あれ? 班ごとの実験で、結果がバラバラになってしまった…どうしよう 【理科の壺】
実験結果のまとめ方で困ったことありませんか? 結果がバラバラになってしまって収拾がつかなくなってしまった、結果データがうまく出ないなど、実験結果のまとめで不安に思われる方は多いです。今回は、その中でも班ごとの実験結果がバラバラになってしまった2つの事例から、手立てを考えてみます。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・尾方優祐
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
実験の結果が明らかにおかしいと感じたときの授業展開
理科の授業をしていると、予備実験をしていても、子どもたちに丁寧に実験の手順を説明していても、実験の結果が思った通りにならないことがあります。そんなときは、無理に結論を急ぐのではなく、一度立ち止まって、学級全体で実験の結果のばらつきについて話し合うことを大切にしましょう。
それでは、具体的に2つの事例を見てみましょう。
<事例1>「植物の養分と水の通り道」(第6学年)
「ジャガイモが葉でデンプンをつくりだすのに、日光が関係しているのだろうか」という問題を解決する授業場面について例を挙げます。
子どもたちは、日光は関係している、または日光は関係していないと、それぞれ根拠のある予想や仮説を発想することが多いです。
これらの予想に対する結果、考察場面について見てみましょう。
上の表のような結果だと、デンプン反応に日光が関係しているのか、関係していないのか、どちらともいえない状況になります。このように、生命・地球領域では環境に左右される場合も多いため、実験結果が思うように出ないことも少なくありません。
このようなとき、時数に余裕がないと、教師の立場から「どうしても結論まで進めたい!」と考えてしまう可能性があります。
どうしても結論まで進めなければ…!
理科では、事実を基に解釈することが大切です。実験結果(事実)が曖昧なまま解釈し、結論付けることは、大切なことを置き去りにしてしまうことになりかねません。
このようなばらつきのある結果になってしまった場合、我々教師の準備(予備実験)に原因があったり、子どもたちの実験の技能に原因があったりします。
そこで、子どもたちと話し合う中で、「もう一度実験したい!」「本当に調べたいことを確かめる実験ができていたのかな?」など、再実験の必要性に授業の流れを修正します。
もちろん、1度や2度の実験で結論付けることができるよう、カリキュラム・マネジメントすることも大切です。しかし子どもたちにとっては、失敗から学ぶことも大切であると考えます。
もう一度実験したい!
本当に調べたいことを確かめる実験ができていたのかな?
<事例2>「振り子の規則性」(第5学年)
「振り子の重さを変えると、1往復する時間は変わるのだろうか」という問題を解決する授業場面について例を挙げます。
ブランコでの子どもたちの体験を伴う導入を行った場合、一人乗りの時よりも、二人乗りの方が、勢いがついていたから、往復にかかる時間が速いのでは? と予想します。この予想を確かめるために、振り子におもりをつるして実験を行います。
「おもりを増やす」ことを変える条件としたとき、振れ幅と振り子の長さは変えないと子どもたちは発想します。発想した通りに、実験を行い次のような結果が得られたとします。
5年生では、調べたい要因を変える条件、その他の要因を変えない条件とし、条件を制御して実験を行います。
●振り子の重さを変えると、1往復する時間は変わるのだろうか
条件はどこのグループも同じだったよね?
10往復の数え方も確認したよね?
教師と子どもたちで一緒に実験方法を確認していても、いざ実験を行って結果に違いが出ると、先ほどのデンプンの例と同様に、結論を導き出すことが難しくなります。
ここでも結論を急がず、次のようなことを意識してみるとよいでしょう。
①子どもたち同士で、落ち着いて条件が揃っているのか確認する。
②時間の計測の仕方(10往復の開始と終了のタイミング)が揃っているのかを確認する。
この2つのことをもう一度確認して、実験を行ってみるとよいと思います。
子どもたちは、理科の実験が大好きです。しかし、教師としては実験結果から考察し、結論を導き出すまでを計画していることが多いため、急いでしまいがちになります。実験が正確にできるようになったことを価値付けることが、実は、結論までの導出をスムーズに行うための手立てだと思います。
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
尾方優祐●おがた・ゆうすけ 神奈川県公立小学校教諭/同校研究推進委員長/横浜市小学校理科研究会教諭職役員/横浜市小学校理科教育課程委員/小学校理科教育の授業実践を日々行いながら、国語科・社会科と理科教育における資質・能力との関連について研究している。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。