小1 国語科「てがみで しらせよう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「てがみで しらせよう」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・土屋晴裕
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元は、年間指導計画では12月に行う単元として位置付けられています。そのため、小学校に入学して初めて迎える正月を前に、1・2学期の頑張りや思い出を、祖父母や幼稚園・保育園時の友達、小学校に入学してからお世話になった方に伝えることが念頭にあると考えます。
「誰に伝えるか?」「何を伝えるか?」「どのように伝えるか?」など、題材や伝え方を自分で選択して、相手に分かりやすく伝えることが求められます。
発信者としての資質や能力の育成に主眼を置きつつも、その手紙を受け取った相手のことも思いながら伝え方が工夫できると、その手紙に、より思いがこもり、素敵な手紙に仕上がります。
そのため、書く活動を行いながら、振り返りの際には級友との交流の時間を積極的に設けて、「あなただったら、この手紙をもらって嬉しい?」「もっとどんなお手紙にしたらいいかな?」とアドバイスを求める活動も大切にして、1年生なりに自己調整できる児童の育成を目指します。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
単元名にある通り、手紙を書くという言語活動を通して、書く力の育成をねらいます。
手紙と一言で言っても、便箋に書く手紙もあれば、葉書に書く場合もあります。書きたいことの分量や、これまでの書く力の育ちに合わせて、児童が選べるようにしたいものです。
教科書に手本となる便箋と葉書の例があるので、それを参考にしたり、児童の思いを教師が聞いたりする中で、無理のない選択ができるよう促しましょう。
単元は6時間で構成します。実際に書くために使える時間は4時間です。宿題にはせず、学校の国語の授業の中で書き終えられるようにしたいと考えます。
下書きをしてから清書する、というのは受け取る方への配慮として、必要なことであると考えます。
下書き用紙と清書用紙で用紙は違っても、下書きから本番のつもりで文字を丁寧に書くよう促します。葉書の場合の絵についても、配置などを明確にするためにも、一度下書き用紙に描いておくとよいでしょう。下書きと清書で合わせて4時間ということになるため、個別指導が必要な単元になります。
一方で、この単元では、友達との交流も積極的に取り入れたいと考えます。
書き始める前に、「どんなことを伝えたらいいか」自分で決めることができる子もいれば、なかなか決められない子もいると思われます。
伝えたいと思っていることを交流しながら、「ぼくだったら、〇〇さんの、□□□□の話をお手紙で読みたいな。」などと助言し合うことで、皆がほぼ同じタイミングで書き始めることができるようにします。
また、書いている途中でも「ここは、こういう文でいいかな?」と友達に聞いたり、下書きも教師が見るだけでなく、友達同士で下書きを見合う活動も取り入れて、よりよい手紙の完成に向けて、皆で頑張る雰囲気をつくりたいですね。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 積極的に自己開示して、自分のことを伝える文章を書く
今回書く手紙には、自分のこと(頑張ったことや思い出等)を書きます。まずは、自分のことを振り返り、どんなことを書こうかと考えます。
1年生にとって、小学校入学からのすべての出来事を振り返って書くことを選択するのはなかなか容易なことではありません。教室内の掲示物を通して思い出したり、友達と話したりする中で想起したりと、題材の設定の部分でまずは自己開示の姿勢が大事になります。
また、手紙を書いている途中でも、自分の文章を隠して友達や先生に見せないようにしたりすることなく、最終的に受け取る方に素敵な手紙を届けるため、友達や教師に積極的に助言を求める姿が大事です。向上心の育成にもつながる単元だとも言えます。
また、自己開示が当たり前にできる学級経営という視点でも、学級全体で進んで自己開示する雰囲気を醸成したいものです。
〈対話的な学び〉 友達に助言することで、自分も高まる
「書くこと」の授業では、個人の活動が中心となることが多いですが、じつは、「書くこと」の学習だからこそ、たくさん友達と話したり教師と関わったりする時間を取りたいものです。
第1時で題材を決めるときは、まずは学級全体でどんなことが書けるかアイデアを発表し合います。その中で、自分の題材が明確になるばかりでなく、友達も題材が決まり、皆で一斉に書き出すことができるはずです。
また、書き始めた後も、黙って集中して書きたい子もいますが、書いている途中に友達に助言を求めたり、教師に助言を求めたり、全て書き終わってから推敲して書き直すのではなく、常に推敲しながら書いていくようにします。
書き上がった作品に対しても、交流の場を設けて、互いに頑張ったことや感想を伝え合うことで達成感を得られるようにします。
「書くこと」の学習において、「書けた!」「〇〇さんに、ここがいいね、ってほめてもらった。」という経験は、その先の「書くこと」の単元への意欲にも結び付く、とても大切な活動です。
〈深い学び〉 受け取る相手を常に意識して、手紙を書く
書き手が伝えたいことがあるから、手紙を書くわけです。
その意味では、書き手がどれだけ自分の伝えたいことをしっかり書けるか、という視点はとても大切なわけですが、今回の単元で書く手紙は、その手紙を受け取る相手をしっかり設定し、その相手に「ぼく、小学校でこんなことを頑張っているよ。」「小学校に入学して、こんな思い出ができたよ。」と自分のことをきっちり分かってもらうことが求められます。
そのためには、その文できちんと伝わるかどうか、もう少し文を付け加えたり、絵を描いたりする方がよいのではないかなど、自ら推敲する姿が大事です。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
今回の単元が1年生の12月期であることを考慮すると、ICTの活用を児童に求めるのは難しいと考えます。学年が上がれば、葉書作成ソフトをタブレット端末に入れて、葉書や手紙を作成することも可能になります。作ったものをメールに添付して送るという方法も考えられます。
1年生でも可能な方法として、自分が伝えたいことをより強く伝えるために写真を撮って葉書に貼り付けたり、手紙に添えたりすることが考えられます。
絵を描くことに苦手意識をもっている子にとってはよい方法であると考えます。これは記述しながら、必要に応じて行うため、第2時から第5時に活用します。
また、友達の書いた手紙のよいところを共有する場合に、その子の手紙(葉書)をカメラに写し、そのタブレット端末をテレビやスクリーンと連動させて拡大し、学級全体に共有することができます。
さらに、自分が書くことを決定する際、それまでの学習活動の中で動画や写真を撮っていた場合には、それを見直し、書くことを選ぶ際の参考にするという使い方も想定されます。
年間指導計画の中で、この「てがみで しらせよう」の単元に向けて準備をしていくことも、教師に求められる部分となります。
6. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: てがみで しらせよう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
①「だれに」「どんなことを」伝える手紙を書くか決定する。
・第二次(2時、3時、4時、5時)
② 便箋に書くか、葉書に書くかを選択し、実際に書き始める。
③ 下書きをして、自分の書きたいことがしっかり伝わるように書けているか確認する。
④ 心を込めて、清書を書き始める。
⑤ 清書を書き上げ、友達と交流する。
・第三次(6時)
⑥ 手紙を受け取った相手からの反応を通して、学習全体に対する自己評価をする。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美