小1生活「あきを さがそう」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「あきを さがそう」の単元を扱います。
執筆/高知県公立小学校教諭・窪内真歩
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
高知県公立小学校校長・尾中映里
目次
年間指導計画
4月 | どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム) |
5月 | がっこう だいすき |
6月 | きれいに さいてね |
7月 | なつが やって きた |
8月 | いきものと なかよし |
9月 | あきを さがぞう |
10月 | あきの おもちゃを つくろう |
11月 | あきまつりを しよう |
12月 | じぶんで できるよ |
1月 | ふゆを たのしもう |
2月 | しん1ねんせいに がっこうの ことを つたえよう |
3月 | もうすぐ 2ねんせい |
単元目標
校庭や校外に出かけ、草花や樹木、虫などの動植物を観察したり木の実などを集めたりする活動を通して、それらの違いや特徴を見付けることができ、身近な自然の様子が夏から秋になって変化していることに気付くとともに、秋の自然と関わりたいという思いをもち、秋の自然を生かした遊びを楽しむことができるようにする。
本単元と関わりの深い幼児期の経験
- 秋の草や木の実で遊んだり集めたりした経験。
- セミやバッタ、トンボやコオロギなどの虫を見付けたり捕まえたりした経験。
- 芋掘りをしたり採ってきた芋を食べたりした経験。
- 気温の変化によって衣服の調節をした経験。
- 自分の経験や考えを、友達や先生に伝えた経験
- 自分の考えを伝えたり友達の考えを聞いたりして、よりよい考えを実現していく経験。
学習の流れ(全5時間)
今の季節は何だろう?
夏かな? まだ暑いもん。
秋かな? 夜は涼しいよ。
セミの鳴き声もコオロギの鳴き声も聞こえるから……。
【小単元1】きせつの へんかを かんじたい(2時間+常時活動)
①校庭で秋を見付けよう
「今の季節は何だろう?」という問いをきっかけに、まだ夏が残る9月の初めに校庭に出かけます。
「まだ暑いから夏だよ」「夜は涼しいから秋かも?」
夏か秋かはっきりしないことで、子供は季節に関して、諸感覚を働かせて感じ取ろうとします。その感覚をもって活動を始めることで、より秋を意識し、自然の変化に気付くことができます。
校庭に出ると、子供は幼児期の経験を基に秋や夏を探します。
「セミが鳴いているよ。まだ夏かな?」「こっちにコオロギがいるよ。コオロギは秋の虫だって保育園では言ってたよ」
子供は、幼児期の経験を基に校庭の虫や草花を観察することで、ますます夏なのか秋なのかが気になります。
自分の考えを確かにするために、「教科書のポケット図鑑を見よう」「図書室の本を調べよう」と、自分が分からないことをこれまで調べた方法で取り組もうとします。調べたことを基にしても季節がはっきりしないことから、どうすればよいのか友達の考えに耳を傾け始めます。
「全部、秋ではないけど、秋って言ってよいのかな?」「全部、夏ではないけど、夏なのかな?」と、子供は友達の考えを聞くうちに、季節をはっきりとすることができないことに気付きます。
このような伝え合い交流から、子供は「夏と秋の間かもよ」と、季節が移り変わっている途中の時期であることに気付きます。子供は季節が移り変わる様子を「急に暑くなったり、急に寒くなったりしないよ」「少しずつ変わっていくよ」「夏のものはこれからどんどんなくなっていって、秋のものはどんどん増えていくよ」などと発言します。
このような伝え合い交流をすることによって、子供は、夏の終わりや秋の始まりに気付くことができます。
【空間的支援】
探さなければ秋が見付からない時期に本活動を行うことで、季節の変化を子供が感じることができるように時間設定をします。
【物的支援】
事前に図書の先生にお願いして、夏と秋の虫や植物に関する本や図鑑を準備してもらい、手に取りやすいように置いておきます。
子供が「校庭で捕まえたセミやコオロギを、教室で飼いたい」と発言に対して、教師は「本当に連れて帰ってよいのかな?」と問いかけます。すると子供同士で「セミはすぐ死ぬからダメだよ」「コオロギは保育園で育てたよ」「育てたい!」などと、幼児期の経験を基に、虫のことが大好きな子供が自己を発揮しながら飼育を始めようとします。
大切に育てる虫の生態や育て方について、教科書や図書室の本で調べます。そして、子供は「コオロギはナスとかキュウリとかを食べるよ」「かつお節も食べるよ」「ぼくが家から持ってくる!」「バッタはエノコログサを食べるようだ」「校庭のネットの所に生えてたよ」「採ってこよう」「そういえば霧吹きも必要だね」などと伝え合い、飼育に向けて準備します。
【教師の支援・援助】
子供の虫を飼いたいという気持ちを尊重し、「自分達で大切に育てよう」という気持ちを育むようにします。
【物的支援】
虫のケースや虫かごなど飼育に必要なものを使用できるように準備をしておきましょう。子供が自ら準備していく過程を見守るようにすることが大切です。
②秋は見付かったかな
観察して気付いたことを話し合い、発見カードに書きます。「コオロギがいたから秋だね」「セミがいたからまだ夏もあるよ!」などと、秋は見付かったものの、夏もまだ残っていることを板書で整理し、可視化します。そうすることによって、季節は少しずつ変化していることを、学級で共有することができます。
【物的支援】
夏の校庭の様子の掲示を比較対象として使うと、花や虫など、話し合う視点が定まって比較しやすくなります。
【物的支援】
子供が発見カードを選べるようにします。春みつけで使用したカードや、罫線を増やしたカードなどを何種類か用意をしておきましょう。この時期の子供は書きたいことも増えてきて、表現も少しずつ豊かになってくるので、子供の実態に合わせて準備しておきましょう。
【物的支援】
どんなことを書けばよいのか分からない子供もいます。書くヒントになるように、夏から「観察プロカード」(下の画像)を掲示しておくといよいでしょう。
子供は、①校庭で秋を見付けよう、②秋は見付かったかなの活動を常時活動として繰り返し行うことで、季節の変化を意識しながら、秋の深まりを感じるようになります。
●思考力の芽生え
幼児期の経験や観察で見付けてきたものを手がかりに、話し合ったり調べたりする活動を通して、自分の考えを話したり友達の考えを聞いたりしながら、夏と秋の間の季節や季節の変化に気付き、確かめようとします。
●自然との関わり・生命尊重
幼児期の経験を手がかりに、校庭での秋を見付ける活動を通して、夏や秋の植物や虫に触れる中で、どちらの季節も感じることができる時季・季節の間があることに気付き、好奇心や探究心をもってもっと秋を見付けようとします。
●言葉による伝え合い
夏なのか秋なのかについて話し合ったり調べたりする活動を通して、お互いの考えを出し合う経験を重ねる中で、自分の考えを相手に聞いてもらう嬉しさや友達の考えを聞く楽しさに気付き、言葉による伝え合いを楽しむようになります。
評価規準
知識・技能:色や形、においなどを通して、校庭の様子が、夏から秋に近付いていることに気付いている。
思考・判断・表現:幼児期や日常の経験を思い起こして、秋の自然の特徴を探している。
主体的に学習に取り組む態度:校庭の自然に関わりたいという思いをもち、秋の動植物や自然の特徴を探そうとしている。
【小単元2】もっと もっと あきを みつけたい(3時間+常時活動)
①校庭で深まった秋を見付けよう
学校へ来る時に、柿が木になっていたよ!
幼稚園のイチョウが黄色になっていたよ!
秋みつけに興味をもった子供は、自分が見付けた秋について伝えるようになります。
秋が深まってきた頃に、校庭へ出かけます。
もうセミは鳴いてないね。
葉っぱの色が変わってきたよ。
9月初めと違うことに、子供は気付きます。夏と秋の間だった時とは違い、自分が思う秋になっていることに気付いた子供は、もっともっと秋を見付けたくなります。
【空間的支援】
地域によって学習する時期が違いますので、深まった秋を感じられる時期に出かけるとよいでしょう。
②校外で秋を見付けよう
「ぼくも幼稚園のイチョウを見てみたい!」「柿が本当になっているのか確かめたい!」と、自分が見ていない秋を確かめたいという思いや、もっともっと秋を見付けたいという思いを十分に引き出した上で、校外に出かけます。
「本当にイチョウが黄色になっている!」「かきも本当にあるよ!」「葉っぱがいっぱい落ちているね」「茶色の葉っぱが多いよ」「フウセンカズラの色が茶色になっているよ!」「振ると、中でカラカラ音がするけど何だろう?」「この赤い実は何だろう?」と、校庭では見付けられなかった様々な秋を見付けることができ、子供はますます秋に興味をもちます。
【空間的支援】
校外に出る際には事前に下見を行い、危険な場所がないか、トイレや水分補給などの休憩ができる場所があるのか、確認しておきましょう。
【教師の支援・援助】
校外に出る場合どんなことに気をつけないといけないのか、子供の発言を生かしながらルールやマナーを確認しましょう。
1人1台端末活用のポイント
ICT端末を活用して、見付けた秋を写真に撮ります。虫など、動くものについては動画で撮るとよいでしょう。撮った写真や動画を活用して、色や大きさ、形や動きなど、次時の話合い活動につなげることができます。
写真や動画であれば、何を見付けたのかも分かりやすいので、表現活動が苦手な子供も、話合い活動に参加しやすくなります。
③どんな秋が見付かったかな
校外に出て気付いたことを、撮ってきた写真や動画を見せながらグループで話し合います。
【物的支援】
話合いの進め方については、黒板に示しておきましょう。
グループで話し合ったことを基に意見を出し、板書を使って整理します。秋が深まっていることを、学級で伝え合います。
最後に発見カードにまとめ、次はどんな活動をしたいのか話し合います。
【教師の支援・援助】
子供の思いや願いを引き出し、次時への意欲を高め、見通しをもてるようにしましょう。
●思考力の芽生え
見付けた秋について話し合う活動を通して、発見をして驚いたり不思議に思ったりしたことを友達と伝え合う中で、友達が同じ思いをしていたり、自分とは違うことに興味をもっていたりしていることに気付き、秋についてもっと知りたいと思うようになります。
●自然との関わり・生命尊重
校庭や校外で秋の植物や虫を見付ける活動を通して、以前の秋みつけと違って、夏のものがすっかりなくなり、秋のものでいっぱいになっている様子に気付き、好奇心や探究心をもって深まった秋に意欲的に関わろうとします。
●言葉による伝え合い
見付けた秋について話し合う活動を通して、発見をして驚いたり不思議に思ったりしたことを友達と伝え合う中で、発見した感動を友達に伝えるためには分かりやすく話すことが必要であることに気付き、言葉を選んで伝えようとします。
評価規準
知識・技能:校庭や校外の様子が、夏から秋に変化していることに気付いている。
思考・判断・表現:幼児期や日常の経験を思い起こしたり、秋の自然の変化を想像したりして、夏の自然との違いを探している。
主体的に学習に取り組む態度:校庭や校外の自然に関わりたいという思いをもち、全身を使って秋の動植物や自然の特徴を探そうとしている。
次の単元「あきの おもちゃを つくろう」に向けて
次の単元に向けて、以下のような支援や手立てを行うようにします。
【空間的支援】
校庭や校外で集めた秋の自然物は種類ごとに分けて、子供が手に取りやすい場所に置いておきます。いつでも触れられるようにしておくことでその物の特徴に気付き、どんな風に遊んでみたいかなど、次の単元につながります。
【空間的支援】
校庭や校外に出ても、秋の自然物が少ない環境の学校もあるでしょう。その場合、学級通信等で発信し、家庭の協力を得ることも大事です。普段から学級で秋を見つけていることを発信しておくと、「休みの日に○○に行って、大きなまつぼっくりを拾ったよ!」「家のどんぐりを拾ってきたよ!」と、自分が見付けた秋の物を持ってきます。
朝の会にコーナーを作っておき、そこで見付けた秋を発表する場を設けることで、子供はますます秋見つけに興味をもち、自分も集めてみんなに紹介したくなります。
【教師の支援・援助】
その様子を学級通信等でさらに発信し、家庭へつなげていくことで、身の回りに秋のものが少なくても、どんどん集まるようになります。
参考資料/
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導書 朱書編』(東京書籍)
・『高知県保幼小接続期実践プラン』高知県教育委員会
・『幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿』編著・無藤隆(東洋館出版社)
イラスト/高橋正輝