わり算の商に分数を使えば、1つの数で表現できるという発見【「系統」を見通し、学年ごとに押さえる! つまずきなしの「分数」指導法 #7】

系統性を踏まえた分数の授業づくりについて、新潟市立上所小学校の志田倫明教諭に解説していただくこの企画。今回からは、小学校の分数学習で最も重要なポイントとなる5学年の分数授業について説明していただきます。
目次
整数や小数で表しきれないものも、分数なら表せる

今回は5学年の内容についてですが、分数に限らず、全体に学習内容の抽象度が上がり、子供たちにとってむずかしくなるのが、5学年の学習だろうと思います。分数については、4学年までの学習では分数の第一義「1を○等分したいくつ分」について学習してきましたが、5学年の分数の学習では、主に第二義「整数を整数で割った商」について学習していくことになります。
ちなみに学習指導要領における内容に関する記述は、⑷分数に関わる数学的活動を通して…と、⑸分数の加法及び減法に関わる数学的活動を通して…に分かれていますが、今回はまず前者について説明をしていきたいと思います(資料1参照)。
【資料1】
学習指導要領(p66~67より抜粋)
⑷分数に関わる数学的活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)整数及び小数を分数の形に直したり、分数を小数で表したりすること。
(イ)整数の除法の結果は、分数を用いると常に一つの数として表すことができることを理解すること。
(ウ)一つの分数の分子及び分母に同じ数を乗除してできる分数は、元の分数と同じ大きさを表すことを理解すること。
(エ)分数の相等及び大小について知り、大小を比べること。
イ 次のような思考力、判断力、表現力等を身に付けること。
(ア)数を構成する単位に着目し、数の相等及び大小関係について考察すること。
(イ)分数の表現に着目し、除法の結果の表し方を振り返り、分数の意味をまとめること。
学習指導要領のア 知識及び技能について見てみると、(ア)は小数と分数も整数と同じ有理数の一部だということですが、(イ)では除法の結果ということが初めて出てくるわけで、これが大きなポイントだと思います。(ウ)は約分、倍分に関することで、(エ)は大小比較です。イ 思考力、判断力、表現力等を見ても、(イ)に除法の結果として分数を用いることが示されており、やはりこれが5学年の内容の中心になってくると思います。
さて、ア (イ)に示された除法の結果としての分数についてですが、なぜ商なのかということを考えることが大切です。これまで子供たちが学習してきた整数のたし算、ひき算、かけ算の結果、和や差や積は、常に整数で表すことができました。ところがわり算は異なります。例えば、3学年で、12÷5を考えたとき、整数の答えを探すことができず、12÷5=2あまり2としたわけですが、これでは数学的にうまく整理できているとは言えません。逆算の、5×(2あまり2)ができないからで、正しい答えではなく、仮の答えといったところになります。
これが4学年の学習で、小数を学習することによって、12÷5=2.4と小数で表せるようになりました。逆算しても2.4×5=12ですから、これは正しい答えと言えるのですが、小数で表すことを学習しても5÷3のような式になると、小数では表しきれなくなります。このように小数を使っても、常に商が1つの数で表現できないという状況があるところで、商を分数で表す必然性が出てくるのです。整数や小数で表せていたものを同様に分数でも表すことができるわけですが、分数で表すことの必然性は、整数や小数で表しきれないものも分数なら表すことができるということです。
ですから、大切なことは、「a÷b=[MATH]\(\frac{a}{b}\)[/MATH]」と形式的に答えられることではなく、わり算の商に分数を使えば常に計算の答えを1つの数で表現できるという発見の体験なのです。