算数の文章題が苦手な低学年にするお話例【樋口万太郎先生の音声つき】#先生のための先生のお話

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香里ヌヴェール学院小学校 教諭兼研究員

樋口万太郎

算数の計算は得意でも、文章題になると急に手を止めてしまう子どもたちには、どんな教え方が効果的でしょうか? この記事では、みんなの教育技術でもおなじみの樋口万太郎先生が、低学年を担任した時、算数の文章題を学習する際に必ずする指導法をご紹介します。ぜひここで学んで、子どもたちの苦手意識を克服できるように働きかけていきましょう!

先生のための先生のお話

この記事は、音声プラットフォームVoicyとのコラボ企画「#先生のための先生のお話」の取組です。ここで紹介するお話は樋口万太郎先生のVoicyで聞くことができます。間の取り方や声色など、子どもたちの前で実際に話す時の様子がイメージしやすい音源になっているので、ぜひ参考にしてください。

低学年の算数文章題を指導する際の3つのSTEP

STEP1

今日、みんなと考える問題はこれです。じゃあ先生、読みますね。

マンタくんはリンゴを5個持っています。 3個リンゴをもらいました。全部で何個持っていますか。

という問題です。今すぐに「先生、式かけるよ。」って、言ってくれる子もいますね。もう答えも出せそうなの。すごいねみんな。じゃあさ、式と答えを書く前に、今日はね、この今先生が読んだ問題を絵に表してみましょう。絵ですよ。じゃあ、ノート開けてごらん。今からこのノートに問題の絵を描いていきます。では、用意スタート。

*3分から5分ぐらい時間を取ります。

はい、では皆さんこの問題の絵が描けたようですね。じゃあ前に出て黒板に書いてくれる人。はい、〇〇さん。

リンゴの絵を描いているね。みんな何個描くかわかる? そうか、みんな言ってくれるように5個描くかな。見てみよう。5個描いたね。お、またなんかリンゴ描き始めたよ。みんな、リンゴ、次何個描くと思う? そうか、3個描くかな。見てみよう。はい、描けました。皆さんこれでしっかりと絵を描けてますか?

「描けてます」ってみんな言ってくれてるね。じゃあ、この絵を見て式を書いてみましょう。どんな式になるかな。△△さん。

はい。5+3。みんなさ、この5+3の5ってどっから出てきたの?

そうだね。リンゴ5個持っていますって描いてるよね。イラストで言うとここだね。じゃあこの3は?

そうかそうか、もらったリンゴの数なんだね。絵で言うとここなんだね。じゃあ5+3、5と3を合わせると何個になりますか。はい、 そうですね。8個になります。

【POINT】問題文を絵で表す
・問題文を読んだ後、その内容を絵で描くように指導する
・絵を描くことで、問題文の内容を視覚的に理解することができる

STEP2

*STEP1を数回行った後の授業を想定しています。

では、今日の問題を今から言います。

マンタくんは オレンジを7個持っています。2個オレンジをもらいました。全部でマンタくんは何個持っていますか。

はい。それではいつものように絵を描いてください。ただし、いつもは結構長い時間絵を描いてもいいよって言ってたでしょ。今日はちょっと時間を区切ります。今日は10秒で描きます。

「えーっ」て声が聞こえますね。でも、ちょっと10秒でやってみましょう。では、いきます。よーい、スタート。1、2、3、 4、5、6、7、8、9、10。

はい、描けましたか。そうですね。皆さん描けてないよっていう子が多いと思います。じゃあ、ちょっと時間を延ばします。20秒で描いてみてください。じゃあ行くよ。続きじゃないよ。あ、また新しく描いてみてください。

じゃあ、いきます。よーい、スタート。1、2、3、 4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、 14、15、16、17、18、19、20。

はい、どうですか。そうだよね。やっぱりこれまでね、1分以上、2分とか3分とか皆さん描いてきたけれども、急に20秒になると描けなくなるよね。

ということでですね、今日は、まず皆さんにこの問題の絵を、10秒とか20秒で必ず描けるという新しい技をみんなに教えます。それは何かと言えば、これからは絵ではなくてドット図で描いてみてください。

ドット図って何かと言えば、こういう丸です。丸。黒丸でもいいです。例えばですね、最初のリンゴ7個を白丸でこう描いたとして、次もらったリンゴを黒丸で描く。そんなふうに、今度は丸で描いてほしいんです。丸ならみんないけそうかな。

じゃあ皆さん、新しいノートのページを開けてください。今から10秒でいきましょう。皆さん、この問題をドットで表すことができるのかやってみます。ではいきます。よーい、スタート。1、2、3、 4、5、6、7、8、9、10。

さあ、どうですか。皆さん、描けましたか。お、描けてるって言ってる子いましたね。いいですね。お、早いですね。そうだよね。いつもこれまでは絵を描いてきたけれども、これからはこの問題をドット図で表してほしいなと思います。こういう丸ですね、丸とか黒丸とか、丸の中に文字を書いてもいいですね。

そうやってこの問題を図に表すっていったことをこれからしていきます。じゃあ、この問題の式はどうなるでしょうか。

【POINT】ドット図で問題を表現する
・絵を描くのが難しい場合や、時間がかかる場合は、ドット図(丸や点)で問題を表現する方法を教える
・ドット図を使うことで、素早く問題の構造を把握することができる

STEP3

*STEP2のドット図を使って問題を表すという活動を何度も行った後の授業です。先程までは1年生で取り組めることですが、今から行うテープ図は2年生で取り組むことです。

はい、では今日も問題を今から言います。いつものように問題をドット図で表してみましょう。では、今日はこんな問題です。

マンタくんは、リンゴを23個持っています。15個リンゴをもらいました。全部でマンタくんはリンゴを何個持っていますか。

じゃあ、いつものように20秒でいきます。よーい、スタート。1、2、3、 4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、 16、17、18、19、20。

はい、どうですか。 描けてる子もいるね。でも、なんかしんどかったって言ってる子もたくさんいるよね。そうだよね。ちょっとこれまではドット図で頑張って描いてきたけれども、この数が大きくなると、ドットを描くのがしんどくなるよね。

頷いてる子もいるよね。ということで、新しい技を皆さんに教えます。今度はですね、ドット図ではなくて、テープ図で書いてみます。

【POINT】テープ図で問題を表現する
・数値が大きくなるとドット図では表現が難しくなるため、テープ図(長方形のブロック)を使って問題を表現する方法を教える
・テープ図を使うことで、数量の関係性をより明確に表現することができる

【解説】文章題の苦手意識を克服するために

文章題につまずく子が増える原因のひとつにある「逆思考問題」

1年生ではそうでもなかったのに、2年生になると急に文章題、立式ですね、特に立式をすることが苦手となる子が増えます。これはいくつか原因があります。例えば、1つ目はですね、2年生でもそうかもしれませんが、足し算と引き算とかって言ったように、単元名がそんな風に何算すればいいのかって、これ、わかってる状態なんですよね。

なので、別にこの問題って「足し算かな? 引き算かな?」って思わなくても、単元が足し算なんだから足し算をすればいいっていう思考になってしまってるっていう可能性があるかなと思います。

そして、2つ目です。2つ目としては、「大きな数から小さな数を引きなさい」とか「出てきた順番に式を作っていくんだよ」と、こんな指導をすると、2年生のところからつまずいてしまう子が増えてしまいます。

2年生になると、逆思考っていう問題が出てくるんですよね。逆思考の問題って、例えば、

アサガオが昨日8輪咲いていました。今朝は25輪になっていました。何輪増えましたか。

という問題です。順番に出てきた数字で立式をすることができないということです。「25-8」といったように、問題の表現とは逆になる場合を逆思考と言うのです。

なので、先ほど言ったように「とりあえず文章題に出てきた順番に~」、「大きな数から~」とした時に、特にこの問題の構造を把握することなく解いてしまう。そんな子を育ててしまうってことです。そんな子を育ててしまうと、やっぱり2年生でつまずいてしまう。もしくは、もう高学年ですごく文章題が苦手なんですね。分数や小数が入ってきますから。分数÷分数なんか一番子供たちが苦手としてるのです。なぜかと言えば、その問題の構造をしっかりと自分で把握することができないからです。

NKSの重要性

「けテぶれ」学習法を提唱している葛原祥太先生が、「NKS」という自己学習力を引き出す思考法を実践しています。これは

N(抜き出す)
K(組み立てる)
S(整理する)


の頭文字を取ったもの。
つまり、抜き出したものを組み立てて整理する。この文章題指導においても、この「NKS」が当てはまりますが、僕はここで最後のSの整理するを式にするという風に考えました。

NKSのN=抜き出すということですが、この問題文の中から必要な数値を抜き出してくることですね。そして、K=組み立てるということになります。ここで、組み立てる時に、今回の指導POINTで伝えていた図を使うとか、絵を描くとか、テープ図を描くとか、そういったことを使って組み立てるということです。

そして最後、式ですね。式にするこの流れをしっかりと1年生の時から行っていくことが僕はとても大事だと思っています。よく1年生の指導を見ていると、問題文の下に線を引いていく、そんな指導を見ます。これは別に間違いではないですが、NKSで言うと、N(=抜き出し)をしているだけなのです。

式を立てるとなった時に、経緯がないんですよ。組み立てるということが抜けている。だから、例えば、線を引いた後に組み立てて、「じゃあ、線を引いたところを基にドット図で表してごらん」という活動を入れてあげることが大事です。問題文から必要な情報を抜き出し、図で組み立てて、最後に式にするという経験が大切なんですよね。

子供たちの理解度の見極め方

子どもたちの中には、この問題文を見て、すぐに立式することができる子もいます。そういう子は、自然と頭の中で情報を抜き出して組み立ててるんです。だから、式を書くことがすぐにできます。ただし、先ほども述べたように、ただ単にここは足し算という単元だからとか、順番に式を作ればいいんだという風に思ってる子もいますので、ここの見極めはとても大事です。

そういった子たちを見極めるためには、例えばこんな問題を出してみてください。

マンタくんはリンゴを7個食べました。今日はリンゴを2個食べました。何個食べましたか。

「食べました」と言うと、「引く」というイメージありますよね。今日8個食べました。じゃあ、朝10個持っていったら8個食べたという風に、引く(=マイナス)というイメージがあります。なので、「食べました」なんだけれども、足し算になるんですよね。食べました同士を足さないといけない。

そこまでしっかりと分かってる子は、しっかりとこの問題を読むことができている、読み解くことができているということになります。こういったように、教科書とか見てみますと、最後の方にこのような足し算なのか引き算なのかみたいな単元もありますし、一筋縄ではいかない問題もあります。

単に形式的に問題を解いているのか、問題の構造を理解しているのか。子どもたちのそんな見極めをしてみることも大事になってきます。

先生は「お話」をする機会が多い職業ですよね。授業開きや行事でのお話、身体を動かすことや読書の魅力を伝えるお話……みなさんの中にあるとっておきの「お話」を、全国の先生にシェアしてくださる方はぜひ、Voicyとのコラボ企画「#先生のための先生のお話」にご参加ください。
※配信の形式にはきまりがあります。本企画のプレスリリースの最後の記載をご参照ください。

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