小6 国語科「中学校へつなげよう」「生きる」「今、あなたに考えてほしいこと」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「中学校へつなげよう」「生きる」「今、あなたに考えてほしいこと」(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用例等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大学附属福岡小学校・大村拓也
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、説明的文章(随筆)と文学的文章(詩)を読み、文章の説明内容や想像した内容と自分の経験とを結び付けて自分の考えを形成することを目指していきます。
また、書き手の多様なものの見方や考え方に触れて、その中から自分を支える言葉を見つけたり、今までになかった考えを発見したりすることを通して、読書が自分の考えを広げることに役立つことに気付くことを目指していきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、これまでの国語科の学習で発揮してきた資質・能力を自覚することを目指します。
そのために、国語科で学んだことを今後どの場面で役立てていきたいかについて整理する活動を設定します。その中で、今の自分やこれからの自分について考える必然性が生まれてくることと思います。
そこで、自分の生き方について考えたことを書きまとめることを言語活動として設定します。
この言語活動を通して、複数の文章(説明的文章と文学的文章)を読み、理解したことを基に自分の感想をもつ力を発揮する学習を目指します。具体的には、「生きるとは何か」「どのように生きたいか」といったテーマに関わる文章を読み、自分の生き方について考えを書きまとめます。
本単元で扱う文章は、詩『生きる』と随筆『今、あなたに考えてほしいこと』です。
詩と随筆という異なるジャンルの文章を読むことで、子供たちは、「これから先どのように生きていきたいか」などについて様々な角度から考えることができるでしょう。
また、自分の生き方について考えたことを書きまとめる活動を位置付けることで、自分の感想をもつとともに、読書が自分の考えを広げることに役立つことに気付く学習を目指します。
6年間の国語科最後の学習として、子供たちが身に付けた力を自覚するとともに、同じ学級の友達と言葉を介して、今の自分を見つめたり、これからの自分について語り合ったりする最後の機会であることを感じながら進めていきましょう。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 自分の生き方を考えることを目的とした読書を
主体的な学びを生み出す上で求めていきたいのは、これからの自分の生き方について考えることを目的に読書をすることです。
本単元では、『生きる』『今、あなたに考えてほしいこと』を読みます。
その際、これからの自分の生き方につながるところを見つけたり、複数の文章から考えの根拠をつないだりすることで、内容について深く理解したり、様々な角度から感想をもったりできることに気付く子供の姿を価値付けていきます。
また、6年間の最後の単元であることも踏まえ、これまで設定してきた学習の目的を想起することで、目的によって読書の仕方が変わることや何のために読書しているのかという意味を見いだすことの大切さについて話し合ってもよいでしょう。
これまでの学習の積み上げから想定される読書の目的を以下に列挙しておきます。
【これまで取り組んできた読書の目的】
◉ 自分の生き方を考えるため(本単元)
◉ 魅力(おもしろさや不思議さ)を推薦するため
◉ 構成や表現を生かして文章を書くため(物語の創作、解説する文章など)
◉ 説明内容から新しい知識を得るため
◉ 複数の文章や複数のジャンルの文章を読むことで、考えの説得力を増したり、明確にしたりするため(本単元)
〈対話的な学び〉 自分の生き方に向き合う自己内対話を大切に
自分の中で生まれる言葉を見つける自己内対話を重視して、対話的な学習を進めていくことが有効です。
本単元のように生き方に関するテーマで複数の本を読んでいくと、文章中の言葉に共感したり、一つの言葉から新しい自分の考えを形成したりすることができるでしょう。この自己内対話を可視化することが大切です。
本単元で行う自分の生き方について考えを書きまとめるという言語活動を遂行する際に、文章中のどの言葉と自分の経験がつながったのかを書き込んだり、感化された言葉に印を付けたりすることで自己内対話の根拠を自覚できるでしょう。
また、読書をしながらつぶやく方法もあるでしょう。「ここは、共感できるなあ」「そうは思わない、反対だ」などといったつぶやきによって自己内対話が顕在化します。
〈深い学び〉 異なるジャンルの文章や既習の文章を関連付ける
深い学びに向かうためには、「関連する文章とつないで読むことで、自分の考えを問い直したり、新たな気付きを得たりすること」が大切だと考えています。
本単元では、教科書教材として二つの文章を中心に扱いますが、既習の教材文である『海の命』や『やまなし』といった文学的文章、『メディアと人間社会』や『やなせたかし~アンパンマンの勇気~』(5年)といった説明的文章を自分の生き方を考えるときにヒントにすることもできるでしょう。
このように、生きることをテーマにした関連する文章を複数読むことで、生き方という抽象的なテーマに対して、文章の言葉と自分の考えがつながって、少しずつ考えが具体化されるでしょう。
そのために、2時間目で行う「詩を読む活動」では、それぞれの連が表していることを言葉にこだわって想像したり、文末表現を比較して考えたりと、丁寧に詩の内容を理解することに重点を置くようにしましょう。
3時間目には「教材文から自分の生き方を考えて書きまとめる活動」を行います。
文章全体のまとまりや各段落の説明内容に着目して、共感したり、問いを抱いたりしながら読むことで、根拠の叙述を基に自分の生き方を見いだす学習を展開することができると考えています。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)これまで身に付けてきた国語科の力を整理する。
本単元は、最後の国語科の学習となります。中学校に向けて、これまで積み上げてきた国語科の力を整理して自覚できるようにしましょう。そのために、スライドに身に付けた力を整理していきます。
スライドに、これまでの学習でつくりあげたノートやスライド、写真や動画などを貼り付け、そこに「この学習で身に付けた力は〇〇だ」「これからこんなときに〇〇の力を生かしたい」といった自分なりの意味付けを具体的に打ち込んでいきます。1枚のスライドに一つの身に付けた力を整理していきましょう。
もし、4月当初から学期や年単位などで、個人用サイト(eポートフォリオ)を作成し、学習記録を蓄積することができれば、年間を通して身に付けた国語科の力を具体的に捉えやすくなると思います。
6. 単元の展開(4時間扱い)
単元名: 生き方について様々な文章を読み、オリジナルの詩「生きる」をつくろう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① これまでの国語科の学習で身に付けた力について書きまとめる。一枚のスライドに一つずつ、身に付けた力を整理していく。〈 端末活用 〉
・第二次(2時、3時)
② 詩『生きる』を読み、今の自分やこれからの自分がどう生きたいかを話し合う。
③ 伝えたい内容を整理し、構成を考えてメモを作成する。
・第三次(4時)
④ 文章を読んだことを基に、自分の生き方について考えをまとめ、共有する。
全時間の板書例と指導アイデア
● これまで学んできた国語科の力を自覚するために端末を活用する
本単元は、6年間最後の国語科の時間となります。
1時間目は、これまで学んできた国語科の力を整理します。そのために、スライドに身に付けた国語科の力を整理する端末の活用方法を提案します。
まず、端末のカメラ機能を使い、これまで使ってきたノートや学習プリントなどの学習成果物の中からいくつかを「分かったこと」「できるようになったこと」「こんなときに使いたい」を視点に、写真に撮って保存します(スライドに打ち込んでいたデータなどは、写真には撮らず、スクリーンショットで保存します)。
次に、撮影した(スクリーンショットをした)画像データをスライドに貼り付け、「身に付けた力」などについて、1~2文程度の文章で書き込みます。
1枚のスライドに1つの身に付けた力を整理していきましょう。これを1時間の中で、複数作成していきます。
<スライドに添付する材料の例>
・学習プリントやノートの写真 ・言語活動の成果物の写真(紹介カードや意見文など)
・学級全体での話合いやグループワーク、スピーチなどの動画
・その他(毛筆や硬筆の作品の写真、グループワークで整理したホワイトボードの写真、学級みんなの考えが書かれた板書の写真など)
スライドは背景の色で分類して整理しておくとよいでしょう。
分類の仕方として例えば、「話すこと聞くこと」を桃色、「書くこと」を黄色、「読むこと」を水色などと色分けする方法があります。
他には、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3資質・能力ごとにスライドを3色に色分けする方法、「学んだこと」と「これから使っていきたいこと」で2色に色分けする方法等、様々な整理ができると思います。
● 身に付けた力を整理したスライド例
(『やまなし』の授業で書いたノートの写真を基にまとめた例)
国語科の学びを自覚するのには、1枚のスライドを作成するだけでも十分だと考えますが、応用として、年間を通してスライドを端末に蓄積する「eポートフォリオ」の活用例も紹介します。
● 「eポートフォリオ」例
● 蓄積から凝縮へ、自覚から共有へ〈 端末活用 〉
「eポートフォリオ」は、端末のサイト作成機能を活用して作成します。子供たちが様々な単元で作成した表現物のスライド等を一括して整理することができます。
そうすることで、自分は、国語科の学習の中で「どのような力がついたのか」「どのように成長したのか」を長期的な視野で振り返ることができます。まずは、サイトを立ち上げ、そこにスライドや動画、写真をとにかく蓄積していくところから始めましょう。
次に、蓄積した資料の中から、自分が特に「できるようになったこと」「使いこなしていきたいと思ったこと」を選び、そこにコメント機能などを使って「できるようになった理由」「使いこなしていきたい理由」を書き込んでいきます。
イラスト/横井智美