コミュニケーション【わかる!教育ニュース#44】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第44回のテーマは「コミュニケーション」です。

東京都の若手教員、仕事とプライベートで優先するならプライベート?

進学、就職、異動などで環境が変わる、春。新しい職場に入る人も、受け入れる人もいるでしょう。人間関係が改まる時期に気になるのは、異なる世代とのコミュニケーションではないでしょうか。
東京都教育委員会がこのほど、採用3年目までの若手教員5280人の声を踏まえた「教職員のためのコミュニケーションガイドブック」を作りました。2023年10~11月に行った、仕事や職場を巡る考えなどを尋ねたアンケートが下地です(参照データ)。
結果には、若い世代の価値観が表れました。仕事とプライベートで優先するならどちらかを問うと、55.2%がプライベート。複数回答で尋ねた「働きやすい職場」には、「人間関係や雰囲気がいい」(89.0%)の次に多いのが、「ライフ・ワーク・バランスが保たれている」(66.0%)です。自分の時間も大事にしたい人が多いと理解するのが、人間関係づくりの前提になりそうです。
では、先輩や上司に期待することは。最多は「相談しやすい雰囲気」(68.6%)です。励みになる言動には、的確な助言や困ったときの声かけ、努力している点に気付いてほめるなどが挙がりました。細やかな目配りや労いを求めています。
一方、尊敬できないタイプは「指導するときに感情的になる」(46.4%)が最多。傷付く言動は、相談しても打ち切る、人前で叱る、指示がないなど、無関心や否定的な態度が挙がりました。その上で、ガイドブックはコミュニケーションのポイントを4つ掲げました。相手の立場に立った言動。共感し、寄り添う姿勢。がんばったところに目を向け、評価する。感謝を伝える。この4つを踏まえ、場面ごとの対応のいい例と悪い例も示しました。

東京都では、採用から1年以内の休職教員が増加

「今の若手教員の価値観や考え方を知ろう」。ガイドブックにはそう記されています。その背景には、東京都では、採用から1年以内の退職や心の不調で休職をする教員が増えているためです。1年以内の退職率は、2018年に3.2%でしたが、22年には4.4%に増加。心の不調の休職者も、18年の589人から22年は824人と、およそ1.4になりました。
心の不調での休職は、全国的な問題です。文部科学省の調査で、22年度に精神疾患で休職した教員は、6539人と過去最多。うち、所属校に勤めて1年経たずに休職したのは1659人に上り、ほぼ4人に1人です。
ただ、ガイドブックは若者におもねるよう促しているわけではありません。心の不調は年齢を問わず誰にも起きうるという視点で、心の不調のサインや異変への対応、休職時や復職後の支援なども紹介しています。
経験の浅い若手が生き生きと働ける職場は、ベテランも働きやすいもの。そのために、円滑な人間関係は欠かせません。その第一歩は、相手は性格、価値観、望むことが異なる人間だという、当たり前のことを理解して接することです。

【わかる! 教育ニュース】次回は、4月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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