理科授業でICTを使った “学習の振り返り” 【理科の壺】
学習の振り返りは、子ども自身が学んだことを再度思い出し整理するという役割があります。また、振り返りを書くことで、どこを押さえて理解しているのか、ということを先生が確認する評価としての役割もあります。子ども同士でどのようにまとめ、振り返ればよいのかをお互いに学ぶために情報共有すること、子どもの学びの状況を効率よく回収することについて、ICTを使ってみてはどうでしょうか。
これまでの方法と比べて、メリット、デメリットがあると思いますが、理科授業でICTを使った“学習の振り返り”を一度やってみてはいかがでしょうか。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/東京都公立小学校教諭・木藤 葵
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.ICTを活用した振り返りの良さ
「主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善に向けた3つの視点」の中には、
学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。
がありますが、ここでさらにICTを活用することで、授業中や授業後、家庭学習時など、自分が好きなタイミングで学習を振り返ることができたり、友達の考えをいつでも知ることができたりします。そこで今回は、ICTを活用した学習の振り返りの方法についてご紹介します。
2.スライドの共同編集を活用した振り返り
1つのスライドに全員がアクセスして、1人が自分専用のページに書き込みます(図1)。
35名学級であれば、35ページ分のテンプレートを作成しておきます。子どもたちは自分の出席番号のページに入り、自分のページに授業の振り返りを書いていきます。ページを移動すれば、すぐに互いの考えを見合うことができます。そのため、考えをすぐに共有したい場合に使える方法です。
このとき、最初のうちは振り返りの書き方の文例など、振り返りの視点をスライドに書いておくと、子どもが振り返る際の書き方のヒントとなります。
3.一画面で全員が見られる振り返り
表計算ソフトを振り返りシートとして活用することができます。図2のように、縦列に子どもの出席番号と名前、横列に日付と本時のめあてを書きます。
<振り返りルーブリック(評価の観点と基準)の例>
B:問題を解決することができる
(例:「~について分かった」「~について知った」)
A:どのような見方・考え方を使って問題を解決したのかを振り返りに書いている
(例:「〇〇と△△を比べて~ということが分かった」
「〇〇と△△とを関係付けると~~ということが分かった」)
S:A+自分の生活やこれまでの学習と結び付けて振り返りを書いている
(例:「〇〇の単元で考えた~~という考えが△△ということにもつながると考えた」)
1時間の振り返りだけではなく、単元を通して振り返りを蓄積していくことができるため、一単元での自分の学びを俯瞰して見ることができます。また、1単元1シートの振り返りシートにしておくことで(図3)、他の単元での自分の学びを簡単に振り返ることができます。同じ領域の学習をしたときに、前の単元で考えたことや学んだことを活かして予想や仮説を立てたり、見方・考え方を働かせることができたりすると考えられます。
紙のノートでの振り返りを互いに共有する方法と、デジタルのノートで共有する方法との大きな違いは、書いている過程を参照できるという点です。「振り返りが苦手」、「何を書けばいいか分からない」という子どもでも、友達がどのように書いているのかを参照することで、書き方が分かる子もいると考えられます。
先生も、画面上で誰が書けていて、誰が書けていないのかを瞬時に判断できるため、支援をしに行きやすいという利点もあります。
クラウドで共有できるようになってから、子どもたち一人一人の学びに寄り添いやすくなったと感じています。個の学びを大切に、子どもが自分の学びを自覚化できるように支えていきたいと思います。
イラスト/難波孝
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒につくっていきましょう!!
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<執筆者プロフィール>
木藤葵●きとう・あおい 東京都公立小学校教諭。大学・教職大学院にて小学校理科教育について学ぶ。静岡県で3年間教職を経験し、本年度より本校へ赴任。理科教育を中心に、日々実践研究を行っている。共著に『これからはじめる “GIGA” 全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科3・4年』(日本標準)
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。