パレットを使って着色指導!「参考程度に」のゆるい声かけで創意工夫をキープ

連載
学級担任のための図画工作授業のアイデア

愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

図画工作科の授業づくりに苦労している学級担任の先生も多いのではないでしょうか。ここでは、みんなの教育技術でも連載を持つ佐橋慶彦先生による、学級担任だからこそ実践したい図画工作科の授業アイデアを紹介。背景ベタ塗りの作品に仕上がってしまう原因のひとつが「塗り方がわからない」。そんな時に効果を発揮する指導法を伝授します。

執筆/愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦

塗り方がわからず、絵の具の着色段階でつまずく子どもたち

「下書きはうまくいっていたのに、絵の具で塗る段階になったらぐちゃぐちゃになってしまう…」そんな声をよく耳にします。だんだんと崩れていく自分の絵がイヤになってしまい、やっつけ仕事のように背景をベタ塗りして提出する子どもたちを、みなさんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

こうした問題が起こってしまう原因として「塗り方が分からない」ことがあります。絵の具の使い方ははじめに習うのですが、そこから先の、例えば木の塗り方や空の塗り方、動物の毛の塗り方や、光の反射の描き方などを習うことはほとんどありません。

それぞれが異なる内容を描く図画工作の授業では、一斉に何かの塗り方を示すことが難しいのです。そのため、一部の絵が得意な子と、困ったら先生に質問することができる児童以外は、なんとなくこうではないか、というイメージで彩色をしなければいけません。また、「塗り方を教えると個性を失ってしまうのではないか」といった教師側の迷いも、こうした状況に影響しているのではないかと思います。

そこで、私は

今から塗り方をいくつか紹介するけど、これは先生の塗り方なので、自分の考えや、好きな塗り方がある人はその通りに塗っていいからね。でも、どう塗ったらいいか分からないという人は、先生の塗り方を参考にしてみてください。

と断った上で、空、木、海(水)の3つの塗り方を紹介するようにしています。空、木、水はいろいろな絵に登場することが多いため、多くの児童が活用することができます。また「良かったら参考にしてね」というスタンスを守ってポイントを伝えることで、児童の創意工夫を守ることができます。実際に図画工作が得意な子どもたちが、自分はこう塗っているよと塗り方を教えてくれることもあります。

実際にパレットを使いながら、着色のコツを指導

まずは、空の塗り方です。よくあるのは下図のような水色一色でベタ塗りするパターン。しかし本当の空は、どんなに快晴でも水色の濃さが異なっています。

雲の絵
【筆者作成】

そこで「パレットの色を完全に混ぜ切らないように」とポイントを示しながら、少しずつ色むらを生かすように塗っていきます。空の色が濃い部分はパレットの中の濃い部分、薄い所は白と混ざっている部分を筆に取って塗っていく感じです。

パレットの絵具の出し方
各色の絵の具をのせたパレットを使って、塗り方の説明をします

雲を塗る時も同じで、雲の全てが真っ白というわけではなく、グレーの濃い部分、薄い部分、白が濃い部分がグラデーションのようになっています。あまり絵の具が濃いと、雲の質感がうまく表現できないので「グレーの筆を洗った水を塗るつもりで」と水分量のイメージを伝えています。

児童が描いた空と雲の絵
【児童が描いた空と雲】

この写真の空を描いた児童も、絵画に特別な自信を持っていたわけではなく、先ほどのベタ塗りのような表現を使っていましたが、だんだんとコツをつかんで見事に空と雲の様子を表現していました。

ちょっとしたポイントですが、このパレットを混ぜ切らない色むらの付け方は空や雲だけではなく、壁面や金属、顔の陰影にも代用することができるため、ぐっと着色が上手くなっていきます。だんだんと自分なりの濃淡の付け方を身に付けていくことができるでしょう。

個性あふれる作品をつくるためには「必ずこのやり方でやりなさい」と制限するべきではないでしょう。しかし、まったく方法を教えないと、個性を出すどころか適当に作品を仕上げて終わってしまうかもしれません。そう考えると「良かったら参考にしてね」という曖昧な言葉が丁度いい塩梅ではないかと思うのです。

もう二点の木の塗り方、水の塗り方についても次の記事で紹介したいと思います。

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いかがでしたか? 「こうしなさい!」ではなく「良かったら参考にして!」という声かけによって、子どもたちの選択肢が広がり、そこから「らしさ」が生まれるのですね。個性を引き出す授業アイデア、ぜひ取り入れてください!

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