小2国語科「楽しかったよ、二年生」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小2国語科「楽しかったよ、二年生」(光村図書)の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末の活用例等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/京都府京都市総合教育センター指導室指導主事・吉田夏紀
執筆/京都府京都市立大枝小学校・山本嘉紀
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、小学校生活を振り返り、みんなに伝えたいことを決め発表会で話します。
発表会をするという言語活動を通して、伝えたい話題を決め、それらについてより具体的な事柄を思い出すことができるようにします。
また、必要な事柄が決まれば、どの順で話すとよいのか、相手に伝わるように順序を決めていきます。そして、相手に伝わるよう、声の大きさ、速さ、目線について工夫をしたり、姿勢や口形、発音や発声に注意して話したりできることを目指します。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
伝えたいことを決めて、「二年生のとっておきの思い出発表会」で伝え合おう
本単元では、第二学年での学校生活を振り返り、発表することを言語活動として設定します。
二年生での小学校生活を振り返り、同じ行事や活動を体験した友達も知らない、自分だけのとっておきの思い出を発表することを通して、伝えるために必要な事柄は何なのか、どんな順序で話をしたら伝わるのか、話す時の声の大きさ、速さ、視線などはどうしたらよいかを考えます。
自分の伝えたい内容について友達に報告する楽しさや喜びを感じられるように、伝えたいという意欲や想いを強め、活動に取り組めるようにします。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉
児童が主体的に学ぶためには、児童にとって身近な今年度の小学校生活を振り返り、自分だけのとっておきの思い出を伝えたいという想いを強め、単元の導入の時間に学習の目的をはっきりともつことが大切です。
伝えたいという想いを強くもつことによって、たくさんある思い出の中から何を伝えようか、どんな順序で話そうか、どんな表現の工夫をして伝えたらよいのかなどを試行錯誤する意欲が高まり、資質・能力を育成できるとともに、児童自身が伝える楽しさや喜びを感じることができます。
〈対話的な学び〉
児童同士や担任との対話を通してより具体的にそのときの経験を思い出す、児童同士でお互いの話し方についてアドバイスし合うなど、児童が試行錯誤する場面において、対話しながら問題解決できるようにします。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)発表練習に活用
「話すこと・聞くこと」の学習では、自分が話した内容、姿、様子を振り返ることが難しい面があります。本単元では、声の大きさ、速さ、視線などの表現の工夫をしたり、それらを振り返ったりするために、1人1台端末を活用して、自身の話す様子を撮影するようにします。
視覚化することにより、児童同士で見返してよりよくしていくための対話の機会にもなり、伝えるための工夫を考え実践することができます。
また、1人1台端末で録画したものは、教師の評価の材料として活用することもできます。
さらに、とっておきの思い出をおうちの人や一緒に暮らしていないおじいちゃん、おばあちゃんにも伝えたいという意見が出た場合に、動画を見てもらうという方法をとることもできます。
(2)映像モデルの準備
「話すこと・聞くこと」の学習では、話す姿をモデルとして提示することが効果的です。
児童は、そのモデルから、伝える事柄や声の大きさ、速さ、視線についての工夫を見つけたり、自身の学びにいかしたりできます。必要に応じて、児童自身がモデル映像を何度も見返して確認できるように、モデル映像を1人1台端末でいつでも見られるようにしておくことも考えられます。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: つたえたいことをきめて、「二年生思い出はっぴょう会」でつたえあおう 「楽しかったよ、二年生」
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 二年生の学校生活を振り返り、自分だけのとっておきの思い出を伝える学習活動の見通しをもつ。
・第二次(2時、3時、4時、5時、6時、7時)
② 今年度の小学校生活を振り返り、伝えたい話題を決める。
③ 伝えたい話題について「したこと」「感じたこと」など詳しく書き出す。
④⑤ 伝えたい話題について、話す事柄の順序を考える。
⑥⑦ 伝えたい事柄が伝わるよう、話し方を工夫する。
・第三次(8時)
⑧ 発表会を開き、クラスのみんなに自分の伝えたい話題について発表をする。
板書例、活動例と全時間の指導アイデア
1時間目は、子供たちが主体的に自分で学びを進めていけるようにすることが大切です。
子供たちが「やってみたいな」「どうしたらいいかな」という思いを強くもち、学びを進めていくための原動力を1時間目でつくれるように心がけます。
本単元では、二年生の学校生活を振り返り、自分が伝えたいことを決めて発表するという学習の原動力をつくっていくために、1年間の生活を振り返り、どんなことが楽しかったのか、何ができるようになったのか、どんな変化や成長があったのかなど、自分が伝えたい話題を考えます。
また、誰に伝えるのか、どう伝えるのかを考えることも大切です。目的意識をはっきりさせることにより、これからの8時間の学びを進めていく見通しをもてるようにしましょう。
もうすぐ三年生になるね。二年生のみんなと一緒に過ごしたこの1年間、どんな思い出がありますか。
みんなと動物園に遠足に行ったことが一番楽しかった。
運動会でみんなと一緒にダンスをしたのが楽しかった。
ぼくも。
わたし、今でも踊れるよ。
とっても楽しかったね。
九九ができるようになったのもいい思い出だよ。
ぼくも逆上がりができるようになったよ。
みんな二年生の思い出いっぱいあるんだね。二年生の最後に「思い出発表会」を開いたらまた一ついい思い出ができるんじゃないかな、と先生は思ったんだけど、運動会も、動物園に遠足に行ったことも九九ができるようになったことも、みんなの思い出が同じになっちゃって楽しくないかな。
そんなことないと思う。同じ運動会でも伝えたいことは違うはずだよ。
自分と友達は同じクラスで1年間過ごしてきたけど、運動会のときどう思っていたとか、運動会の何をがんばったかとか、そういう気持ちを聞いたことがないから、聞いてみたいよ。
遠足に行ったという思い出が同じでも、自分しか知らない出来事とか気持ちとかが違うと思う。
では、二年生の最後に「二年生のとっておきの思い出発表会」を開いて、自分だけのとっておきの思い出を友達と伝え合いましょう。
2時間目は、報告したい話題について、具体的に思い出す時間です。
前時では、運動会、学習発表会のような行事について話したいと考えていたり、休み時間の遊びの思い出について伝えたい思いをもったりしているはずです。それらをもとに、2時間目では、伝えたい内容についてより具体的に思い出し、自分が話したいことを決めます。
具体的に思い出すために、児童同士で対話をしたいと思う児童がいるかもしれません。
また、一人でじっくりと考えたいと思っている児童もいるかもしれません。
では、具体的に思い出すために、どんなものを用意しておくとよいでしょうか。
1人1台端末を使って学校のホームページを見て学校生活の様子を思い出してもよいかもしれません。あるいは、先生方が撮影している写真を活用する方法もあるでしょう。
もし、日記等で作文指導を継続的に指導されている先生であれば、日記をもとに詳しく思い出すことができるかもしれません。児童が具体的に思い出すために、さまざまな支援を用意しておくとよいでしょう。
また、具体的に思い出すとは、行事で何をしたかということだけではありません。具体的に思い出すとは、考えたこと、思ったこと、周りの人がしたこと、言ったことまでを含んでいます。
例えば、同じ運動会について話したいと思っている人とペアやグループになり、自分だけが経験していること、感じたことなどを振り返ってみるとよいかもしれません。そのときのことを交流することにより、自分が伝えたいことを決めることができるようにしましょう。
イラスト/横井智美