小3 国語科「これがわたしのお気に入り」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「これがわたしのお気に入り」(光村図書)の板書例、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都練馬区立大泉学園小学校校長・加賀田真理
執筆/東京都渋谷区立富谷小学校・佐藤綾花
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元は、考えと理由や事例との関係を明確にして、書き表し方を工夫する力と、共有を通して自分の文章のよさに気付く力を身に付ける単元です。
具体的には、紹介したい理由が読む人に分かりやすいように段落の分け方や説明の仕方を工夫する力、自分が作ったお気に入りの作品について紹介した文章や自分が工夫したことなどを共有し、自分の文章のよいところを見つける力を身に付けられるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、「自分が作ったお気に入りの作品について紹介する文章を書く」という言語活動に取り組みます。
具体的には、作品について簡単に説明したあと、その作品がお気に入りである理由を伝える文章を書きます。紹介するのは、これまでに自分が作った作品であるため、児童は作った時や作った後の気持ち、周りの人の反応を想起しやすく、書くために必要な情報を集めやすいと考えます。
文章の構成の型(題→ 選んだ作品は何か→ 作品の簡単な説明→ お気に入りの理由)を提示し、構成を考える時間を短縮できるようにします。その分、本単元で身に付けたい、書き表し方を工夫する力と、共有を通して自分の文章のよいところに気付く力を確かに身に付けられるような単元計画にすることができます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 自己の学習を具体的に振り返り、次の学習につなげられるように、振り返り方を提示する
児童が主体的に学べるようにするためには、「今日は情報を集めよう」「今日は下書きを書こう」と本時にする活動を大まかに捉えるだけでなく、一人一人が自分のしたいことを具体的に捉えられるようにすることが大切です。
そのためには毎時間の振り返りにおいて、めあてと照らし合わせて、「できたこと」「できなかったこと」を具体的に捉えておく必要があります。
だからと言って、「振り返りを具体的に書きましょう」と指示するだけでは難しいでしょう。
例えば、「お気に入りの理由の二つ目が書けなかった。次は『家族にこうひょうだった』ことの例を書けるようにしたい。」など、振り返り方の例を示しながら、「できたこと」「できなかったこと」を書くことや、途中段階での対話で友達から言われたこと(ほめられたこと、質問されたこと、分かりにくいと言われた部分)も書いておくことを確かめます。
次時のめあてを具体的にもてるようにするために、振り返りもできるだけ詳しく書くとよい、ということを児童が実感できるようにします。
教師が単元の最初に振り返り方を提示するだけでなく、毎時間の児童の振り返りを読み、具体的なものを価値付けたり、曖昧な記述には質問をしたりすることも有効です。
また、具体的に振り返ることができている児童の記述を紹介することも考えられます。
〈対話的な学び〉 共有するときのモデルを示し、ポイントを明確にする
書き上げた紹介文を交換して、ただ読み合い、思ったことを伝え合うのではなく、自分の文章のよいところに気付くことにつながる共有となるようにすることが大切です。
そのために、共有するときのモデルを示します。
具体的には、まず教師がモデル文を示し、どのようなところを工夫して書いたのか伝えます。そのうえで、児童によいところを発言してもらい、それらを価値付けます。
他にも児童が書いたモデル文を提示し、教師がよいところを伝えることもよいでしょう。
完成した紹介文に対して助言をするだけの時間にならないよう、共有の目的(よいところを見つけられるようにする)をしっかりと確かめることが大切です。
〈深い学び〉 これまで「書くこと」の学習で身に付けてきた、考え方や表現の工夫の仕方を焦点化し、自分や友達の文章を読むときの視点とする
本単元は3年生においては最後の「書くこと」の学習です。
そのため、お気に入りの作品について紹介する文章を完成させる、という言語活動のゴールを意識するだけでなく、これまでに学んできたことを総動員して、文章をよりよく書こうとする意識を持つことが大切です。
そのために単元の導入で、教科書の巻末にある【「たいせつ」のまとめ】などを参考にしながら、これまでに学んできたことを児童自身の言葉で整理する時間を設定します。
例えば「食べ物のひみつを教えます」では、内容のまとまりごとに段落を分けることや、伝えたいことに合った例を挙げることを学んできました。
「たいせつ」に示されているように整理された言葉で児童は話せないかもしれませんが、児童自身の中にある実感の伴った言葉で話せるように「どんなことが大切だったかな?」と投げかけるなどしながら、学んできた「技」を学級全体で共有します。
そして、それらの「技」を使って文章を書くことが本単元の目標であり、評価の観点であることを確かめます。11時間目の共有の際も、確かめた観点に沿って友達や自分の文章を読み、できたことを自覚することでよさを実感できるようにしていきます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)ウェビングマップに書き出して取材をする。
自分のお気に入りの作品について思い出したことを、一つ一つカードに書きつないでいくことで、作品に対する情報をたくさん集められるようにします。
1人1台端末の付箋機能を活用したり、デジタル教科書の思考ツールを活用したりするとよいでしょう。その際、カードに書く観点を提示することで、「そういえばあんなことがあったな」と児童が思い出しやすくなるようにします。
また、「頑張ったこと」は青、「工夫したこと」は黄色、「自分の気持ち」はピンク、「他の人(友達や家族)からもらった言葉」は緑、というように観点毎に色を変えることで、「ピンクの付箋が少ないから、気持ちも入れよう」と様々な観点から情報を集めようとする意欲をもたせることができます。
(2) ワープロ機能を活用して記述する。
1人1台端末を活用して記述するメリットとして、すぐに修正できるということが挙げられます。
本単元では表現を工夫することに重点を置いているため、記述したあとに読み直し、よりよい表現に修正するということが何度も起こります。そのため、すぐに修正できるワープロ機能の活用は、本単元に適していると考えます。
また、自分で撮影した作品の写真を挿入することもできます。端末を活用して作品の写真を自分で撮影することで、特に紹介したいところを目立たせることもできます。さらに読み合う際も、よいところにマーカーを引いたりコメント機能を使って感想を伝え合ったりすることも容易です。
3年生の段階では、まだタイピングに不慣れな児童もいると思います。児童の実態に応じて、「ディクテーション」など、音声入力機能を活用することも考えられます。
6. 単元の展開(11時間扱い)
単元名: これがわたしのお気に入り
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
・これまでの「書くこと」の学習で学んできたことを振り返る。
・これまでに学んできたことを使って、お気に入りの作品について紹介する文章を書く、という学習のめあてをもつ。
・モデル文を読み、何がどのように書かれているかを分析する。
・これまでの「書くこと」の流れを参考にして、学習計画を立てる。
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時、8時、9時、10時)
(情報の収集、内容の検討)
・紹介したい作品を選ぶ。
・選んだ作品についての情報をウェビングマップに書き出す。
・ウェビングマップに書き出した情報の中から紹介文に必要な情報を選ぶ。
(構成)
・モデル文の構成を確かめる。
・構成メモを書く。
(記述)
・モデル文を詳しく読み、書き表し方の工夫を見付ける。
・書き表し方を工夫して記述する。
・第三次(11時)
・紹介文を読み合い、表現のよいところを伝え合う。
・自分の文章を読み直し、表現のよいところについて考える。
・学習を振り返る。
各時の板書例と指導アイデア
●「深い学び」のために
まず、これまでの「書くこと」の学習で学んできたことを振り返ります。
教科書の巻末にある「『たいせつ』のまとめ」を参考にしながら、どのようなことを学んできたか、どのようなことが大切であったか児童に尋ねます。
3年生のこれまでの学習では、「内容のまとまりごとに段落を分ける」こと、「伝えたいことに合った例を挙げる」ことなどを学んできました。児童はこのように整理された言葉では話せないかもしれませんが、児童自身が自覚できている学びを振り返ることが大切です。
教師は児童の発言を価値付け、整理しながら板書します。
その後、本単元は3年生の「書くこと」の最後の単元であり、これまでに学んできたことを総動員して文章を書こうと投げかけ、学習のめあてをもてるようにします。
「書くこと」の学習では、書く題材に対する関心を高められるようにすることも大切です。
そのために、これまでに児童が作ってきた作品の写真を見せたり、図工の教科書の写真を提示したりするとよいでしょう。
つぎに、モデル文を読み、何がどのように書かれているか分析し、本単元で書く紹介文の構成や表現の工夫の仕方についてつかめるようにします。
さらに、上記のように整理した「これまで学んできたこと」と照らし合わせて、よいと思ったところはどこか、感想を聞きます。全体で一つのモデル文に対する感想を共有することを通して、「文章のよいところに注目して読み、感想を伝え合う」という「共有」のイメージも具体的にもてるようにします。
学習計画を立てる際、「取材」「構成」「記述」「推敲」「共有」とある中で、本単元では「記述」と「共有」の部分に重点を置いて学習することを伝えます。
そうすることで、自分が身に付けるべき力を児童が意識しながら学習に取り組めるようになります。「自分のお気に入りの作品について紹介するためには、理由や事例を挙げて工夫して書く必要があるから、学習計画の7~10時間目のところが特に大切なんだな」「11時間目の共有では、今日モデル文でやったように、友達と感想を伝え合って、文章のよいところに気付くことができるようにしよう」と児童が意識できるようにします。
●「対話的な学び」のために
学習計画を立てる際は、まず個の学習をどのように進めるかを考えて計画を立てることが多いと思います。しかし、それだけではなく、友達との対話をどの部分に入れるとよいかを考えることで、児童自身にとって必然性のある対話を学習計画に位置付けることができます。
「取材をした後、同じ作品を選んだ人と交流したい」「6~9時間目の『工夫して文章を書く』の途中で、友達と交流すると、修正できていいと思う」など、どの部分で何のために交流をするとよいか、児童のアイディアをまとめながら対話的な学びを学習計画に位置付けていきます。
イラスト/横井智美