く見られた児童は、自分の思いをどのような言葉で表現すればよいのか分からず、詩を書くこと自体を苦手に感じてしまうことが考えられます。
そこで本単元では、「言葉を選んで詩を書き、友達と読み合おう」という言語活動を設定します。
ここでは、自分の心が動いたことの中から、一番読み手に伝えたいことを詩に表すようにします。
読み手を意識して詩を書くことにより、自分の思いを明確に伝えるために言葉を選んで書くことの必要性と、学びの調整の場面が必然的に生まれます。

本単元では、このような言語活動を通して、言葉を選んで自分の思いを表現することのよさに気付き、友達と詩を読み合うことで自分や友達の詩のよいところを見つけ、自分の思いを詩で表現して伝えることの楽しさを実感することにより、生活のいろいろな場面で自分の思いを言葉にして詩を書くことに主体的に取り組む態度を育成していきます。

4. 指導のアイデア

単元の導入の1時間目は、教師が用意した複数の写真を提示します。
子供たちはその中から、自分が興味をもった写真を1枚選びます。そして、なぜその写真を選んだのか、その理由を話し合います。それこそが、自分の心が動いた瞬間であり、読み手に伝えたい自分の思いであることを実感させます。そこから、本単元のゴールである「言葉を選んで詩を書き、友達と読み合おう」を確認し、学習の見通しをもちます。

2時間目は、既習の「自分だけの詩集を作ろう」に例示されている詩を、作者が込めている思いと、その表現の工夫や詩の組み立てとの関連性を意識しながら読みます。
具体的には、色や形、音、匂い、触った感じ等、五感を働かせた表現の工夫や比喩表現、様子を表す言葉等に着目したり、連の役割を捉えたりします。
そして、作者の伝えたい思いとぴったり合った言葉や表現の工夫を使って詩を書くのだということに気付き、詩を書くときのポイントをまとめます。

3時間目から5時間目は、心が動いた瞬間の様子を想起し、伝えたい思いを軸にして、言葉を広げる活動を通して詩を書きます。
まず、読み手に伝えたい自分の心の動きを中央に位置付けて、言葉のマッピングで言葉を広げていきます。そして、マッピングした言葉の中から、自分の一番伝えたい思いに合う言葉を吟味して選びます。次に、伝えたいメッセージをもとに詩の組み立てを考えて、複数の詩を書きます。
そして、読み手に与える印象を比べることで、自分の一番伝えたい思いに合う組み立てを選びます。

6時間目は、書いた詩を友達と交流しながら推敲します。
ここでは、2時間目にまとめた「詩を書くときのポイント」に沿って、交流します。表現の工夫や詩の組み立て(連)と伝えたいことを関連付けながら推敲することを交流の視点とします。

単元の終末の7時間目は、完成した詩を読み合って、互いの表現の工夫を見つけて感想を伝え合うことで、自分の詩の内容や表現のよいところを見つけて、「詩を書くこと」の楽しさを味わうことができるようにします。
そして、これまでの学びを自分の言葉でまとめて、振り返りをします。
ここでは、日常生活と結び付けて、これから自分の思いを伝える場面において、手紙など文章を書くときにも、この学習で学んだ自分や友達の表現の工夫のよさを生かしていけることに気付かせます。
このような学習を通して、自分の思いを誰かに伝えることを厭わず、表現することの楽しさを実感することで、今後の「書くこと」の主体的な学びにつなげていきます。

5. 単元の展開(7時間扱い)

 単元名: 心が動いたことを言葉に

【主な学習活動】
1時
① 教師が用意した複数の写真から自分のお気に入りの1枚を選び、選んだ理由こそが、心が動いた状態であることを捉えて、「自分の思いを詩に表現する」という単元の見通しをもつ。

2時
① 教科書教材の既習の詩をもとに、作者の思いと表現の工夫、詩の組み立てを読み、伝えたい思いを「詩を書くときのポイント」にまとめる。

3時
① 日常の様々な場面において、1人1台端末を使って「自分の心が動いた場面」を撮りため、撮影したときの心の動きをコメント機能で簡単に書き加える。〈 端末活用(1)
② お気に入りの写真を1枚選び、一番伝えたい思いを明確にする。

4時
① 選んだ理由をマッピングに書き、自分の感じたことについて言葉を広げる。  

5時
① 伝えたい思いに合う詩の組み立てを考えて、マッピングをもとに詩を書く。〈 端末活用(2)

6時
① 書いた詩を「詩を書くときのポイント」をもとに、友達と交流をしながら推敲する。
② 1人1台端末を活用して、詩の組み立てを変えたり、言葉の入れ替えをしたりしながら、自分の伝えたい思いを詩に表現できているか確認する。〈 端末活用(3)

7時
① 書いた詩を友達と読み合い、感想や意見を伝え合うことで自分の詩のよさに気付く。〈 端末活用(4)

板書例、発問例、端末活用例と全時間の指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

教師が用意した複数の写真の中から、心が惹かれた写真を1枚だけ選ぶようにします。
選んだ写真ごとにグループになり、選んだ理由について話し合います。そこでは、同じ写真を選んでいてもその理由が様々であることに気付きます。そして、その思いこそが、心が動いた瞬間であることを確認し、どのような心情語で表せるのか話し合い、その思いを詩に表すことについて、学習の見通しをもてるようにします。
さらに、心が動いた場面を日常生活の中から見つけ、1人1台端末のカメラ機能を活用したり、メモに記録したりして常時活動として取り組んでいくことを確認します。

ここにある4枚の写真を見てください。どの写真に惹かれましたか。同じ写真を選んだ友達とグループになって、選んだ理由を話し合ってみましょう。

雪をかぶった富士山が、きれいだなと思いました。富士山は本物を見たことがありますが、やっぱりきれいだな、と思い選びました。

私は、富士山はやっぱり日本一の山だなと思いました。雄大な富士山は、日本の自慢の山です。

みなさん、友達と理由を聞き合って、どんなことに気付きましたか。

同じ写真を選んでいても、それぞれ、思っていることは違うなと思いました。

本物を見たいという人もいれば、本物を見て感動したという人もいました。

みんなの理由がそれぞれ違うのは、どうしてでしょうか。

写真を見て感じることは、人それぞれだからです。気持ちの動きは、みんな違います。

ここでは、みなさんの「心が動いた瞬間を詩に書こう」という学習をします。
詩は、すぐに書けますか。心が動いた瞬間があったら、これから、1人1台端末を活用して撮影したり、メモをして記録したりしておきましょう。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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