小6理科「人の体のつくりと働き」指導アイデア

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執筆/大阪府公立小学校首席・宮本純
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・民辻善昭、大阪府公立小学校校長・細川克寿

人体模型を見ながら話している子供たち

主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

令和2年度から実施される学習指導要領に、

単元など内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)

と記されています。「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行い、資質・能力を育成することが大切になります。では、これらの視点で授業をどのように改善すればよいのでしょうか。

はじめに、「主体的な学び」については、自然の事物・現象から問題を見いだし、自らの学習活動を振り返って意味付けたり、得られた知識や技能を基に次の問題を発見したり、新たな視点で自然の事物・現象を捉えることができるようにすることなどが大切です。例えば、人や身の回りの他の動物が生命を維持するための日々の営みについて考える中で、調べてみたいことから問題を見いだすことや、自分が興味をもって調べた体の各部分(臓器など)には、どのような働きがあるかを理解し、その部分には生命を維持する上で、体全体としてどのような役割があるのかを捉えることができるようになります。

次に、「対話的な学び」については、問題設定の場面で、自分の考えを他者と意見交換したり、考察の場面で、調べて分かったことを基に議論したりすることなどが大切です。例えば、人や他の動物が生命を維持するために必要な活動について、話合いを通して意見交換することで、人や他の動物の体のつくりに対する考えを広げたり、自分が調べて分かったことを発表し互いに議論することで、人や他の動物の体の働きについて、より妥当な考えをつくりだしたりすることができるようになります。

最後に、「深い学び」については、調べて理解したことを基に、日常生活の様々な場面における自然の事物・現象を説明できるように、「理科の見方・考え方」を働かせることが大切です。例えば、「心臓」は人や他の動物によってそれぞれつくりは異なるが、血液を送ることによって酸素を体全体に供給するという、重要な役割を担っていることが共通しています。そういった生命の共通性・多様性の視点から、人や他の動物の体のつくりや働きを捉えることができるようになります。

以上の視点から授業改善を行い、次ページに挙げる単元のねらいに迫ることが大切です。

授業づくりのポイント

①自然の事物・現象から問題を見いだし、得られた知識を基に新たな視点で自然の事物・現象を捉える場面の設定。

②自分の考えを他者と意見交換したり、調べて分かったことを基に議論したりする場面の設定。

③学習した内容を日常生活の事物・現象に置き換えて考える場面の設定。

単元のねらい

体のつくりと呼吸、消化、排出及び循環の働きに着目して、生命を維持する働きを多面的に調べる活動を通して、人や他の動物の体のつくりと働きについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元計画(三次 全10時間)

一次

1時

●人や他の動物が生命を維持するために必要な活動について話し合う。

・食べる、飲む→(消化、吸収)
・呼吸→(吸う息と吐く息の違い)
・心臓が動く→(血液の循環)

⇒活動アイディア①

二次

2・3時

食べ物は体内でどのように変化するのだろうか。

●でんぷんが唾液によってどのように変化するのかを調べる。

●胃や腸の働きについて調べる。


4・5時

吸う息と吐く息では、どのような違いがあるのだろうか。

●気体検知管などを使って、吸う息と吐く息の成分の違いを調べる。

●肺の働きについて調べる。


6・7時

血液はどのようにして全身に流れていくのだろうか。

●心臓の働きにより、血液が全身に行きわたる様子を調べる。

●腎臓の働きについて調べる。

三次

8・9時

体の各部分と生命を支える仕組みは、どのようにつながっているのだろうか。

●各臓器の役割と、生命維持との関連について話し合う。

●調べたことをプレゼンにまとめ、ワークショップ型発表会を行う。

⇒活動アイディア②

単元デザインのポイント

全体

単元の導入では、身近な自然の事物・現象から問題を見いだすことで、主体的に問題解決に取り組むことができるようにする。そして、見いだした問題を多面的に調べる活動を通して、体のつくりと働きについて理解できるようにする。さらに、調べて分かったことと日常の生命活動とをつなげて考える場を設定することで、生命の素晴らしさに気付き、生命を尊重する態度を育成できるようにする。

一次

一次では、人や他の動物が生命を維持するために必要な活動という、子供が捉えやすい身近な現象を取り上げ、話合いによる意見交換から、知らないことや調べてみたいことをこれから取り組む問題として見いだし、二次の学習活動へとつなげる場とする。

二次

二次では、一次で見いだした問題について実験や資料を通して、多面的に調べる場面とする。その中で新たに出てきた疑問、例えば「吐く息は、どうして二酸化炭素の割合が増えるのだろう」などを、三次の問題へとつなげる可能性も考えられる。

三次

三次では、これまでに学習してきた内容と、人の体のつくりや働きとをつなげ、総合的に生命を支える仕組みを捉える場面とする。ワークショップ型の発表会を行うことで、相互に学び合う環境をデザインする。発表者は学習したことを相手に分かりやすく説明できるようにし、参加者は質問などの交流を通して批判的に見合うようにすることで、共に学びを深めることができるようにする。

活動アイディア①(一次 1時)

人やその他の動物たちは、生命を維持するためにどのような活動を行っているだろうか。

呼吸をしています!

食べ物を食べたり、水を飲んだりします。

心臓が動いているということが、生きているということです。

では、人やその他の動物にとって、呼吸・食べ物や飲み物・心臓の動きが生命を維持するために必要な理由を説明できる?

酸素を吸うためっていうのは聞いたことがあるけど、吸った酸素がどうなるのかは知らないなあ。

食べ物が体の栄養になることは知っているけど、食べた物が体の中でどうなっているのかは知らない。

そもそも、心臓ってなんのために動いているんだろう。

呼吸・食べ物や飲み物・心臓の動きは、生命の維持とどのような関係があるのか、自分の考えを班の友達と意見交換してみよう。

【C1 さんの班】

酸素って吸った後、体の中でどうなっているのかな?

なくなるんじゃないの?

なくなったら、生きていけないんじゃないの。だから、酸素はなくならないと思うよ。

吐く息に酸素が含まれているか調べたら、分かるかもしれないね。

じゃあ、吸う息と吐く息には、どんな違いがあるか調べてみよう。

問題(二次で取り組む)

吸う息と吐く息では、どのような違いがあるのだろうか。

指導におけるポイント

身近な事象から問題を見いだす場面の設定

  • 子供にとって「生命を維持する活動」というものは、日常生活から容易に考え出せるものです。したがって、積極的に多くの意見が出てきます。しかし、それらの活動を行う上での体の働きや体内で起こる変化についてまでは、しっかりと理解できていない子供がほとんどです。そこを自覚化することで、自分事の問題として見いだせるようにします。

自分の考えを他者と意見交換する場面の設定

  • まずは、自分が知っていることと、よく分からないことを「自分の考え」として明らかにすることが大切です。それを班の中で互いに発表し合い、意見交換することで、様々な意見を取り入れることができ、「自分の考え」を広げることができます。そうすることで、よく分からないことを自分たちで調べようとし、観察や実験をすることで解決できそうな問題を他者と共に見いだすことができます。

活動アイディア②(三次 10 時)

問題

体の各部分と生命を支える仕組みは、どのようにつながっているのだろうか。

【展開例①】

私は、心臓と生命の維持と関わりについて詳しく調べました。心臓は血液を送るポンプの役割をしており、血液は全身に酸素を送り、不必要な二酸化炭素を受け取ります。酸素と二酸化炭素のやり取りは肺で行われているので、心臓と肺は生命を維持する上で、非常に重要な連携を果たしています。息が苦しいのは、酸素が体内で少なくなっている状態です。だから、たくさん酸素を送るために心臓が速く動くようになっているのです。

心臓と肺のつながりがよく分かりました。僕の調べた腎臓とも何かつながりがあるのですか。

心臓は体の全体に血液を送っているので、腎臓ともつながっています。

心臓も不必要なものを体の外に出すという役割を持っているね。

【展開例②】

僕は、人とその他の動物の消化管について調べました。この映像を見てください。

映像を見せながら調べたことを説明する子

指導におけるポイント

得られた知識を基に新たな視点で自然の事物・現象を捉える場面の設定

  • 単元の学習の中で、臓器について調べ、知識を得ています。そこで、単元導入時に話し合った「生命の維持」という観点を問いかけることで、それらの臓器が他の臓器とどのようにつながって生命の維持と関連しているのかという、新しい視点で説明できるようにします。

調べて分かったことを基に議論する場面の設定

  • ワークショップ型の発表会にすることで、質問や追加の説明をお願いするなど、相互に理解を深めるための議論が行われるようにします。

学習した内容を日常生活に置き換えて考える場面の設定

  • 例えば、激しい運動の後に心臓の鼓動が速く激しくなることや、呼吸の回数が増えるといったことを、体験を通して全員が実感できる場を設けてみましょう。また、給食の時間に、「よく噛んで食べましょうと言われるのは、どうしてだろう」と問いかけてみましょう。そうすることで、体の臓器やその働きと日常生活の事物・現象とを関連させて説明したり、人と他の生き物とを比較して共通性や多様性を説明したりできるようにします。

調査官からのワンポイント・アドバイス

国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也

子供は自分なりの考えをもっている

小学校理科では、問題解決の活動を通して、自ら自然の事物・現象についての考えを少しずつ科学的なものに変容させていくことを重視しています。つまり、予め自分がもっている自分なりの考えを自覚することが大切なのです。

本実践では、人の体のつくりと呼吸、消化、排出、循環の働きなどを扱いますが、子供たちは日常的にこれらを意識しながら生活しているわけではありません。そこで、活動アイディア①のように、まずは、改めて生命を維持する活動についての考えを自覚させ、そこから問題を見いだすようにすることが、主体的な学びにつながっていくのです。

心臓の働き、肺の働き……と様々な臓器の働きがつながって、自分の生命が維持されているという理解、さらには他の動物に新たな問題を見いだし追究する姿を期待したいものです。

イラスト/山本郁子 横井智美

『小六教育技術』2018年5月号より

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