ペン止めの指示はしない|担任のための「図画工作」授業のアイデア①

愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

図画工作科の授業づくりに苦労している学級担任の先生もいるのではないでしょうか。そこで、みんなの教育技術で連載も持つ佐橋慶彦先生が実践している、学級担任だからこそ実践したい図画工作科の授業アイデアを紹介。図工の授業を通して「みんな違う」ことを認識することで、だからこそ意見を交わしたり力を合わせたりする意味があることに気づけるようになるでしょう。

執筆/愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦

「絵のタッチ」に合わせた指導で、個性がさらに際立つように

前回の記事では、図画工作科の時間は「みんな違う」という感覚を共有し、それぞれの個性を大切にする雰囲気をつくる場であることを提案させていただきました。そこで今回は図画工作科の時間に、自分と他者の違いを実感できるようにするための、具体的な指導アイデアを提案したいと思います。

自分の個性を伸び伸びと発揮できるのが図画工作科のよい所ですが、知らず知らずのうちにその個性を発揮しづらくさせてしまっていることがあります。たとえば子供たちの「絵のタッチ」についてです。

子供たちの中には力強いタッチで絵を描く子もいれば、繊細なタッチで絵を描く子もいます。しかしこのどちらの子も、皆同じように油性ペンで輪郭をなぞる「ペン止め」「なぞり書き」をしなければいけないことがあります。

力強いタッチの子が描く作品はペン止めをすることで、より力強くなり作品のよさが引き出されますが、繊細なタッチで描く作品は太い油性ペンでなぞると、柔らかな雰囲気が台無しになってしまったり、描き込みが潰れてしまったりします。

まだ上手く彩色することができない低・中学年の指導として、ペン止めを指示するのは効果的です。しかし、ある程度彩色に慣れてきた高学年になったらペンでなぞるか、なぞらないかは子供たち自身が選択できるようにしています。

一本一本くっきりとした絵を描く子は、ペン止めをすることで作品がより鮮明になり、人や物がくっきりと浮かび上がるようになります
筆者注:作品は許可を得て掲載しています

例えば、上のこの絵のように一本一本くっきりとした絵を描く子は、ペン止めをすることで作品がより鮮明になり、人や物がくっきりと浮かび上がるようになります。窓の奥の風景や、本棚の本の高さの違いなど、細部にまでこだわって描いていることがより鮮明に表現されます。

筆者注:作品は許可を得て掲載しています

しかし、この作品のように写実的に絵を描こうとしていたり、柔らかい雰囲気を描こうとしていたりする時は、絵の具だけで仕上げた方がよいでしょう。影や絵の具のムラをつけていけば、ペンを使わなくても十分です。逆にペンを使ってはっきりとした線が入ってしまうと、描き出そうとしていた温かな雰囲気が崩れてしまいます。

「ペン止めをするか、しないか」という細かなことですが、それを選択させることで自分の「作風」が出来上がっていきます。この両作品は、過去に6年生を担任した時の子供たちが「心に残っている風景」という題材に合わせて描いたものです。同じように、教室で話している様子をテーマに選んでいますが、それぞれ違った温かさや柔らかさが表現されているのではないかと思います。

図画工作科の授業づくりでは、自分の作品のことは自分で決められるように。選択肢と決定権を与えることを大切にしています。


いかがでしたか? 先生が子供を一人の作者として尊重していることが伝わると、その姿勢は学級全体へ広がっていくことでしょう。ぜひ、次の図画工作科の授業に取り入れてくださいね!

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