小1 国語科「いろいろなふね」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「いろいろなふね」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等、授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:いろいろなふね(東京書籍・あたらしいこくご  一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、児童が乗り物について調べる活動を通して、事柄の順序を考えながら内容の大体を捉え、文章の中の重要な言葉や文を考えて選び出す力を身に付けていくことがねらいです。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

(1)言語活動と指導事項との関連

本単元では、教材を読んで分かったことについて乗り物カードにまとめ、友達に伝えることを言語活動として位置付けました。

乗り物カードとは、A5サイズの紙に「乗り物の種類」「役割」「つくり(乗り物に備わっているもの)」「できること」を書いたもので、乗り物を紹介するためのカードです。
A5という限られた紙幅ですから、児童は必要な語句や文を選び、まとめていくようになります。
このことを通して、教材を読みながら、文章の中の重要な語や文を考えて選び出す資質・能力を身に付けることができます。

留意しなくてはならないのは、乗り物カードを作成することが本単元の目的にならないようにすることです。見た目のよい乗り物カード、あるいは丁寧に記述された乗り物カードを作成するよう指導するのではなく、カードにまとめていく営みを通して児童が重要な語や文を選び出せているのか、他の乗り物との共通相違に気付いているのかを見取り、適切に支援していくことが大切です。

(2)教材の特性

本単元で活用する教材「いろいろなふね」は、「客船」「フェリーボート」「漁船」「消防艇」の4種類を説明している文章です。
それぞれの船の説明では、「やく目(何をするための船か)」「つくり(船の中には何があるのか、何が積んであるのか)」「できること(何ができるのか)」という三つの要素が整理されています。
この説明の構成をいかして、ワークシート(乗り物カード)に必要な語句を選び出し、記述していくようにします。

教材では、4種類の船が「客船」→「フェリーボート」→「漁船」→「消防艇」の順に説明されています。児童にとって利用する可能性が高いものから馴染みのないものへと、順に説明されていることが分かります。授業者は、身近でイメージしやすい船の説明から、徐々にイメージのつきにくい船の説明になっていくことも意識しながら説明の順序に関わる指導をしていく必要があります。

また、第1段落にはリード文があり、第14段落(最終段落)にはまとめとなる文があることから、「はじめ・中・おわり」の構成になっていることが分かります。それぞれの部分が果たしている役割にも触れることで、児童は今後の説明文の学習について見通しをもつことができます。

こうした筆者の説明の仕方(説明の工夫)を読み取り、児童が重要な語や文を選び出していく力や、文章の大体の内容を捉えていく力を身に付けていけるようにします。
そのためには、単に教材を読み取っていくだけではなく、「どこに書いてあるのだろう」「どのように書いてあるのだろう」と児童が考え、意欲的に取り組めるような授業の仕掛けが必要です。

(2)教材の特性を踏まえた指導内容

「いろいろなふね」の学習の後、他の説明文や図鑑などの文章を読む際にも、この単元で身に付けた力をいかせる環境を整えていくことが大切です。
実際の授業では、第14段落の文からまとめの段落としての役割を考えていく中で、「この4種類だけでなくて、他の船にも色んな役目があるということをまとめていると思う。」という児童の発言が出て、「その他の乗り物にはどんな役目があるのだろう。」という問いが生まれました。
そこで、教室に乗り物に関する図鑑などを常備し、児童がいつでも手に取って調べられる環境を整えました。
このように教室に乗り物図鑑コーナーを設置する際には、「どんな やくわりがあるかな?」「どんなものが中にはあるかな?」などと、手に取る児童が問いをもって読書できるような張り紙をしておくと、見通しをもって本に触れることができます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 説明文探偵になって筆者の工夫を読み取ろう!

説明文には、児童にとって馴染み深い内容のものと、あまり馴染みのない内容のものとがあります。
児童と教材の心的距離が離れてしまうと、読むことへの意欲が高まらない恐れがあります。その対策の一つとして、児童に立場を与えるという工夫があります。

具体的には、児童に「説明文探偵になろう」と伝え、筆者がどのような工夫をこらして説明しているのかを考えるよう促します。探偵になって推理する意欲を高めるために、教科書をコピーして文章の一部を隠した状態で配付し、隠した部分にどのようなことが書かれていればよいのかを考えるようにします。

児童が持っている教科書には当然答えがありますので、コピーを活用する場合には「教科書は使わない」というルールをあらかじめ伝えておきましょう。
コピーが難しい場合でも、「探偵になって筆者の工夫を推理してみよう!」などと前置きをしてから学習に入ることで、ただ教科書を開いて淡々と読み取るよりも粘り強く読んだり、どのようなことが書かれているのか見通しをもったりしながら主体的に教材に触れる姿を見ることができます。

隠された説明文を他の説明文を根拠にして考えている児童
隠された説明文を他の説明文を根拠にして考えている児童
〈対話的な学び〉 重要な語を友達と共に選択

児童が説明文探偵となって筆者の工夫を推理していくと、より強固な根拠が必要だと感じ始めるはずです。そこで、自分の考えをもった上で友達と話し合う機会を用意します。ただし、この場面で大切なことは「個の学習」の保障です。

友達と対話しながら筆者の説明の仕方を考え、推理の根拠を見つけたいと思う児童もいれば、1人でじっくり教材と対話としながら考えたい児童もいます。後者のような児童が仮に友達から「ねぇねぇ」といった具合に話しかけられたら、少し迷惑に感じるかもしれません。
そこで教師は、いきなり友達との相談を促すのではなく、まずは個で考える時間を設定します。
その中で、悩んでいる児童や手が止まっている児童を見取るようにし、「何に悩んでいる?」と聞くようにしましょう。教師と児童も対話をしていきます。そして児童の悩みを聞きながら、「友達と相談してもいいですよ。」や「○○さんも同じところで悩んでいたから相談してみては?」などと声をかけ、友達との対話を促します。
その際、個人で学習したいのか、友達と協力したいのか、「◯◯さん」の意向も確認しておきます。

〈深い学び〉 教師が提示した乗り物資料を読み、重要な語や文を選び出す

「いろいろな ふね」を読み終えたら、乗り物図鑑等にある別の乗り物の資料も読んでみましょう。
乗り物図鑑は、児童に適したものを教師が紹介し、児童はその中に掲載されている乗り物の中で自分が気に入ったものを選んで読んでいきます。

これまでの学習で、児童は「やく目(何をするための船か)」「つくり(船の中には何があるのか、何が積んであるのか)」「できること(何ができるのか)」がどのようなものであるかを理解しています。その学習経験を思い出しながら、「やく目」や「つくり」に該当する情報(語や文)を図鑑から選び出すように促していきましょう。

ここで留意しておきたいのは、乗り物図鑑をやみくもに与えず、「やく目」「つくり」「できること」の情報がきちんと載っているものを教師が選び、紹介することです。
児童が図鑑を自由に選んでしまうと、それらの情報が載っていないものや、自分の読みの水準を大きく超えた難解なものを選んでしまうことがあります。
そうした場合、既習をうまくいかせず、混乱を招く可能性がありますので、注意が必要です。
また、学校の図書室や地域の図書館だけでは、乗り物の資料の数に限りがあります。児童数分の資料を用意できない可能性もありますので、それを防ぐ意味でも教師が予め選択しておくことは重要です。

別の資料から「やく目」「つくり」「できること」といった情報を見つけ出すことができれば、「C読むこと」の単元の学習活動としては十分とも言えますが、見つけた情報を乗り物カードに書き出して整理・共有することを試みると、より深い学びにつながるでしょう。

これらの活動を通して、児童は今までの学習で身に付けた知識をいかし、新たに関心を抱いた乗り物の説明文について深く理解し、「どこに必要な情報が書いてあるだろう」などと問題を見出しながら、その解決策を考えていくことができると考えます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)映像教材の活用

船に対して馴染みのない児童がいる場合もあるでしょう。そのような場合、児童が船に関する説明的文章を読んでも、実物を想像し、その役割などを理解することが難しいかもしれません。
教材文に示されている4種類の船も、掲載されている写真だけでは、それらが一体どのような動きをし、各船に関わる人がどのような様子なのかまでは分かりません。

そこで本単元では、それぞれの船が実際に動いている様子を動画の視聴によって確認できるよう配慮します。各船の説明を読み終わった後、動画を見て船の動作や関わる人たちの様子を確認することで、文章に書かれていることをより深く理解できるようにしていきます。

6. 単元の展開(12時間扱い)

 単元名: のりもののことをしらべよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学習課題を確かめ、単元の見通しを立てる。

・第二次(2時3時4時5時6時7時
②~⑦「いろいろなふね」を読み、読み取ったことを乗り物カードにまとめる。〈 端末活用(1)〉

・第三次(8時9時10時11時12時
⑧~⑩ ほかの乗り物のことを調べてカードにまとめる。〈 端末活用(1)〉
⑪ 調べたことを全体で共有する。
⑫ 単元の学習を振り返る。

全時間のワークシート例・板書例・端末活用例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
学習の見通しと教材との出合い

1年生の場合、乗り物に対して関心が高い児童は少なくありません。一方で、興味のない児童も一定数います。そのため、最初から「自分のお気に入りの乗り物を紹介しよう。」と提案しても、興味関心の面で温度差が生まれてしまいます。

そこで、まず、知っている乗り物や利用した経験のある乗り物について児童に尋ねていきます。
この問いかけによって、自分の身近に意外に多くの乗り物が存在していることに気付く児童が増えるはずです。しかしながら、そうした乗り物がどのような役目をもち、どのようなつくりになっているかなどは、まだよく知りません。乗り物に興味をもっている児童であっても、役目やつくりを細かく理解しているわけではないでしょう。

次に、「自分が紹介したい乗り物について調べ、その乗り物の特徴をまとめたカードを作っていくこと」を児童に伝えましょう。
「のりもののことをしらべよう」という単元の目標を設定し、教科書を活用しながら乗り物について調べていくことを確認します。実際の授業では「バスに乗ったことはあるけど、バスの中にどんな物が載っていたかなんて知らないなあ。」や「飛行機について調べてみたい!」といった声が上がっていました。

児童が学習の見通しをもった上で、教材と出合えるようにします。
今回は、「しょうぼうていは、ふねの火じを けすための ふねです。」という文以降を、あえて白紙に加工した教材文を印刷配付しました。段落⑫⑬⑭が欠けた教材文を配付したわけです。
教師はまず、「しょうぼうていは、ふねの火じを けすための ふねです。」までを範読し、そこで読むのをやめます。すると、児童はざわざわとし始めます。
実際の授業では「あれ、この文章おかしい。」「途中で終わっていない?」などの声が上がりました。

もしこの段階で児童がそうした違和感をもたなかったとしても、心配は無用です。
教材文を、児童と一緒にもう一度頭から読み進め、「客船」「フェリーボート」「漁船」の説明を順に理解していく中で、児童たちは「…ということは、この消防艇の説明は途中で終わっているような気がする」と推測していくはずです。ですから、最初の範読の時点で「じつは続きがあるんだよ。」などと説明する必要はありません。

実際の授業では、教師の範読を聞いた段階で違和感をもった児童が多くいましたので、「いろいろなふね」に書いてあることを読み取っていき、続きの有無について推測していくことにしました。

みなさんは、いつどんな乗り物に乗りましたか。

この前、おじいちゃんの家に行くのに新幹線に乗りました。

私は、習い事に行くのにバスを使っています。

では、みなさんがお話ししてくれた乗り物には、どのような特徴があったり、どのようなものが載っていたりするか知っていますか。

バスには乗ったことはあるけど、どんなものが載っているか考えたことがないなあ。

〜 説明文を読む 〜

あれ、この説明文、途中で終わっていませんか。

私もそう思いました。消防艇だけ途中までの説明になっているような気がします。

そうでしょうか。次回は、本当に続きがあるのか調べてみましょう。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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