読書指導のアイデア ⑧本を使って自己紹介しよう

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東京学芸大学附属小金井小学校司書 松岡みどり監修 本好きの子供を育てる読書指導のアイデア
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東京学芸大学附属小金井小学校司書

松岡みどり
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8回目のテーマは「本を使って自己紹介しよう」です。学級のなかで、あまり話をしていない友達もいるこの時期、みんなが本を通して自己紹介をして、友達の一面を知るのも、学級のみんなが仲よくなるきっかけになるのではないでしょうか。子供たち同士、子供たちと先生の距離を縮めるような楽しい活動となるでしょう。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

本を使って自己紹介しよう

1 デモンストレーションをする

「本を使って自己紹介する」という活動は、「自分を紹介できる本を選ぶ」「選んだ本を使って自分のことを紹介する」という2つの活動が含まれます。子供にとって、少しハードルが上がるかもしれませんので、まずは先生が本を使った自己紹介のデモンストレーションをしてみましょう。

選ぶ本は、先生の人となりに触れられるような内容の本がおすすめです。自己紹介の際には、本の概要を入れながら、どこが先生の人となりと重なっているのかを話します。

デモンストレーション後、「みなさんにも、このように本を使って自己紹介をしてもらいますので、〇〇(時期)までに本を選んでおいてくださいね」と言って、本を選ぶまでの期間をとるようにします。

 

松岡司書が本を使って自己紹介するなら

こまったさんのスパゲティ

作/寺村輝夫 絵/岡本颯子 
あかね書房

花屋のこまったさんが、休みの日にスパゲティをつくります。いろいろと困りながらも、おいしいスパゲティをつくっていきます。

松岡司書の自己紹介
「こまった、こまった」と言いながら、こまったさんは、がんばってスパゲティをつくります。こまったと思いながらもなんとかがんばるところが私に似ていると思ってこの本を選びました。

  

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『なぞなぞのすきな女の子』

作/松岡享子 絵/大社玲子 
Gakken

なぞなぞ遊びの大好きな女の子とはらぺこのオオカミが、森で出会います。オオカミは、「うまそうな女の子だ」と思ったとたん、女の子になぞなぞを出されて、大弱り。さて、その結末は……。

松岡司書の自己紹介
行動力があり、機転がきく女の子は、子供のときの私のあこがれでした。オオカミ相手に、なぞなぞでピンチをかわしていく女の子。そんな子供のときのあこがれの女の子が活躍する物語なので、この本を紹介します。

  

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2 本を選ぶ

子供が本を選ぶときに、具体的な選び方の視点をアドバイスすると選びやすくなります。例えば、物語なら、自分を当てはめたり、置き換えたりできるもの。本の中身に自分の「好き」が入っているもの。例えば、乗り物が好きだったら乗り物の本、生き物が好きだったら「生き物の本などを選んでもいいんだよ」と助言します。ただ単に好きなだけではなく、なぜ好きなのかも言えるような本がよいでしょう。図書館で選んだり、自分が持っている本のなかから選んだりします。

本を紹介するときには、本の名前、作者、登場人物と自分が似ているところやあこがれるところ、自分の紹介につなげられる好きなところなど、自己紹介のポイントを書くことができるワークシートがあると便利です。

本を使って自己紹介しようワークシート(例)

クリックで拡大、ダウンロードできます。

3 本を使って自己紹介

自己紹介の時間は、図書の時間がある場合はその時間を利用してもよいし、朝の会や帰りの会に、日にちを分けて、実践してもよいでしょう。自己紹介する人は、選んだ本の表紙をみんなに見せながら、自分のことをみんなに知ってもらうつもりで発表します。

4 掲示する

自己紹介が終わったら、ワークシートを掲示しておくと、友達のことをもっとよく知ることができます。本を持った写真を撮り、ワークシートと併せて掲示してもよいでしょう。

   



松岡みどり司書からのメッセージ
子供たちが「やってみたい!」と意欲がわくように、まずは先生が本を使ってどのように自己紹介するのかの見本を見せるとよいでしょう。そのときに選ぶ本は、現在の先生自身を表しているものでもよいですし、先生が子供の頃に読んでいたり、自分の好きだったりしたものでもよいと思います。子供たちに目線を合わせ、その本を見せることで先生の一面が見える時間になるとすてきです。
また、しゃべることが苦手な子には、「本を見せるだけでもよいし、一言付け加えてもよいよ」というようにハードルを低くするような配慮をするようにします。
また、低学年の場合、「自己紹介をする本を選ぶ」ことが難しい成長段階でもあるため、読み聞かせをして、登場人物のどのキャラクターが好きか、あるいは自分に似ているかというような活動をしても楽しいでしょう。例えば、イソップ童話の『うさぎとかめ』だったら、「自分はどちらのタイプかな?」と話し合ってみるのもおもしろいと思います。読み聞かせの本を選んでいるときに、キャラクターの個性の対比がはっきりしているものを見付けたら、その本を題材にしてこの活動をしてみても楽しそうですね。

 

読書や本の情報が満載

ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

 

授業で使える312冊の絵本を紹介

豊かな心と思考力を育む
絵本で広がる小学校の授業づくり

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)

司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。

B5判/112頁
ISBN9784098402212

〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)

京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。

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