子供のやる気を引き出すには?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #13

連載
教師という仕事が10倍楽しくなるヒント~きっとおもしろい発見がある!~
特集
知っておきたい「保護者対応」関連記事まとめ
関連タグ

帝京平成大学教授

吉藤玲子
吉藤先生バナー

教師という仕事が10倍楽しくなるヒントの13回目のテーマは、「子供のやる気を引き出すには?」です。「主体的に子供が学ぶ」という授業が大切なことはよく分かります。しかし、どのようにすれば子供たちが主体的に学べるのでしょうか。子供たちが主体的に学ぶ、子供たちが意欲的になるような授業や活動の様々な方法を紹介します。

吉藤先生写真

執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等、様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。

子供たちから「もっとやりたい!」という言葉を引き出す

「主体的・対話的で深い学び」この言葉はいろいろなところで言われています。では、主体的に子供が学ぶというのはどういうことなのでしょうか。子供たちからの感想より先に教師のほうから「今日は楽しかったですね。またやりたいですね」「もっと続きがやりたいですか。来週もやりますよ」と言ってしまったことはありませんか? 大切なのは、教師より先にまず子供たちが「楽しかった!」「先生、もっと続きをやりたい!」って発言することなのです。そういう授業が組み立てられたら、子供たちが主体的に授業に取り組んだと言ってよいでしょう。そのような授業は、準備が大変かもしれませんが、子供たちからの前向きな発言によって、クラスの空気が変わってきます。子供たちが主体的に動き出すからです。

生活科の授業からのヒント

ここのところ、日本は四季が薄れてしまい、急に暑くなったり、寒くなったりという日々が繰り返されています。今年は、桜の花の開花もここ数年に比べ2週間ぐらい遅れました。やっと桜がきれいに咲いたと思ったら、強い雨や突風で散ってしまい、咲いていた時期が短く感じられました。それでも街の中が桜の花でピンク色になると「春が来たなぁ」と思います。

「ふゆをみつけよう」で子供が主体的になる授業

1月の終わりに「ふゆをみつけよう」という1年生の生活科の授業に講師で行くことがありました。思い出してください。今年の1月は暖冬でした。年末年始はとても暖かく、いつもであれば寒くて待っているのが辛い除夜の鐘も例年よりゆったりと待つことができました。元旦も暖かであった記憶があります。

そのような中、どのようにして「ふゆをみつけよう」の単元を組み立てたらよいのか、担任のY先生は悩んでいました。冬といったら皆さんは何を思い浮かべますか? 雪ですか? 氷の張った池ですか? カシャカシャと踏めば音のする霜柱ができた花壇ですか? 吐く息の白さですか? Y先生も子供たちといっしょに学校だけでなく地域を回り、いろいろと冬探しをしました。葉のついていない木々を見付けることはできましたが、観察用にバケツに水を張ってもなかなか氷ができない日々が続きました。

どうしようかと悩んだY先生は、冬の風に注目しました。冬ですから、当然、風は冷たいです。特に、強風になればヒューヒューと音が聞こえそうです。Y先生の学校は高層マンションに囲まれていたので、校庭は本当に北風が舞っているという感じでした。風を使った遊びを子供たちに考えさせ、工夫して遊ぶ授業を組み立てました。

ビニール袋の風船を飛ばす

Aグループでは、ごみ袋に使用している大きなビニール袋を活用して、大きな風船を作りました。45Lのごみ袋に空気をパンパンに入れて、しっかり口を結わいて、風船のようにして飛ばして遊びました。これが、ビュンビュン吹く北風にあおられて、すごく空高く上がるのです。やったことのない先生は、ぜひ試してみてください。もちろん、子供たちはみんな大喜びです。歌いながらポンポン、大きなビニール袋を飛ばしていました。

紙飛行機を飛ばす

Bグループは紙飛行機を作って飛ばしていました。自分たちで紙の種類を選び、折り方や大きさを工夫したり、飛行機の飛ばし方を工夫したりして試みていました。折り紙で飛行機を作った子供もいれば、厚紙で飛行機を作った子供もいました。いろいろなデザインの飛行機がありました。飛ばすときがまた楽しかったです。野球選手のようにポーズを取って紙飛行機を飛ばしている子供もいました。「エイッ!」と叫んで飛ばしている子供もいました。

凧を揚げる

Cグループは凧を作りました。凧といってもお正月に揚げるような大きな物ではなく、小さなビニールを工夫して割りばしに張った簡易なものでした。一生懸命走ってもなかなか揚がりません。その様子を見ていると、段々、「追い風に吹かれて走るとよい」「凧を揚げる高さなどを工夫していくとよい」などと話し合うようになっていく子供たちの姿を見ることができました。そして、長く凧が揚がったときは、大きな拍手をしていました。

風車を回す

Dグループは自分たちで作った風車を回して遊びました。風に当てて回してみたり、走ってみたり、振り回してみたり、いろいろしていました。そのときに1人の子供が「動いていないのに回るよ!」と叫んでいました。グループの皆が集まり、「風が動かしているんだよ!」と大喜びでした。

これだけ、たくさんの発見があった「ふゆをみつけよう」の授業。授業の最後にY先生が子供たちを校庭の真ん中に集めると、「先生、もっとやりたい!」「明日もやろうよ!」と先生が何も言わなくても子供たちから声が上がりました。このような子供たちの姿が「主体的に学ぶ」姿と言えるのではないでしょうか。冬の風は冷たいですが、このように楽しく遊ぶこともできます。冷たく、寒い冬の風から子供たちはいろいろなことを感じました。

この後、2月に東京にも雪が降りました。この授業に参加した子供たちは、Y先生が何も言わなくても長靴を履いて、雪遊びをする気満々で登校してきたそうです。そんな子供たちの姿を見たらワクワクしてきませんか?

係活動・当番活動からのヒント

教育実習を経験した学生がよく感想の中で、子供たち一人一人の役割をクラスの係活動や当番活動で学ばせることの大切さを知ったと言っています。先生方はクラスに係活動を設けます。「先生のお手伝いになるような係活動はやめましょう」という意見もありますが、子供がその活動を楽しく行えるなら私はよいと思います。何よりも係活動をすることで、一人一人の子供たちに責任をもたせることが大切です。

「私が休み時間に窓を開けないと、教室の空気の入れ替えができない」「自分たちが準備をしないと、学期末のお楽しみ会ができない」そんな思いは子供たちを意欲的にさせます。いろいろな係活動決めや当番活動決めがあると思いますが、私は担任時代、できるだけ細かく仕事分担をしていました。日直なら、朝のあいさつを大きな声でしっかり行う、朝の会や帰りの会の司会をする、その台本も決めておきました。係活動や当番活動は、何をしたらよいかを明確にすることが大切です。子供たちも活動内容がしっかり分かっていないと、何をしたらよいのか迷います。そして、役割をがんばった子供たちには教師がたくさんほめることが大切です。子供はみんなの前で注意されることは嫌ですが、ほめられることはうれしいのです。大人もそれは同じことです。

教師が活動内容を認めてほめる

おもしろい係活動として「お笑い係」「手品係」を設けているクラスを見たことがあります。「お笑い係」は、何をするのかなと思いましたが、楽しいクイズを毎日調べてきて、帰りの会で発表していました。一度、子供なりに工夫した漫才に挑戦している姿も見ましたが、これはちょっと難しそうでした。でもやってみようと思うところがすばらしいです。

「手品係」も道具がうまく使えないなど大変そうでしたが、成功したときは大きな拍手をもらってうれしそうでした。子供にやる気をもたせるためには、教師がその仕事内容を認め、ほめることが大事です。係活動や当番活動は、毎日のことなので、ぜひ教師のほうもほめる視点を見極めてしっかりと見守っていきたいものです。

吉藤先生連載13回イラスト

移動教室でのヒント

小学4年生以上から1泊や2泊の移動教室に出かけます。多くの学校が学年を小グループの班に分け、班長やその他、保健係などの役割を決めます。子供たちは移動教室が大好きです。でもそこでの活動を主体的にといって、すべて子供に任せていては、時間をロスし、喧嘩や問題が起きてしまいがちです。教師は子供たちが意欲的に動けるように仕事の内容を精選し、準備しておきます。キャンプファイヤーの係は火の神様などの手伝いもするので盛り上がります。この経験は学校内ではできません。

子供たちが意欲的に取り組むために

私は、校長として10年間、キャンプファイヤーを経験してきましたが、子供たちが意欲的に取り組めたと思うときは、教師が事前の準備をしっかりと子供たちと打ち合わせして取り組んでいたときです。やること、仕事の内容を子供たちが分かっていると、スムーズに行程が進みます。頼んでもいないのに子供から「先生、スピーカーを運びましょうか?」と言ってくることもあります。教師に言われる前に進んで仕事ができたときは、すごくほめることが大事です。そうすると、教師が何も言わなくても、「みんな、大きな声で歌ってください!」など子供たちだけで進めていくことができるようになります。

教師の準備が子供のやる気につながる

子供が意欲をもって主体的に動き出すと、それは教師の想像を超えて大きな力になり、教師のほうが驚かされることが多いものです。私たちは忙しい日々を過ごしていますが、何に時間を割いたらよいのかをよく考え、子供のために必要なことを準備すれば、子供のやる気につながります。そして、自分も励まされ、楽しく学校生活が過ごせるのです。

構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
教師という仕事が10倍楽しくなるヒント~きっとおもしろい発見がある!~
特集
知っておきたい「保護者対応」関連記事まとめ
関連タグ

教師の学びの記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました