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学校に客としての対応求める「ユーザー化する保護者」どう対応すべき?

2019/12/17

令和時代の保護者対応とは――? 来年度から新学習指導要領が小学校で全面実施。教育現場には、保護者や地域との連携も求められますが、現実には難しい面が多くあります。心理学的な見地から学級経営について研究している早稲田大学教育・総合科学学術院の河村茂雄教授に、保護者との関係構築や対応方法について伺いました。

河村茂雄(かわむら・しげお) 早稲田大学教育・総合科学学術院教授。岩手大学助教授、都留文科大学大学院教授を経て、現職。近著『アクティブラーナーを育てる自律教育カウンセリング』(図書文化社)など、著書多数。

全教員が地域の保護者のニーズを共有する

現在の保護者対応のニーズは、ひと昔前と比べると大いに多様化しています。さらに地域によってもそのニーズに違いがあり、学校側の方針にも差が生じています。一般的に教員が保護者対応を行うときに向き合うのは、自分が担任する学級の保護者です。しかしこれからは、その学校の保護者の全体像を押さえ、そのニーズをどのように整理し、学校経営に生かすのかということが前提となります。

学校経営のもとに、学級経営がある、これが大原則です。教員すべてが自分たちの地域の保護者のニーズは何なのかを把握し、整理する。それに対して、学校ではこのように関係性を構築していこうと方針を定め、それを骨組みとして学級での対応をしていくという考え方が必要です。

保護者との関係づくりが上手な学校は、このポイントをしっかり押さえています。保護者が担任にクレームを言うのは、別のクラスの先生と比べて、その対応の違いに不満を持つからです。教員それぞれがバラバラな指導方針や意識を持っている学校ほど、クレームが多い傾向があります。ですから、保護者のニーズの大枠をしっかりと捉え、問題に対する対応策が全教員で確認・共有できていることが重要になります。こうした学校経営における保護者対応策が準備できていることが絶対に必要です。

このいちばんの大枠となる方針は、校長が発しなければいけません。保護者からのさまざまなニーズすべてに対応することは、現実的には不可能です。学校として大枠の方針をもとに優先順位をつけ、対応策を明示することでクレームは生じにくくなります。方針の項目としては、例えば授業の進め方や生徒指導、児童生徒間の関係づくりなどがあるでしょう。

この方針を示すのは年度初めに行い、節目の学校だよりで保護者にも共有していくことが大事です。そして、学校経営に学年経営が位置づき、その学年経営に学級経営が位置づくことが必要です。

年度初めに大枠の方針を共有し、「チーム学校」として保護者との関係を構築した後は、学年でさらに詰めた方針を確認していきます。保護者対応の足並みをそろえるためには学年が核となりますから、担任たちがチームとなり、保護者対応にあたっていく必要があります。

保護者対応では、まずニーズをヒアリングすることが絶対に必要です。ニーズを聞いて整理し、原則としての学校側の方針を具体的に示す。これは絶対に押さえるべきポイントです。保護者からのニーズを集める方法としては、アンケートを実施してもよいですし、学校だより・学級だより・学年だよりの下部にヒアリングシートを作り、切り取って提出してもらう形式でもよいでしょう。また、PTA役員に直接聞くなど、さまざまに方法はありますので、工夫して準備してもらいたいと思います。

ここでのポイントは、ニーズを吸い上げるだけでなく、情報を整理し、それを他の保護者に知らせるということです。学校は公教育の場であり、保護者個人の要望は、学校の大枠の方針の中でしか対応してもらえません。しかし、他の保護者のニーズを知ることで、学校方針の優先順位を測ることができ、納得感を得ることができます。

保護者のユーザー化で学校への要求が高まっている

多様化した保護者は「ユーザー」と化してきています。そして、現在厳しい状況にあるのは、これまで「先生」と呼ばれていた職業の人々でしょう。教員、医師など社会的に一目置かれていた存在の人々が、保護者や患者などのユーザーから従来のように評価されなくなってきています。ユーザーはそういった「先生」に、お客さん意識でストレートに要求を投げかけてもよいと考えてしまっているのです。この令和の時代には、そういった関係性がさらに鮮明になってくるでしょう。

報道にも取り上げられていますが、学校の校則を見直そうという動きが進んでいます。学校のルールも社会のルールも同じレベルで捉えて、学校だけを特別だと考えることはないからです。これは欧米の考え方に近いと思います。路上で暴力事件が起きれば、警察が動きます。学校においても、以前のように学校内での処分で終わらせるという時代ではなくなってきています。

これまでの日本の教育現場における保護者との関係は、あまり説明をせずとも察することができる人間関係だったと言えます。しかしそれは、この令和時代においては成立しないのではないでしょうか。現在、外国にルーツを持つ住人が増加したこともあり、「察する」ことが非常に難しくなり、あらかじめ決められたルールの中で判断・行動する「契約」に近い人間関係となっています。学校として、この事例にはこの方針で進めるという明確な方針がなければ、混乱が起こってしまうことになります。

教員自身の情報を開示して保護者との関係を築く

多様化した家庭環境や外国にルーツを持つ人々の増加などで、契約的な保護者との関係づくりが必要とされる中、教員は保護者との良好な関係をどう築いていけばよいのでしょうか。

以前はイベントやレクリエーションを催し、保護者との関係づくりに努めるといったことが行われてきました。それは今も有効な手段に変わりありません。しかし、今はイベントを催しても人が集まりにくく、集まる人、集まらない人に偏りが出てしまい、それが要因で不協和音が生まれてしまうという懸念もあります。そういった理由で今では従来ほど効果は少ないでしょう。

お勧めなのは、保護者会などで、まずは教員と保護者間のリレーションを少しずつ形成していくことです。担任の先生の出身地や趣味などの情報がわかるだけでも、会話がスムーズになるということもあります。そういった教員側の開示しても問題ない情報を、リレーションを取る際の素材として有効に活用しましょう。

人は相手がどういう人間かわからない場合は、本音を出しにくいものです。私の研究分野であるカウンセリングの見地からいうと、カウンセラーは本音を言い合える関係になることに長けています。「この人であれば大丈夫かな?」と思わせるために、相手が安心できる情報を、まずはこちらから出す必要があります。こうした情報をきっかけに、相手に心を開いてもらえる状況が生まれてきます。そうしたインフォーマルな交流から入り、徐々に学校や学年の方針を踏まえた教育方針や生徒指導方針などのフォーマルな情報を具体的に伝えることが、保護者との関係づくりのコツです。

また、保護者会などの場で行うとよいのが、リーダーの指示した課題をグループで討議し、そのときの気持ちを率直に語り合う「構成的グループエンカウンター」です。学年団で行う最初の保護者会では、教員と保護者、保護者と保護者の関係づくりのきっかけとして行ってみるのもよいでしょう。その際は、あるテーマに対してどのように考えるかを、自己紹介をしながら3、4人の小グループで話し合っていく形式がお勧めです。

人間は不安定なとき、「共通の敵の陰口を言う」ことでグループを形成して安心しようとする傾向があります。このような傾向を不安のグルーピングといいます。このような動きは、対教員への不信や保護者グループ同士の不仲を生み、クラスが荒れてしまう原因の一つにもなりえます。結果、学校の教育活動に対して、保護者の受け止め方もネガティブになってきてしまいます。

だからこそ、保護者のニーズをしっかりと捉え、学校側は先手の対応メッセージを出して、さらに、保護者同士が率直に語り合えるような関係の形成を図っていかなくてはなりません。隠したり、出さずにいたりすると、保護者たちに臆測で捉えられ、錯綜していくことにつながります。

撮影/金川秀人

管理職は情報収集・情報共有を怠らない

管理職は保護者対応のみに専念することは難しいでしょう。ですから、月1回程度ある生徒指導部会などで出てくる各クラスの情報を整理し、管理職と教職員で共有するようにするとよいでしょう。そうしたプロセスの中でいじめや子ども同士の問題、そして保護者の問題について、学校としての対応を確認していきます。いちばん危険なのは、管理職が知らないことです。教員が個人で抱え込んだり、自己流で対応したりしないためにも、チームとしてのビジョンを共有し、そのビジョンを具現化する最低限の方法論が共有されていること、それが基本かつ重要なポイントです。

情報やビジョンなどを共有する物理的時間が確保されているかどうか、管理職として今一度確認しておきましょう。「忙しいから学年団で整理しておいてくれ」ではいけません。必ず全体で情報交換を行う時間を取り、その情報を吸い上げる時間を設定する、これらは徹底してください。保護者との関係づくりだけではなく、学力向上策や生徒指導の行き届いた学校は、こういった時間をしっかり取っています。問題が起こる学校は、この時間をないがしろにしがちです。管理職は情報収集と整理する時間をしっかりと確保できるようにし、教職員は管理職との情報共有を頻繁に行いながら、同僚との情報交換も心がけましょう。

保護者個々がそれぞれ個別のニーズを持っているのは当然のことです。しかし、ときに常識を超えたニーズを持つ保護者も出てきます。すると、今まで学校が軸としてきたカウンセリングマインドのみでは対応できず、カウンセリングマインドとリーガルマインドを織り交ぜて対応せざるを得ない状況が生まれてきます。つまり、法的にも許容できない範囲の問題は、しっかりと専門機関で対処していく必要があるということです。その場合、保護者の要求に対して、どこまでを受け入れ、どこからは断るという線引きを、管理職がしていかなくてはなりません。担任では判断できない案件は管理職に相談し、管理職はカウンセリングマインドとリーガルマインドで対処していきます。そして管理職でも判断・対処できない案件は専門家に助言を求めるというステップを踏めばよいのです。現在、教育委員会内にも法律分野の協力体制が敷かれるケースも増えています。

保護者との連携が良好になれば子どもにプラス

保護者との連携が良好になれば、当然、学校や子どもにもプラスの影響が出ます。保護者も教員も同じような気持ちで子どもを見守れば、子どもは当然頑張ります。子どもにとっての身近なモデリングの対象は親であり教員です。それが同じベクトルを向いていれば、学力や生活態度などは強化されるはずです。しかし、教員の言うこと、行うことに保護者が批判的な目を持っていたら、子どもは混乱してしまうでしょう。

昭和の時代には、保護者の中にも教員の言葉を尊重する意識がありました。それが難しい現代では、繰り返しになりますが、学校として、保護者たちのニーズの情報収集を行い、それに対して明確に方針を示した上で、しっかりと対応していくことが重要です。子どもの発達のためにも、教員と保護者の言うことに齟齬を少なくし、子どもの中に葛藤を生まないようにすることが大切です。学校と保護者がお互いに理解しあって連携して、よい流れをつくっていくことが、最終的には子どものためにつながります。

チームには支え合う部分もあり、高め合う部分もあります。そして、お互いに学び合います。そして、チームは初めからできているわけではなく、チームはつくっていくものです。つくるためには支え合い、高め合い、学び合う活動をしていかなければなりません。この活動が止まれば、チームは言葉だけの形骸化したものになってしまいます。学校は、しっかりとしたチームをつくり、起こり得る保護者対応を考えながら、よい関係づくりをしていくことをめざしてほしいです。

取材・文/三上浩樹(カラビナ)

『総合教育技術』2019年12月号より

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