小5国語科「古典の世界(二)」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「古典の世界(二)」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:古典の世界(二)(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立平安小学校・田部井佳恋

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では日本語と日本の文化に大きな影響を与えた漢文・漢詩について知るために、解説動画を見たり、漢文・漢詩をくり返し音読したりして、漢文特有の表現や日本の古文との違いを捉え、伝統的な言語文化に対する関心をもつことを目的とします。

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、上記の「知識及び技能」を主体的に身に付けることができるように、クイズ形式で内容を予想して考えたり解説動画を観たりすることでだいたいの内容を把握し、漢文を何度も繰り返し音読する言語活動を設定しました。
漢文には、現代の中国語とは違った独特のリズムがあります。また、日本は古くから多くの文献が漢文で書かれていて、漢文を学習することは、日本の文化や歴史・文章の成り立ちを知ることにもつながります。そうした漢文の特徴を捉え、そのおもしろさや奥深さを知ることで、漢文・漢詩や日本の古文に興味をもつことができます。
漢文の魅力は、歯切れのよいリズミカルな調子のよさや論理的な言い回しです。
「論語」は、中国の古代の思想家である孔子とその弟子たちの問答などをまとめたものなので、短い文章が多く言いやすい漢文です。その短い文章の中には、昔だけでなく、今の人々の生き方や考え方の基本が込められています。
漢詩「春暁」は、「春眠 暁を覚えず」など日本人にもよく親しまれた文言が多い詩です。漢詩は日々の暮らしや自然について書いたものが多くあり、昔の中国の人々の暮らしが想像できます。
論語・漢詩どちらも一見難しそうに思えますが、繰り返しリズムよく音読をすることで自然と覚えることができます。一度覚えてしまえば、少しずつ漢文を身近に感じ、自分の経験や生活に置き換えて考えるようになることが期待できます。
遥か昔の人が作った文章ですが、そこに今の自分たちとの共通点や相違点を見つけることが出来るでしょう。昔の人のものの見方や感じ方について考えることで、より漢文のおもしろさを見つけることができます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 様々な形態の音読練習をすることで、より漢文の調子のよさやおもしろさに気付く場面を設定する。

漢文の魅力は、歯切れのよいリズミカルな調子のよさや論理的な言い回しです。そのよさに気付くためにも子供たちが何度も声に出して漢文を音読することが大切です。そのために、様々な音読の方法をとって楽しみながら練習するとよいでしょう。
音読練習の時間は、個人やグループの自主性に任せてしまうとだらだらした時間になってしまうことがあります。そうならないために、①教師の後に続けて読む「追い読み」、②ペアで一文または一行ずつ交代しながら読む「一文(一行)交代読み」、③グループやペアで手拍子をしながらリズムよく声を合わせて読む、④暗唱する、など様々な音読練習を提示してグループごとに選んで取り組んだり、時間を区切って達成感があるようにしたりするとよいでしょう。
目的をもって練習に取り組み、響きや調子のよさを楽しむことができるようになると、他の漢文にも興味をもつようになります。教科書に載っていない論語や他の漢文を用意しておいて、暗唱できるようになったグループに渡してもよいでしょう。
いくつかの漢文に触れることで、漢文ならではの言い回しやリズムに気付くことにつながります。

〈対話的な学び〉 クイズ形式で内容を予想して考えたり解説動画を観たりすることを通して、漢文のだいたいの内容を捉えることで、昔の人のものの見方や考え方に興味・関心をもつ。

子供たちが漢文に親しむためには、「漢文は漢字がたくさんあって難しい」という印象をなるべく薄めることが大切です。
そのために、対話的な学習時間をより多く取って内容を楽しく捉えられるようにするとよいでしょう。教科書に載っている「論語」は、短い文章で、かつ小学生でも知っている漢字が使われています。漢字や使われている言葉から内容を予想し、学級でクイズ大会をすると、子供たちが楽しみながらよく考えることができます。
また、NHK for Schoolには論語や漢詩の内容を現代語訳で読み上げるだけでなく、アニメ・実写化をして分かりやすく紹介している動画があります。これらを活用することで、漢文のだいたいの内容を捉えるだけでなく、昔の中国の人々の暮らしや考え方への興味・関心へとつなげることができます。
さらに、昔の人の暮らしや考え方の中に自分たちとの共通点や相違点があることに気付く子供たちが出てきます。
その際には、当時の時代背景を説明しつつ、人々のものの見方や考え方をグループや学級で考えることが大切です。そこから自分の今の暮らしについて考えるきっかけにもなります。
昔と現代とのつながりは日本の古典だけでなく、中国の古典にもあると気付くことは、漢文が日本語や日本文化に大きく影響を与えていることへの理解へとつながります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

個に応じた学びのために、1人1台端末を用いて資料を活用していきます。漢文の内容・リズムの特徴に気付くためにはより多くの漢文に触れることが大切になります。
授業前半では、教科書に載っている漢文をメインに扱いますが、後半の音読練習の時間には、教科書以外の漢文を提示することで、子供たちが楽しんで漢文に触れることができます。
しかし、漢文は種類や難易度が様々なので、ロイロノートの資料箱に小学生でも理解できる内容の漢文をいくつか入れておくとよいでしょう。
特に「論語」は短く分かりやすい文章が多いので、その中でも子供たちが共感できる内容のものをいくつか用意し、子供たちが選んで音読練習できるようにすることで、興味・関心へつなげることができます。

6. 単元の展開(1時間扱い)

 単元名: 漢文の音読をして、おもしろさを見つけよう。

【主な学習活動】
1時
①「漢文」とは中国の古典のことで、日本語や日本の文化と関わりがあることについて知る。
②「論語」に書かれている教えについて予想をしたり、動画を観たりして学ぶ。〈 主体的な学び 〉
③ 漢詩「春暁」の内容を捉え、漢文の音読練習をする。〈対話的な学び〉〈 端末活用 〉
④ 音読から分かる「漢文のよさ」をクラスで共有する。〈対話的な学び〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました