小5家庭科 はじめよう! 家庭科(ガイダンス)
家庭科は小学校第5学年から学習する教科です。そこで第5学年の最初に子供たちに2学年間の家庭科の学習の見通しをもたせるためにガイダンスの授業を行います。今回、その授業実践を紹介します。
執筆/神奈川県横浜市公立小学校校長・本庄則子(授業者資料提供/同公立小学校教諭・為國たまみ)
編集委員/神奈川県横浜市教育委員会主任指導主事・大平はな
監修/元文部科学省教科調査官・筒井恭子
目次
年間掲載内容
04月 ガイダンス
06月 ゆでる調理
08月 ごはんとみそ汁
10月 整理・整とん
12月 買い物の仕方
1 題材名
はじめよう! 家庭科 (ガイダンス)
2 題材について
小学校学習指導要領では、「A家族・家庭生活」の⑴のアについては、第4学年までの学習を踏まえ、2学年間の学習の見通しをもたせるために第5学年の最初に履修させるとともに、生活の営みに係る見方・考え方について触れ、「A家族・家庭生活」、「B衣食住の生活」、「C消費生活・環境」の学習と関連させて扱うことと示されており、本題材「はじめよう! 家庭科」は、家庭科のガイダンスとして位置付けています。
3 題材の目標
○自分の成長を自覚し、家庭生活と家族の大切さや家庭生活が家族の協力によって営まれていることに気付く。
○家族の一員として、生活をよりよくしようと、2学年間の学習に見通しをもち、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとする。
4 題材の評価規準
●知識・技能
自分の成長を自覚し、家庭生活と家族の大切さや家庭生活が家族の協力によって営まれていることに気付いている。
●主体的に学習に取り組む態度
家族の一員として、生活をよりよくしようと、2学年間の学習に見通しをもち、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとしている。
5 指導のアイデア
ガイダンスでは、第4学年までの学習を踏まえ、2学年間の家庭科学習の見通しがもてるようにします。また、家庭科の目標に挙げられている生活の営みに係る見方・考え方の視点に触れ、その視点から家庭生活を見直すことが大切であることに気付くようにします。
1時間目では、自分の生活を見つめることによって、「家族にしてもらう自分」から「できる自分」、「家族のためにできる自分」へと成長していきたいという気持ちを高めることが大切です。1人1台端末を活用し、家庭の仕事を「1人でできること」「家族といっしょならできること」「家族にしてもらっていること」に整理すると自分自身と家庭の仕事の関わりを理解しやすくなります。
2時間目では、よりよい家庭生活について、自分の家庭や家族を思い浮かべながら、自分の思いや考えを具体的にもてるようにすることが大切です。家庭を見つめるための学習カードや家庭生活で大切にしていることなどの保護者インタビューを通して、よりよい家庭生活を実現するために大切にしたいことを考えられるようにします。
6 指導計画(全2時間)
時間 | 学習内容 |
---|---|
1 | 自分と家族のつながりを見つめ、家庭科の学習を通して「なりたい自分」を考えよう |
2 | わたしたちがめざす「よりよい家庭生活」について考えよう |
7 学習の流れと子供の様子
1時間目
〔ねらい〕
自分の成長を見つめるとともに、これまでの自分の生活を振り返り、家庭生活と家族の大切さや家庭生活が家族との協力によって営まれていることに気付き、2学年間の家庭科学習の見通しをもつことができる。
〔主な学習活動〕
①本時のめあてを確認する。
家庭科の学習を通してどんな「自分」を目指していきたいか考えよう
②家庭科室探検で見つけたことをグループで話し合い、家庭科学習のイメージをもつ。
グループの中で調べる場所を分担して、家庭科室探検をしましょう。
家庭科室には、家で使っているものがたくさんあるね。
掃除や洗濯の学習もあるんだ。 家庭科で学習したことを家で挑戦できるかな?
③家庭生活を振り返り、1人でできるようになったこと、家族にしてもらっていることについて考える。
入学してから5年生になるまでに1人でできるようになったことがありますね。家庭の仕事について1人だけでできること、家族といっしょならできること、家族にしてもらっていることに分けてみましょう。気付いたことはありますか。
1人で洗濯物をたたんだことがあるよ。でも、いつもは家の人にやってもらっていることが多いな。
お母さんといっしょに料理を作ったよ。1人ではまだ作れないな。家族にしてもらっていることがたくさんあるね。
④VTRを視聴し、保護者の思いを知る。
家庭科で学習したことが、家族へ感謝の気持ちを伝えることにつながったり、家庭生活をよりよくすることにつながったりすることに気付けましたね。
VTRの内容例
・ゆっくりしたい休日に食事の用意をしてもらいたいです。
・汚れのひどい靴下は自分で手洗いしてから洗濯機に入れてもらいたいですね。
・家に帰ったときに食器が洗ってあるとうれしいな。
⑤2学年間に家庭科で身に付けたいことを学習カードに記入し、発表する。
2学年間の学習と自分の成長を記録する学習カードです。家庭科学習の足跡が確認できるよう、今の自分の思いを書きましょう。家庭科の学習を通してどんな自分になりたいでしょう。自分ができるようになりたい仕事を考えたり、お家の人にできるようになってほしい仕事を聞いてみたりしましょう。
自分が使っている白衣のボタンが取れたときは、自分で付けられるようになりたいな。
家族は互いに支え合いながら、生活していて、私もいつも家族に助けてもらっています。私はもっと、家族の一員として、家庭の仕事に協力できる自分を目指したいです。
⑥本時の学習を振り返る。
1人1台端末の画面例
2時間目
〔ねらい〕
日常生活における様々な問題について、家族や地域の人々との協力、健康・快適、安全、持続可能な社会の構築等を視点として考えることの大切さに気付くことができる。
〔主な学習活動〕
①家庭で調べたりまとめたりした「できるようになりたい家庭の仕事」を付箋に書き出し、グループで共有する。
前回「家族の一員としてできるようになりたい仕事を考えておきましょう。できればお家の人にもインタビューし、『どんな仕事ができるようになってほしいと思っているか』聞いてみましょう」と話しました。
どうだったか、グループで話し合ってみましょう。
自分は風呂そうじができるようになりたいと思っていたよ。
家族にも聞いてみたら、「水や洗剤を無駄なく使って風呂そうじができるようになってほしい」と言われたよ。
②グループで話し合ったことを全体で共有する。
グループで話し合ったことを、全体でも整理しましょう。
みなさんは、どんな仕事ができるようになりたいですか。
私はずっとゴミの分別とゴミ出しの仕事をしてきました。これからも続けていきたいと思います。
③本時のめあてを確認する。
よりよい家庭生活ってなんだろう よりよい家庭生活に近付くために大切なことは何だろう
④よりよい家庭生活について考える。
みなさんができるようになりたい家庭の仕事はこんなにたくさんありました。できるようになりたいですよね。
では、1つずつすべての仕事に黙々と取り組めば、みなさんの目指したい家庭生活に近付けるのでしょうか。
水や洗剤を無駄なく使って仕事をしてほしいと家族が言っていたけど、「節約」「もったいない」がぼくの家族のよりよい家庭生活のためのキーワードなのかな?
⑤よりよい家庭生活を実現するために大切にしたいこと(よりよい家庭生活の扉を開くカギ)について考え、整理する。
みなさんの目指したい家庭生活、よりよい家庭生活のために、何を大切にすればよいでしょう。
留意点
・「家族や地域の人々との協力」「健康・快適・安全」「持続可能な社会の構築」「生活文化の大切さに気付くこと」といった「生活の営みに係る見方・考え方」の視点のような言葉が子供から出てくることが予想されます。その際は、子供にとってなじみのある分かりやすい言葉に置き換えながら説明します。
・特に「生活文化の大切さに気付くこと」については、子供から出てくることが少ないと予想されます。その際は、「家庭科が教科として大切にしていること」として教師から説明してもよいでしょう。
ゴミの分別やゴミ出しのとき、家族は環境のことを考えている。今だけでなく、未来も考えることが大切なのかな。
「節約」「もったいない」に加えて、家族がみんな笑顔で助け合うことを大切にしている。
夜勤がある家族や家で勉強をしているきょうだいもいるから、家の仕事はみんなで協力をすることが大切。
⑥今日の学習を振り返る。
このような「カギ」が集まると、私たちの家庭生活は確実に「よりよく」なりますね。
よりよい家庭生活の扉を開くために、「カギ」を意識しながら、これからの家庭科の学習で自分のできることを増やしていきましょう。
家庭の仕事を考えてみたら、自分や家族が大切にしていることがたくさん見つかった。
自分の家に合った「カギ」をもっと見つけたいな。
付箋を活用した1人1台端末の画面例
振り返りカード
学習を振り返って
ガイダンスの学習を通して、子供は家庭科学習のイメージをもち、「よりよい家庭生活」について考え、家庭科の学習を通して「なりたい自分」の姿を思い描くことができます。そして、この時間だけでなく、学期や学年の学習の区切りで学習の成果を振り返り、自分の成長を自覚することもできます。自分の成長を実感するために、1人1台端末を活用したり、継続して記入できる学習カードを工夫したりすることも大切です。
構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ