小6 国語科「日本文化を発信しよう」板書例&全時間の指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「日本文化を発信しよう」(光村図書)の各時の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:日本文化を発信しよう(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院准教授・茅野政徳
執筆/山梨県北杜市立高根東小学校・田所 愛

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、自分で見たり聞いたり調べたりしたことをもとに、書こうとする題材に対する知識や情報を獲得します。
それをもとに、読み手を意識した文章全体の構成や展開を考え、資料を用いて自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫する力を育てていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

教科書では、次のような学習過程が示されています。

① 題材を決めて、構成を練る。
グループで取り上げる「日本文化」を決める。
② くわしく調べる。
本や新聞、インターネットなどを活用したり、実際に見学に行ったりインタビューしたりする。
③ パンフレットの構成を決める。
誰がどのページを担当するかなど。
④ 各ページの割り付けを決め、下書きを書く。
絵や写真の使い方、伝えたいことにあわせた文章構成を考える。
⑤ 全員分のページを合わせ、パンフレットを完成させる。
⑥ 読み合って感想を伝え合う。

上記のように教科書では、「日本文化」を題材とし、調べたことをもとにパンフレットを作成する展開となっています。題材とする「日本文化」によっては、書籍やインターネットを使って調べ、知識や情報を集めることはできても、実際に見たり体験したり、詳しい情報を得るために質問したりすることが難しい場合があるため、児童と題材との距離が縮まりにくいかもしれません。

そこで本実践では、「日本文化」の中でも地域にある美術館に所蔵されていたり、模写を借りられたりする絵画を題材に選び、絵の魅力をおうちの人に解説する文章を書く活動を設定しました。

しかし、題材は変わったとしても本単元ではぐくみたい資質・能力に変わりはありません。特に以下の活動を重視し、学習を進めましょう。

④ 各ページの割り付けを決め、下書きを書く。
絵や写真の使い方、伝えたいことにあわせた文章構成を考える。

さて、児童は絵を間近で鑑賞できますが、おうちの人はそれができません。おうちの人に、いかに絵のよさを知ってもらえるか、見てみたいと思ってもらえるかという相手意識、目的意識を明確にし、児童が見通しを持って学習を進めることが、主体的に学習に取り組む態度にもつながると考えます。

また、解説する文章を書くためには、自分がその題材についてたくさんの知識・情報をもち、題材との距離を近付けることが大切です。

今回は、地域にある美術館の方に数枚の絵を持って来校していただく計画にしました。
児童は絵の説明を聞き、分からない点や興味をもった点を質問し、絵に対する知識・情報を増やしていきます。絵は、撮影可能なものとし、この時間以降も児童が自由に鑑賞できるように一定期間借りることができると、興味や関心が継続し、魅力に迫ることができると思います。

このほかにも、「日本文化」の中で、教科書と同じように「食」に注目し、特に給食を題材にするのもよいでしょう。
給食は児童が毎日、口で味わい、目で見て楽しみ、鼻で香りをかぐなど、多くの感覚を働かせて食しており、さまざまな気付きが生まれるのではないでしょうか。
また、地域によって趣向が凝らされており、地域の食材や味付けなどを知る良い機会ともなるでしょう。可能であれば、食べる前に栄養士さんに来ていただき食材や調理法、作り手としての思いや願いなどを説明してもらったり、児童から疑問に思っていることを質問したりして、知識・情報を増やしたいものです。給食なら写真に撮っておくことも容易にできます。こうした点から、給食は題材として適していると考えます。いずれにしても、題材は児童が書くための知識・情報を豊富に得られるものが理想的です。

本単元の直前に置かれた単元で、児童は「『鳥獣戯画』を読む」という説明的文章を読みました。
その文章の筆者の高畑勲さんは、『鳥獣戯画』に対する知識や情報を豊富にもち、十分に魅力を感じていることが分かります。だからこそ、その魅力を読み手に伝えるためにさまざまな表現や論の展開に工夫をできたのでしょう。
本単元では、書こうとする題材に対する知識や情報を獲得し、それをもとに、読み手を意識した文章全体の構成や展開を考え、資料を用いて自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫する力をはぐくみます。前単元は、このような書く力を育むための参考となるでしょう。前単元が本単元につながるのと同様に、本単元で学んだ表現の工夫や論の展開のしかたが、他教科・領域の学習や日常生活に生かされることを願っています。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 題材に対して、見聞きしたこと、感じたことを伝えるために書く

主体的な学びとは、児童自らがこの学習をすることに興味・関心をもち、見通しをもって学習を進めることだと考えます。そのような主体的な学びを生み出すために、相手意識・目的意識をもつことが大切です。

教科書では、グループでパンフレットにまとめる活動が設定されています。
児童の実態に応じて、グループで分担し、パンフレットを作成してもよいですし、児童一人一人が興味・関心をもった題材を優先し、一人一人が相手意識・目的意識を明確にもって解説する文章を書く展開にしてもよいでしょう。
パンフレットよりも文章の方が構成や展開を意識し、自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫する力の育成に適している面もあろうかと思います。児童の実態や育みたい資質・能力に応じ、学習形態や言語活動を決めたいですね。

〈対話的な学び〉

授業場面において友達と対話することは、自分の考えとの共通点や相違点に気付き、新たな見方や感じ方を得ることができ、自分の考えに広がりや深まりを生み出します。

例えば本単元では、導入時に示す絵や美術館の絵について、児童同士や学芸員さんと対話する場面を設けました。
その対話場面では、絵に対するさまざまな見方や感じ方と出会うでしょう。同じ絵を鑑賞しても着眼点は異なります。感じ方には違いが生まれます。自分とは異なる見方や感じ方をたくさん吸収し、自分の考え方を広げたり深めたりして、それを解説する文章に反映させてくれることを期待しています。

〈深い学び〉

本単元における深い学びの実現のために、過去の学びを生かす方法が考えられます。
どうすれば、読み手を意識した文章全体の構成や展開になるか。また、資料を用いて自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫できるか。児童は具体的なイメージがわかないかもしれません。
そこで、前単元を含め、これまで学んできた説明的文章の表現の工夫や論の展開を参考にすることも有効な方法でしょう。特に「『鳥獣戯画』を読む」で確認した、読み手を引き込むような書きぶりや絵の示し方などには、これまでほとんどの児童が出会ったことがなかったでしょう。

1時間目に書いた文章と最終的に書いた文章を読み比べる活動に取り組むことも深い学びにつながるでしょう。比較することにより、自分ができるようになったことを自覚することができ、友達からよりよい構成や表現を学ぶこともできると思われます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

解説する文章の題材となる絵を3枚用意しました。
どの絵のどこに着目して書くかは、児童個々によって異なります。
端末を利用し、自分が解説したい絵の写真を撮ります。その際、絵の示し方の工夫としてアップで撮ったりルーズで撮ったりし、解説する文章の資料として活用できるとよいですね。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: 解説する文章を書き、絵の魅力を伝えよう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 3枚の絵を見たり、説明を聞いたり、詳しく質問したりして、絵に関する情報を集める。
② 魅力を伝えたい絵を1枚選び、その絵についてさらに情報を集めたり、写真に撮ったりする。

・第二次(3時4時5時
③④ 集めた情報をもとに、論の構成や展開、表現を工夫しながら、絵を解説する文章の下書きを書く。
⑤ 推敲したのち、解説する文章を清書する。

・第三次(6時
⑥ 解説する文章を読み合い、感想を伝え合う。
※時間外 おうちの人に読んでもらい、感想を得る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の展開例 】

教科書では、グループでどのような日本文化を取り上げるかを決め、パンフレットの大まかな構想を練る時間となっています。その場合、その後児童が本やインターネットなどで調べたり、直接見たり聞いたりすることができる題材なのか、教師も一緒に検討しましょう。

この実践では、美術館の学芸員さんに来ていただくという設定にしましたが、実際に美術館に行くのもよいでしょう。事前に学芸員さんと打ち合わせをしておきます。数枚の絵について説明をしてもらい、適時児童の質問にも答えてもらいます。

この1時間だけでは、よく見たり、絵と情報を照らし合わせたりすることができず、絵に魅力を感じることが難しい児童もいるでしょう。絵は単元が終わるまで借用し、児童がいつでも見ることができ、さまざまな情報を得られる状態にしておけると理想的です。

【1時間目のワークシート例】

1時間目のワークシート例
▶︎ワークシート例のダウンロード

【2時間目の展開例 】

教科書では、自分たちで決めた日本文化の題材に関して調べる時間となっています。
この実践では、前時に説明を受けた3枚の絵から、1枚選びます。おうちの人にその絵の魅力を伝えたいという相手意識、目的意識をもって選ぶように促しましょう。

選んだ絵について、さらに情報を集めることが可能であれば、その時間を設けましょう。
「『鳥獣戯画』を読む」で学んだ、文章中における絵の提示の仕方を思い出し、端末を用いて細部や全体、特徴的な部分などを撮影しておくとよいでしょう。

【2時間目のワークシート例】

2時間目のワークシート例
▶︎ワークシート例のダウンロード

【3・4時間目の展開例 】

教科書では、調べたことをもとにパンフレットの構成と分担を決め、ページごとの割り付けを考えて下書きする活動が紹介されています。
本単元ではぐくみたい資質・能力に合致した時間です。
ここで意識したいのが、児童一人一人が最も伝えたいことを明確にすることです。
教科書には、「みりょくを伝えたい。」「歴史をしょうかいしたい。」「読み手が疑問に思いそうなことを説明したい。」など、最も伝えたいことの例が載っています。
「文章全体の構成や展開を考える力」「引用したり、図表やグラフなどを用いたりして、自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫する力」がはぐくまれるよう指導を積み重ねましょう。

この実践では、これまで集めた情報をもとに、実際に解説する文章を書く時間としています。
論の構成や展開、表現の工夫の参考にするために、前単元での学習を想起したり、学習の履歴が端末に残されているならば、それを参照したりする時間をとることも考えられます。その絵の特徴や魅力を伝えるために用いられていた評価に関する言葉は特に参考になりますし、語彙の拡充にもつながります。

下書きを書き終えたら推敲を行います。
「推敲」という言葉は、後に「大切にしたい言葉」という単元で触れますが、本単元で共通理解してもよいでしょう。
絵の魅力が分かりやすく伝わる構成になっているか、読み手を意識した表現となっているか、その絵の魅力に適した言葉が用いられているか、など推敲のポイントを明確にしておきましょう。
自分自身では気付かないポイントもあります。友達に読んでもらうことで、異なる視点から意見や感想をもらえます。また、友達の文章の構成や表現から新たな気付きを得て、自分の文章に生かそうとする児童もいるでしょう。

【見本文例】

文章の構成や展開、表現の工夫に着目できるように、教師が書いた見本文を提示する方法もあります。ここに載せた文章は、執筆者(田所)の自作です。絵も制作者の許可を得ているので、授業でお使いくださって構いません。
文章を執筆する際には、読者への問いかけ、言い切り、評価の言葉などを表現の工夫として使いました。また、絵の示し方が、「全体 →部分 →全体」となるよう、文章の構成を整えました。

見本文例の絵
見本文例−1
見本文例−2
見本文例−3
評価について

本時は、【思考・判断・表現】を評価対象とします。
筋道の通った文章となるように、文章全体の構成や展開について考えたり、自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫したり、撮影した写真を用いたりしている姿をBの状況とします。


【5時間目の展開例 】

教科書では、下書きを清書し、一人一人がパンフレットの分担紙面を完成させ、一冊にまとめる活動が設定されています。

この実践では、前時までの下書きをもとに、解説する文章を一人一人が清書して仕上げます。
写真の配置にも目を向けるとよいでしょう。端末を活用すれば、写真の大きさや配置などを自由に調整することができます。清書の段階でも、目的意識、相手意識を忘れないよう声かけを続けましょう。


【6時間目の展開例 】

教科書同様、感想を伝え合う時間となります。この実践では、解説する文章を読み合い、感想を伝え合います。

観点としては、構成や展開、言葉の使い方、絵に対する見方や感じ方、着眼点、知識や情報の用い方などがあるでしょう。
また、友達の文章はどんな点が工夫されていたか。友達の文章はこれまでに学習したことを生かしていたか。友達の文章を読み、今後自分が書く文章に取り入れたい点はあったか、というような視点を与えることも有効です。

最終的に、児童一人一人が自らの文章に対してよいところを見つけられるように指導・支援を行っていきましょう。

評価について

本時は、【主体的に学習に取り組む態度】を評価対象とします。
文章と絵や写真などを結び付けて必要な情報を読み取ったり、構成を工夫して書き表したりすることに粘り強く取り組み、解説する文章を書こうとしている姿をBの状況とします。

イラスト/横井智美

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