小4体育「器械運動(鉄棒運動)」指導アイデア
執筆/新潟県公立小学校教諭・宮田泰人
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹、新潟県公立小学校校長・長谷川智
目次
授業づくりのポイント
器械運動は、技に挑戦し、その技ができる楽しさや喜びに触れることのできる運動です。「できた」「できない」がはっきりしているので、できたときの喜びは格別です。
鉄棒運動は場所の移動が少なく、友達の動きを観察することに適しているので、技の動きを視覚的に理解しやすい運動と言えます。
毎授業のはじめに、器械運動に必要な基礎感覚づくりの時間を設けながら、「できた!」を積み重ね、楽しみながら学習を進めていきましょう。また、技のポイントを理解しながらスモールステップで練習に取り組んだり、視点をもちつつ友達の動きを観察し、自己の動きに生かしたりしながら学習を進めていきましょう。
鉄棒運動では、授業前後の手洗いを徹底する、集合・整列時は子供同士の適切な間隔を確保するなど、地域の感染状況に応じて学習を実施しましょう。
単元計画(例)
※2~4時間目は、授業の前半と後半に分け、いろいろな技に挑戦できるようにします。5~6時間目は、発展的な課題を設定し、一連の流れで技ができるようにします。
楽しむ① 易しい場でいろいろな技に挑戦しよう!
すべての子供が楽しく運動できるように、三年生までに行ってきた技を取り入れて、回転感覚、逆さ感覚、腕支持感覚、スイング感覚、体の締め感覚など、基礎感覚づくりの運動から始めましょう。
基礎感覚をつくることは、その後の基本的な技や発展技に取り組むときに有効です。じゃんけん、回数の限定、班対抗など、ゲーム形式で楽しみながらさまざまな動きを行ったり、固定施設の遊具を使ったりしながら基礎感覚を定着できるようにしましょう。
次に、基本的な技の動きを経験できるようにしましょう。易しい場を用意して、2~3人の班で、動きのポイントを見合ったり、過度な接触に気を付けて補助し合ったりしながら運動を繰り返し行いましょう。
苦手意識の強い子供には、必要な体の動かし方や運動感覚が身に付くように、取り組む技と類似した運動をするようにするとよいでしょう。
基礎感覚づくり
〈ゲーム形式の例〉
前回りや自転車こぎなど、行う回数を決めて、終わったら次の人と交代するリレー形式のようにするのも盛り上がります。
ふとん干しじゃんけん

進め方
・1班4人、2班で行う。
・合図でふとん干しになり、じゃんけんを始める。
・10秒間で勝った回数の多い人の勝ち。
・合図で交代する。
・全員行い、勝った人が多い班の勝ち。同点の場合はじゃんけんで決める。
だんご虫リレー

進め方
・1班4人、2班で行う。
・はじめの2人が合図でだんご虫を始める。
・肘が伸び、鉄棒の位置まで頭が下がったり、足が付いたりしたら、次の子に交代する。
・最後の1人まで続け、長く続いた班の勝ち。

固定施設で基礎感覚づくりを楽しく行うこともできます。
基本的な技ができるための易しい場

恐怖心や不安感を取り除くための補助具を使うと、苦手な子でも取り組みやすいです。
補助逆上がり

かかえ込み前回りの補助

補助は、しっかりとやり方を伝えます。補助した子も動きについて考えることができます。
かかえ込み前回りの補助ポイント
・足を振っている途中で背中を持ち上げる。
・重かったら両側から持ち上げる。
・軽くなれば上手になっている証拠。
・補助は力を入れすぎない。
・上手な補助だと友達ができるようになると伝える。
楽しむ② できる技を増やしたり、組み合わせたりしてみよう!
単元後半では、単元前半で学習した技の発展的な課題を設定したり、発展技に取り組んだりするとよいでしょう。基本的な技の動きのポイントが、発展技の動きにどのようにつながるかを考えながら、チャレンジできるようにしましょう。
また、できる技を組み合わせて「上がり技-回転技-下り技」と一連の動きにもチャレンジしましょう。技をつないで美しく見せるにはどうしたらよいかなど、子供が進んで取り組むことによって技の完成度を高めていきましょう。一連の流れができない子供は、易しい技や自分が安心してできる技をしてもよいことにするとよいでしょう。
基本的な技の発展的な課題の例
例 膝掛け後転

発展的な課題
・足を振る回数を減らしても回れるかな?【少ない回数】
・1回回れたら下りずにもう一度できるかな?【連続1】
・連続して回れるかな?【連続2】
・足を変えても回れるかな?【逆の動き】
ほかの子供とまったく違う技をするよりも、上手な子には同じ系統の技で発展的な課題を提示し、ともに学べるようにしましょう。
基本的な技が発展的な技につながる例
例 かかえ込み後ろ回り→後方支持回転

動きのポイント
・足で勢いをつけてから始めているね。
・素早く膝をかかえて、鉄棒を挟んでいるね。
・ももの付け根が鉄棒から離れていないね。
発展技につながるポイントを視覚的に残したり、映像などで確認したりすると、子供がより意識することができ、効果的です。
今までに行ってきたできる技で組み合わせる例
例(1)跳び上がり→ふとん干し振り→前回り下り

これなら僕にもできた! 次は違う技を入れてやってみよう!
例(2)補助逆上がり→後方膝掛け回転→転向前下り

一連の技の発表会などをして、「できた」を実感させることが大切です。
イラスト/高橋正輝、横井智美
『教育技術 小三小四』2021年12/1月号より