小2国語「スーホの白い馬」京女式板書の技術
今回の教材は、有名な物語文の「スーホの白い馬」です。この単元の目標は、お話の好きなところを選び、選んだ理由をまとめたり、音読の仕方を考えたりし、紹介し合うことです。その前段階として、スーホの気持ちを考え、心を動かされたところを分かりやすくするための板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子
教材名 「スーホの白い馬」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全13時間)
1 はじめの感想を書き、学習の見通しをもつ。
2・3 登場人物、出来事を確かめ、おおまかな内容を捉える。
4~9 スーホの気持ちを表す言葉を見付け、音読の仕方を考える。
10・11 お話の好きなところを選び、選んだ理由をまとめたり、音読の仕方を考えたりする。
12 選んだ理由と音読の仕方を紹介し合う。
13 学習を振り返り、感想をまとめる。
板書の基本
〇「読んで、かんじたことをつたえ合おう」という文が、教材のはじめに示してあります。子供たちに理解させる方法として、「がくしゅう」のページで、①とうじょうじんぶつのようすがあらわれていることば、②お話を読んで心をうごかされたところと解説しています。これらのことを、板書を通して伝えるにはどうしたらよいかを考えました。
〇子供たちの心に残ったことの多くは「スーホの気持ちを考える」と分かりやすいということです。お話を読んでいると、心の中で「次はどうなるのだろう」「こうなってほしい」という気持ちが起こります。それが、「心が動く」ということだという学習は、1年生から少しずつ積み上げています。「気持ち」という言葉を、文章を通して理解させることに気付かせる板書にしたいと考えました。
〇次に、音読という言語活動に着目しました。音読は、文章を正確に読むことを求める言語活動です。「文章を読む」ということは、その文章の様子を想像することの基礎となります。つまり「気持ち」を表す文章を正しく読むことに役立つというつながりがあります。
〇めあて「スーホと子馬の出会いについて、スーホの気もちを考えて、音読する。」には、①気持ちを表す言葉を見付ける、②見付けた文を音読する、という2つの意図があります。この2つのことを一体化した板書で読むことの力を育てることを考えました。
板書のコツ(4/13時間目前半)
板書のコツ①
学習の進め方を習得させるために、2年生では次のことを繰り返しています。まず、日付を書きます。日付は「弥生」という陰暦で書かせています。ひらがなでの記述が一般的ですが、漢字にふりがなを付けています。繰り返す過程で、漢字で書けるようになります。次に、題名を書きます。ここでは「スーホ」と「白い馬」をつなぐ「の」に気を付けて書かせます。
めあて「スーホと子馬の出会いについて、スーホの気もちを考えて、音読する。」を板書します。ここでは、「スーホ」と「子馬」をつなぐ「と」について解説をしました。登場人物を調べたとき、「スーホ」と「白い馬」の仲の良い関係が話題になったという学習の経緯があります。また、「音読する」から、音読の仕方の勉強であることもあらかじめ伝えておきます。
板書のコツ②
「◎スーホの気もちを見つけよう。」という課題を板書し、「お話の中のことば」から見付けることを理解させます。
気持ちを表す文として「みんながしんぱいでたまらなくなったころ、スーホが、何か白いものをだきかかえて、帰ってきました。」のカードをあらかじめ用意し、黒板に貼ります。
その文を選んだのは、次の理由からです。
・「しんぱいでたまらない」という「気持ち」を表す言葉が文にあること
・スーホが白い馬と出会い、白い馬(表記では、「何か白いもの」)を抱きかかえて帰ってくる場面であること
例えば、「心配」というように直接気持ちを表していませんが、「だきかかえる」にも気持ちが込められていることを理解させることを意図しました。
板書のコツ③
「みんながしんぱいでたまらなくなったころ、スーホが、何か白いものをだきかかえて、帰ってきました。」の音読を繰り返しながら、どんな音読が分かりやすいかを考えさせました。ここでいう「繰り返し」は、「最初に1人で読む」、次に「ペアで交代して読む」という方法です。その後、座席の順に1人ずつ音読させました。その度に、よく分かる読み方や上手だと思うことを、子供に発表させながら授業を進めました。板書の「大きな声で」「ゆっくりと」「くぎって読む」は、その過程で板書しました。
3つ目の「くぎって読む」は、子供たちの中からは出てこなかったので、音読している子の読み方を聞き、赤線で「/」を入れました。つまり「くぎって読む」に気付かせたかったのです。子供たちは、すぐに「くぎって読む」に気付くことができました。
そして、「◎上手な音読の仕方」として、黒板の左端に「間をとって読む。」と板書しました。
板書のコツ(4/13時間目中盤)
板書のコツ①
「気持ち」について理解が深まり、音読について興味をもってきた段階で、「スーホは、にこにこしながら、みんなにわけを話しました。」を示しました。
このカードは、1人学習のときに多くの子が線を引いていたところです。ここでいう「1人学習」は、「気持ちが表れている文に線を引きましょう」と指示して行ったものです。
授業では、カードを黒板に貼り、「スーホの気もちを見つける」ことを指示しました。「にこにこしながら」に赤線を引いたり、「うれしい、よろこんでいる」を黄色チョークで板書したりしたのは、子供たちに気持ちを表す言葉を見付けさせたいと考えたからです。
「スーホが、心をこめてせわしたおかげで、子馬は、すくすくとそだちました。」のカードについても同じように、次の順番で進めました。
①気持ちを表す言葉を見付ける
②音読の仕方を考える
板書のコツ②
「スーホは、にこにこしながら、みんなにわけを話しました。」と「スーホが、心をこめてせわしたおかげで、子馬は、すくすくとそだちました。」の2枚のカードで見付けたことを、黒板左端の「◎上手な音読の仕方」に「・声の大きさやスピードをかえる。」と短くまとめて板書しました。
板書のコツ(4/13時間目後半)
板書のコツ①
これまでの学習の成果として、次のことが考えられます。
・気持ちを表す言葉を見付けることができる。
・上手な音読ができるように読み方を工夫するということが、どういうことかを考えることができる。
最後に、「体は雪のように白く、きりっと引きしまって、だれでも、思わず見とれるほどでした。」のカードを黒板に貼りました。そして、このカードをどのように音読するかということをペアで考えさせました。
意図したことは、①子供たちが工夫していると思えるところを板書で確認し、②「読んでいて気持ちがよい」と思えるところに赤線を引き、音読の快さを体験させることでした。音読したいという気持ちを高め、次時の「自分が選んだお話の好きなところについて、読み方の工夫を考える」ことにつなげたいと考えました。
構成/浅原孝子