小1国語科「ことばを見つけよう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「ことばを見つけよう」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属竹早小学校・曽根朋之
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、「かばんの中には、かばがいる」「みかん中には、かんがある」といったような言葉遊びをする中で、語彙を豊かにしたり、語と語の続き方に注意しながら書き表し方を工夫したりすることを資質・能力として身に付けられるようにします。
語彙の広がりが生まれるように、一人で言葉遊びをするだけでなく、クラスの友達とお互いが知っている言葉を出し合うような活動を設定するとよいでしょう。
また、単に「かば」や「かん」といった言葉だけを答えるのではなく、動物に対しては「いる」を使い、物に対しては「ある」を使うといった語と語の続き方に気付かせることもポイントです。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
例示されている教科書の文章からきまりを見つけ、自分たちでも似たような文を作る言語活動を設定します。一文を作るだけで終わりにせず、グループで言葉遊び歌や言葉クイズ大会のような活動をすることで児童が楽しめるような活動にするとよいでしょう。
言葉遊び歌も言葉クイズ大会もグループで作成し、他のグループの友達に対して出題する形をとります。いくつか作ったり、試しに出題したりしながらよりよいクイズにすることで、身に付けさせたい資質・能力の育成に近づけていきます。
また、小グループでクイズを作成する活動を設定し、協働的な学びをすることで学びが広がることを実感させるというねらいもあります。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 経験する時間を確保する
単元の前半は、教科書の例文をもとに「□がいる」「□がある」という文末表現の違いに気付かせ、違いを理解することが目標です。
経験的に「□がいる」「□がある」の違いに気付いている児童が多いかもしれません。クイズ感覚で考えながらも、違いを言語化することでそのきまりに気付かせていくとよいでしょう。
単元の後半では、言葉遊び歌や言葉クイズ大会を作る活動を通して、「□がいる」「□がある」の違いを意識して文を考えます。そして、なるべく多くの言葉に触れることで語彙の拡充を図ります。
書く時間や、他者の文章を読む時間をたくさん確保し、多くの文や言葉との出会いを大切にしていきます。生活経験が少ない児童にとっても、このような言葉との出会いの場をしっかりと確保することで、粘り強く自ら活動を進められるようにしていきます。
〈対話的な学び〉 小グループで一つのものを作成する
カリキュラム通り進んでいれば、児童は本単元前までに、ひらがなやカタカナに一通り触れています。文字が書けるようになり、今後は文章を書く活動が増えていく中で、書いたものを他者に読んでもらう喜びや、他者と協働して進めることでよりよいものが書けるという実感を得る経験をさせていきたいところです。
そこで、言葉遊び歌も言葉クイズ大会も、複数人で対話しながら書く活動に設定し、自分が書いたものを友達に読んでもらい、他者に読まれる喜びや学びを感じさせていきます。
このような経験を通して、対話的な学びの広がりを感じ、教室で友達とともに活動するよさを実感させるよう計画していきます。
〈深い学び〉 語彙の拡充のために身の回りから言葉を探す
日常生活や学校生活で用いる言葉、周りの人について表す言葉、事物や体験したことを表す言葉など、身近なことに関する語句の量を増やすことが低学年の語彙指導において重要です。
「かばんの中には、かばがいる。」のように言葉の中にもう一つ違う意味の言葉を探すときに、なかなか思い浮かばない児童が出てくることが想定されます。そこで、身の回りの物や、身の回りの本から言葉を探す時間を確保するとよいでしょう。
例えば、身の回りの言葉を探すために学校内のものを見に行ったり、教科書や学級に置いてある本から探したりする活動が考えられます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
作った言葉遊び歌や言葉遊びクイズを端末で共有
自分が書いたものを他者に読んでもらえるということは、書く意欲につながります。
1人1台端末を使って、紙に書いたものを写真にとったり、まとめてスキャンしたりして配付することで、共有することができます。
他者の文と比較することでアイデアをもらい、自分自身がよりよくしようとするきっかけとなり、活動としてより質が高まっていきます。
6. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: ことばを見つけよう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時、3時、4時、5時、6時)
① 文の中に隠れている言葉を見つける。
② 文末の「いる」と「ある」の違いに気付き、違う意味が隠れている言葉を探す。
③ 言葉が隠れている文を書き、小グループで言葉遊び歌を作る。
④ 言葉クイズ大会でどの文をクイズとして出すのか、小グループで相談する。
⑤ 出すクイズを紙に書く。
⑥ 言葉クイズ大会をする。
全時間の板書例と指導アイデア
●「主体的な学び」のために
第1・2時では、教科書の例文をもとに「□がいる」「□がある」という文末表現の違いに気付かせ、違いを理解していきます。
単元の後半で、「□がいる」「□がある」の違いを意識して文を考えることを自分で行えるようにするために、クイズ感覚で考えながらも、違いを言語化することを教師側は意識するとよいでしょう。
その際に、なるべく簡易的な言葉で共通理解をしたり、視覚的に分類できるようにしたりすると、理解できる児童が増えていきます。
「かばんの中には、かばがいる」という文をみんなが一度声に出して読んでみましょう。
―― 児童が声を出して読む。――
どういう意味か分かりますか。
「かばん」という言葉の中に「かば」という言葉が入っているということです。
えー、おもしろい。
ありえないよ。
そうですね。本当はありえないことですが、教科書のイラストのように想像してみるとおもしろいですね。他にも同じような文章があるので、言葉の中にどんな別の意味の言葉があるかを考えてみましょう。
先生、「かばん」の中には「かん」も入っています。
よく見つけましたね。「かばん」の中には、「かば」だけでなくて、「かん」も入っていますね。このような、続いた言葉でなくても、何が入っているか見つけられるといいですね。
「はちまきの中には、□がいる。」はどうでしょう。
「はち」がいます。
そうですね。「ぶたいの中には、□がいる。」はどうでしょう。
「ぶた」がいます。「たい」もいます。
二つ答えが考えられるものもあります。「いわしの中には、□がいる。」はどうでしょう。
「わし」がいます。「いわ」もあるけど、「いる」ではなく「ある」だと思います。
「いる」と「ある」の違いに気付けたのですね。それでは。「みかんの中には、かんが( )」の( )の中は、「いる」でしょうか「ある」でしょうか。
「ある」です。
そうですね。それでは文の最後が「ある」になる他の文を出していきます。
―― 教師は教科書の文を提示し、児童は答える。――
どのようなときに「いる」で、どのようなときに「ある」なのか、次回考えていきましょう。
イラスト/横井智美