小3体育「器械運動(マット運動)」指導アイデア
執筆/秋田県公立小学校教諭・佐藤秀恒
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・高田彬成、秋田県公立小学校校長・越中谷俊悦
目次
授業づくりの前に
器械運動のマット運動では、回転したり、支持したり、逆さになったりすることなどの技に挑戦し、その技ができる楽しさや喜びに触れることのできる運動です。
低学年の器械・器具を使っての運動遊びの学習を踏まえ、器械運動の楽しさや喜びに触れ、その行い方を知るとともに、マット運動の基本的な動きや技を身に付けるようにし、高学年の器械運動の学習につなげていくことが求められます。
3年生では単元を通して基本的な技の習得に重点を置き、コースを設定して技に取り組むようにします。基本的な技に取り組む時間を保証し、友達とのかかわりを通して、自分の課題を見付けたり、課題を解決できるようにしたりしましょう。
また、運動を楽しく行うために、きまりを守り誰とでも仲よく運動をしたり、友達の考えを認めたり、場や器械・器具の安全に気を付けたりすることができるようにしましょう。
単元の計画(例)
器械運動の授業においては、器械・器具の準備や活動中に教師が全体を見渡し、危険がないか常に注意しておくことが大切です。器械・器具の配置に関しても安全に配慮した場を設定するよう心掛けます。下記の記事に事故防止の指導例があるので、参考にしてください。
高学年の用具の準備はどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #9】
学習を進めるにあたって
Point1 考えたことを友達に伝えたり、友達の考えを認めたり、誰とでも仲よくできるように
・友達や自分のできばえを見合えるように、グループ活動を取り入れましょう。
・連続図等を使って、友達の動きで気が付いたことやアドバイスを伝え合う場をつくりましょう。
開脚前転の場合
いつ足を開いているかな? 手を着くタイミングを見てみよう。
指導のポイント
①グループで互いの動きを見合って、上手にできているところや直したらよいところなどを伝え合えるように、見合うポイントを示したり、よい動きを意図的に紹介したりしましょう。
②技を成功させるために気を付けたいことについて、連続図にシールを貼ったり、自分がどうしたらうまくできたかなど、そのポイントを指摘できる学習環境をつくりましょう。
Point2 子供たちが進んで運動に取り組むようにするために
・運動の場を工夫することで、簡単な動きから始めて、たくさん体を動かすことができるようにしましょう。
・子供たちのよい動きを見付け、声をかけてほめましょう。
・子供たちが動きをイメージできるような、具体的な声かけをしましょう。
前転コース
このマットの中で、何回前転できるか挑戦してみよう。
玉を目印にして前転する
川跳び遊び
側方倒立回転
壁倒立
マットをしっかり見ているから、グラグラしないで壁倒立ができているんだね。
●指導のポイント
~運動に意欲的でない子供のために~
①低学年で学習した運動遊びを取り入れましょう。
②自己評価や相互評価ができるように、目印を置くなどの工夫をしましょう。
Point3 子供たちがきまりを守り、けがなく楽しく運動するために
・安全に行うためのきまりを具体的に指導しましょう。
・全体に気を配りながら、それぞれの場に移動して指導しましょう。
・友達と一緒に、マットなどの器具の準備や片付けをするように指示しましょう。
《授業を始める前の安全対策:教師》
①マットなどは、何人かで一緒に運びましょう!
②自分の技が終わったら、次の人に合図を送りましょう!
③前の人がマットから出てから、技を始めましょう!
合図を出してから始める
しっかり合図を見てから始めていて、よいね!
●指導のポイント
安全に学習ができるように、授業のはじめに毎時間約束を確認しましょう。
指導例:感覚つくりの運動
ゆりかご
アンテナ(背支持倒立)
肋木を使った壁倒立
マットを見ながら、1歩ずつ肋木を登ろう!
慣れてきたら、次のような運動にも挑戦しよう!
ゆりかごでタッチ
ゆりかごから、しゃがんだ姿勢になろう。
アンテナ
アンテナをしたまま、足を左右・前後に開いてみよう。
頭倒立
肋木での倒立から頭をマットに付けると、頭倒立になるよ。やってみよう!
指導例:はじめの段階
それぞれのコースで様々な技の行い方を知るとともに、自分の課題をつかもう。
前転コース
坂道で前転
踏切板をマットの下にいれよう。
易しい場での開脚前転(段差マット)
始める姿勢を変えて前転
回るスピードを速くしよう。
だんだん高い位置から前転できるようになってきたね。
回るスピードを上げるには、どの位置がいいかな?
後転コース
マットを重ねた場での開脚後転
上手になってきたから、次はマットを1枚減らしてみよう!
坂道で後転
踏み切り板をマットの下に入れよう。
耳の横に、手を準備して回っているかな?
両手でマットを力強く押してみよう!
●指導のポイント ~運動が苦手な子供のために~
①マットの下にロイター板(踏み切り板)を入れたり、マットを重ねたりする等、技が成功しやすくなるよう工夫しましょう。
②ゆりかごなどの体を揺らす運動遊びや、かえるの足打ちなどの体を支える運動遊びに取り組む時間もつくりましょう。
倒立回転コース
補助倒立ブリッジ
側方倒立回転
●指導のポイント ~運動が苦手な子供のために~
①ブリッジしやすいように、二人組で背中に手を当てる補助の仕方を十分に指導しましょう。
②脚を勢いよく振り上げるためのゴムひもや、背中を反り返す体の使い方を身に付けるための「目玉カード」など、補助具を使いましょう。
はね起きコース
首はね起き
跳び箱を使った首はね起きは、ブリッジしているのと同じ状態だね。ここから、反動をつけて起き上がろう!
段差を利用したはね起き
●指導のポイント
ステージの段差を利用する場合は、教師が背中に手を添えて起こしてあげることで、できた感覚を味わわせましょう。また、ソフトマットを使い、安全面に気を付けて取り組みましょう。
●指導のポイント ~運動が苦手な子供のために~
体を反らせて起き上がれるように、そのための体の使い方を身に付ける場づくりを工夫しましょう。
①跳び箱の1段目をマットの下に置き、ブリッジからマットを押して起き上がる場づくり
②ステージの段差を利用する場づくり
倒立コース
壁倒立
・体を逆さまにして支える動きを身に付けるために、手や頭の目印や「目玉カード」、器具や補助を使おう。
・マットに「目玉カード」等の目印を置いて、それを見ながら倒立しよう。
グループの友達とアドバイスし合いながら進めよう。どこに頭や手を置けばいいかな? どこを見てやれば、やりやすいかな?
頭倒立
→補助をつけながら、頭倒立をしよう。
頭と両手で三角形をつくるようにして、倒立してみよう。
●指導のポイント~運動が苦手な子供のために~
最初はかえるの足打ちのように、足を少しだけ床から離してみるよう言葉がけをするなど、易しい運動から取り組むようにしましょう。
指導例:やや進んだ段階
イラスト/たなかあさこ
『小三教育技術』2018年10月号より