小1体育「ゲーム①(鬼遊び)」指導アイデア

文部科学省教科調査官の監修による、小1体育科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「ゲーム①(鬼遊び)」の単元を扱います。
執筆/札幌市立公立小学校教諭・中森健夫
監修/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹
北海道教育大学教職大学院特任教授・大牧眞一
単元名
走って、逃げて、めざせ! 鬼遊びマスター
目次
年間計画表
単元目標
●知識及び技能
鬼遊びの行い方を知るとともに、一定の区域で、逃げる、追いかける、陣地に走り込むなどの動きによって、易しいゲームをして遊ぶことができるようにする。
●思考力、判断力、表現力等
簡単な規則を工夫したり、攻め方を選んだりするとともに、考えたことを友達に伝えることができるようにする。
●学びに向かう力、人間性等
鬼遊びに進んで取り組み、規則を守り誰とでも仲よく運動をしたり、勝敗を受け入れたり、場や用具の安全に気を付けたりすることができるようにする。
授業づくりのポイント
鬼遊びは、いろいろな鬼遊びの行い方を知るとともに、一定の区域で逃げる、追いかける、陣地を取り合うなどして遊ぶ楽しさに触れることができる運動遊びです。
本単元例では、単元前半に個人対個人で楽しむ鬼遊びの行い方を知るとともに、簡単な規則を工夫しながら楽しく遊ぶなかで、逃げたり追いかけたりする動きを身に付けていけるようにしています。
その際、教師から提示した簡単な遊び方や規則のなかから、楽しく鬼遊びができる場や得点の方法など、自己に適した遊び方や規則を選ぶことで、どの子供も鬼遊びの楽しさに触れられるようにします。
単元後半は「しっぽ取り鬼」と「宝取り鬼」を取り上げ、集団対集団での鬼遊びの行い方を知るとともに、しっぽ取り鬼で身に付けたことを宝取り鬼でも生かすようにします。また、運動を通して、友達のよい動きを伝える姿を大切にしていきます。
指導に当たっては、たっぷりと鬼遊びの楽しさに触れるなかで、規則を守り誰とでも仲よく運動をしたり、勝敗を受け入れたり、場の安全に気を付けたりする姿をめざします。
友達の動きに着目させる場面を意図的に設けることで、よい動きのポイントを共有したり、互いのがんばりを認め合ったりする場面をつくって、楽しく学べるようにしていきましょう。
動画① 「小学校低学年~13鬼遊び」文部科学省
単元計画(例)
楽しもう
いろいろな鬼遊びを楽しもう
1時間目は、ゲームにつながる運動遊びを行います。子供が期待をもって単元の学習に入れるように、まずは友達と関わりながら思い切り逃げたり追いかけたりすることができる運動遊びに取り組みます。
学習のきまりや安全面での約束を確認して、安全に楽しく行えるようにしましょう。
その際、追いかける側の子供が逃げる相手にタッチをする、逃げる相手のマークを取るなど、勝敗がはっきり分かる形にすることが大切です(資料①【ゲームにつながる運動遊びの例】参照)。
2、3時間目は、個人対個人でのいろいろな鬼遊びに取り組みます。それぞれの鬼遊びの行い方を知り、教師が提示する簡単な規則を選択して、みんなで楽しく遊べるようにします。
選んだ規則でみんなと一緒に遊んでみる活動を位置付けることで、その規則で遊ぶ楽しさを確かめられるようにしていきます。
運動を通して感じた子供の気付きや考えのよさを取り上げて称賛し、「もっとみんなで楽しみたい!」「ほかにも工夫できることはないかな?」という思いを引き出します(資料②【いろいろな鬼遊びの例】参照)。
資料①【ゲームにつながる運動遊びの例】
●ねことねずみ(じゃんけんしっぽ取り)
<進め方>
①クラス全員が「ねこ」と「ねずみ」の2つに分かれ、背中合わせになって並ぶ。
②教師は、「ねー、ねー、ねー、……」と言ってから、「ねこ」または「ねずみ」と大きな声でコールする。
③名前を呼ばれた側は、10mほど先の決められたラインまで走って逃げる。
④呼ばれなかった側は鬼になり、ラインを越える前に相手をタッチして捕まえる。
・チームで行う場合は、ラインを越えた子供の人数で勝敗をつけるとよい。
・「ね」がつく別の言葉もコール(「ネクタイ」「寝転ぶ」など)すると、楽しく学ぶことができる。
・追いかけながらタッチするときには、相手を強く押さない、背中でなく肩にタッチするなど事前に指導する。
・じゃんけんをする場合は、勝ったほうがラインまで戻る、負けたほうが追いかけるようにする。
●ぬきっこ遊び
<進め方>
①ペアになり、向かい合ってじゃんけんをする。
②勝ったほうは目の前にいる相手にタッチされないようにかわして、前方のラインに向かって走る。
③負けたほうは鬼になり、抜かれる前にタッチしたり、抜かれた後に追いついてタッチしたりして捕まえる。
・チームで行う場合は、ラインを越えた子供とタッチして捕まえた子供の人数で勝敗をつけるとよい。
・相手をかわす動きが生まれるため、ペアどうしの間隔を十分に空け、隣のペアとぶつからないようにする。
・追いかけながらタッチするときには、相手を強く押さない、背中でなく肩にタッチするなど事前に指導する。
・マークを身に付ける場合は、タッチの代わりに相手のマークを取るようにする。

資料②【いろいろな鬼遊びの例】
●こおり鬼
鬼にタッチされた人は、その場で凍り動けなくなる。
凍った人は、友達にタッチしてもらうことで再び動けるようになる。
●手つなぎ鬼
タッチされた人は鬼と手をつないで追いかける。
鬼が4人になったら、2つに分かれる。
運動遊びが苦手な子供や、運動遊びに意欲的でない子供への配慮の例
鬼になってなかなか捕まえられない子供には、短い時間で鬼を交代したり、逃げる場所を制限したり、逃げる場所を狭くするなどの配慮をします。
鬼から逃げることが苦手な子供には、安全地帯を設けたり、鬼の人数を徐々に増やしたり、友達の人数を増やしたりするなどの規則の工夫が考えられます。
また、行い方や動き方が分からずに運動に意欲的に取り組めない子供には、行い方や課題を絵図で説明したり、活動内容を掲示したりするなどの配慮をします。
動きをゆっくりと示したり、一緒にそのチームに入ってゲームをしたりするとよいでしょう。
簡単な規則の工夫の例
教師から簡単な規則の工夫例を示し、みんなで試して遊んでみる活動を位置付けるとよいでしょう。
どの子供も楽しく運動遊びに取り組むことができるように、コートの広さを変えたり、鬼の人数を減らしたり、安全ゾーンをつくったりして、みんなで楽しめるように、分かりやすい運動の場や規則の工夫をしていきます。

→コートを狭くする

→鬼の人数を減らす

→制限時間を短くする

→安全ゾーンをつくる
もっと楽しもう
しっぽ取り鬼の動きを生かして宝取り鬼を楽しもう
4、5時間目は、チーム対抗のしっぽ取り鬼を行います(資料③【しっぽ取り鬼の進め方】参照)。ベルトやマークを正しく身に付けられるように安全に関する指導(安全なマークの付け方と取り方参照)を行い、子供どうしでも互いに確認できるようにします。
しっぽ取り鬼では、攻めと守りを交代しながら、走って相手をかわしたり、追いかけてマークを取ったりする楽しさに触れられるようにします。
「しっぽを取られないためには、どう走るといいかな」と投げかけ、自己や友達のかわし方を伝え合いながらよい動きを見付けていき、相手をかわすための走り方が分かるようにしていきましょう。
6~7時間目は、しっぽ取り鬼で身に付けた動きを生かして、チーム対抗の宝取り鬼を行います(資料④ 【宝取り鬼の進め方】参照)。
宝取り鬼の行い方を知り、「たくさん宝を取って、みんなでもっと楽しむためにはどうすればいいかな」と投げかけ、これまで学んできた、相手をかわす動き方や簡単な規則の工夫を生かしていきます。
ゲームの前後には自己や友達のよい動きをふり返って自己のかわし方を考えたり、その動きを友達に見てもらったりするとよいでしょう。
その気付きを全体の場でも交流することを通して、「次は、○○な走り方もやってみよう!」と、子供が自己決定したことを次のゲームに生かせるようにしていきます。
イラスト/みながわこう