「DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント )」とは?【知っておきたい教育用語】
日本語指導が必要な外国人児童生徒の増加に伴う、子どもたちの日本語能力測定の必要性から、文部科学省主導 のもと「DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント)」が開発されました。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
「DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント)」とは
「DLA」とは「Dialogic Language Assessment(対話型アセスメント)」の略で、文化的、言語的に様々な背景を持つ外国人児童生徒たちの日本語能力を、マンツーマンによる対話で測る支援付き評価ツールです。
日本語で日常会話はできるが、教科での学習が困難な児童生徒を対象としており、一人一人に応じた指導計画を立てることで、学びへの興味関心、学習意欲を高めることができます。
増加する外国人児童生徒の現状における測定ツールの開発
文部科学省が調査した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」の結果(速報)では、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は47,627人で、前回調査より6,872人増加していることがわかりました。
また、文部科学省「外国人児童生徒等教育の現状と課題」から「公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数の推移」を見てみると、日本語指導が必要な児童生徒は10年間で1.5倍まで増加しています。こうした児童生徒のうち2割以上は、日本語指導などの特別な指導を受けることができていません。さらに、令和元年度の調査では、約2万人の外国人の子どもが未就学か、就学が確認できていない状況にあります。
このような状況の中で、学校現場でも外国人児童生徒への対応を迫られており、彼らの言語能力を測定する共通の指標が必要となりました。DLA開発以前のテストでは、児童生徒の認知力の把握や言語能力の測定が困難だったため、2010~2012年度にかけて「外国人児童生徒の総合的な学習支援事業」を実施し、東京外国語大学に委託する形でDLAの開発が進められました。
外国人児童生徒の3つの言語能力
DLAの開発にあたって、子どもたちの言語能力観を次の3つの側面としました。
①会話の流暢度(Conversational Fluency=CF)
日常的な学校生活に必要な会話力。第二言語では、習得に1~2年が必要な期間とされている。
②弁別的言語能力(Discrete Language Skills=DLS)
個々の技能によって、習得の時間は異なる。音韻意識・フォニックス・語彙・文法構造などにあたる。
③教科学習言語能力(Academic Language Proficiency=ALP)
母語話者のレベルに到達するのに5年以上必要とされる能力。教科学習では、国語・算数・理科・社会などの教科のほか、言語的、概念的にも高度な文章の理解が必要となる。
流暢に日本語を話し、日常生活に問題のない子どもでも教科学習に困難を感じてしまうのは、上記のように求められる日本語能力が異なるためです。教科学習においては特に高い語彙力や認知力を求められることから、DLAの評価ツールをもとに子どもの日本語能力を総合的に判断する必要があるのです。
DLAの特徴
DLAはペーパーテストや集団テストではなく、一対一の「対話型」を基本にしており、テストの実施過程を学びの機会としています。その理由としては、言語能力の中で最も早く伸びるのは会話力であり、指導者が子どもたちと向き合う大切な機会であると考えられているからです。指導者と外国人児童生徒がマンツーマンで対話することにより、学習の成果を確認し、今後必要な学習内容や学習領域を絞り込んでいくことをねらいとしています。
DLAでは、まず指導者が「導入会話」「語彙力チェック」の順番で子どものレベルを確認します。その後、「話す」「読む」「書く」「聴く」からどのステップで進めていくか予測を立てていきます。
●話す
基礎会話・対話・認知の3つを話す力として捉え、これら3面からトータルな話す力のレベルを推定します。
●読む
「読解力」「読書・音読行動」「読書習慣・興味・態度」の3つを読む力として捉え、読書力を測ると同時に子どもの本への興味や読書が好きになるきっかけを作ることを目的とします。
●書く
まとまった文章を書く力を測り、基礎作文力のほか、文字に起こす前の考える力にも着目します。
●聴く
学習の場で教師の話を聴いて理解でき、その内容を整理して活用できる言語能力として捉え、児童生徒の聴く力を把握し、児童生徒の授業参加への可能性を探ります。
評価の方法
DLAでは、日本語能力の段階を6段階のステージに分けた「JSL評価参照枠〈全体〉」を作成し、「在籍学級参加との関係」と「支援の段階」を示しています。DLAの評価・診断結果から子どものステージを確定させます。
評価における課題として、実施者の質問や応答によって子どもの反応が異なる場合があるため、信頼性の確保が難しいという点があります。その信頼性を高めていくためにも実施者の訓練の充実が必要であり、「JSL評価参照枠」の中身も検証を繰り返し行い、正確性を高めていく必要があるとしています。
▼参考資料
文部科学省(ウェブサイト)「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」
文部科学省(PDF)「外国人児童生徒等教育の現状と課題」(令和3年5月)