自然事象との出会わせ方、夏休み明けの授業の導入の工夫! 【理科の壺】
楽しかった夏休みが終わろうとしています。夏休み明け、授業を楽しくスタートできるようにしたいですね。導入を工夫することで、子どもたちは、進んで学習に取り組めるようになります。導入の工夫だけで主体的に学び続けることは難しいですが、導入が楽しくなければ子どもたちは乗ってきません。夏休み明け、楽しく授業を始められるようなアイデアを紹介します! 優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・境 孝
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.3年生 「日なたと日かげ」の導入 「かげふみを午前と午後の二回やる!」
「日なたと日かげ」の学習の導入で「かげふみ」で遊ぶことがあります。遊びから学習の導入をすることは、子どもたちにとって楽しい活動になり意欲が高まります。さらに楽しく、問題を見いだす力も付けるために「かげふみ」を「2回」やってみましょう。午前と午後など、時間を空けて行うと影の変化が大きいので効果的です。さらに、日陰になる場所を「安全ゾーン」など名前を付けておくとよいです。子どもたちが考えた名前ならさらに良いです。
例えば午前中の早い時間にかげふみで遊んだ場合、午後は「安全ゾーン」の位置が変わっているはずです。それを見た子どもたちは「あれ、安全ゾーンの位置が変わっているぞ?」と疑問をもち、そこから「時間がたつと影の位置はどのように変わるのだろうか」といった問題を設定することができます。
自分の学校の校舎や木、建物の影の位置がどのように変わるのか事前に調べておくと午前→午後がよいのか、午後→午前がよいのか考えることができます。
かげふみを「2回」やってみることで、楽しみながら問題を見いだす力をつけられるようにしていきましょう。
2.4年生 「ものの温度と体積」の導入 「シャボン玉で遊ぶ!」
「ものの温度と体積」の導入では、「シャボン玉」で遊びます。それだけで楽しいですね。その後、「シャボン玉が膨らんだのはどうして?」と聞けば、「空気を入れたから」「空気が加わったから」と返ってくると思います。そこで、「先生は吹かなくても膨らませられるよ。」と言いながら、ペットボトルなどの口にシャボン液を付けてペットボトルを圧してへこませます。すると当然シャボン膜が膨らみます。それは、「へこんだ部分の空気が上に行ったから」と考えることができます。次に、瓶を用意して、「今度は圧さないで膨らませるよ。」と言いながら、瓶を握ります。すると、温められた空気が膨張してシャボン膜が膨らみます。その様子を観察した子どもたちからは、「やってみたい!」という声が上がると思います。瓶やペットボトルをいくつか用意しておけば子どもたちが試すこともできます。そこから、「空気は温められたらどうなるのだろうか。」といった問題を見いだすことができます。「上に行ったのかな。」「膨らんだのかな。」という予想をすることもでき、実際に体験したことを基に根拠のある予想をする力を付けることもできます。
3.5年生 「物の溶け方」の導入 「みそ汁」
物の溶け方の学習では、「みそ汁」を観察することから導入することで学校での学習と日常がつながります。みそとお湯を混ぜみそ汁を作り、ビーカーや透明なコップに入れます。しばらくそのまま放置しておくと、みそが下に沈みます。箸でかき混ぜてからみそ汁を飲むという経験をしたことがある子どもは多いので、その理由を聞いてみると良いです。おそらく「みそが下にたまっているから」と答えるはずです。それが、目の前で起こっているということです。そこで、「では、上の方は味がしないのかな。」と問いかけます。子どもたちは、「みそが下にあるから味はしない。」「みその原料には塩が入っているでしょ、塩味はするんじゃないかな。」と考え始めます。みそは下にたまっている様子を見ることができるが、食塩は見えない。食塩は水の中にあるのか、ないのか、あるとしたらどこにあるのか、疑問が膨らみます。話し合っても解決しないので、実際に食塩を水に溶かして確かめます。
問題解決を繰り返し、食塩の溶け方が分かってくると、みそとは溶け方が違うということが分かります。みそは、「混ざる」、食塩は「溶ける」です。この単元の本質です。
みそ汁を扱うことで日常と理科学習をつなげ、意欲を高めることができます。
4.6年生 「月と太陽」の導入 「半月をかいてみよう!」
月と太陽の導入では、「半月をかいてみよう」と投げかけ、紙を一枚渡します。かけたら黒板など、共有できるところに貼ります。すると、右側が光っている月、左側が光っている月、いろいろな形が出てきます。9月4日は上弦の月です。観察できれば実際に確かめることができます。しかし、ここで疑問が残ります。右半分が光っている上弦の月は観察できたけど、左半分が光った月も見たことがある。そこから、「左半分が光っている半月(下弦の月)は、いつ見ることができるのだろうか。」といった問題を見いだすことができます。モデル実験を行い、太陽との位置関係によって見え方が決まってくることを理解すれば、下弦の月は明け方に南の空に見えることが分かります。9月18日は下弦の月です。早起きするか、状況によっては学校でみんなで観察することができるかもしれません。
9月は十五夜もありますので、その話から導入することも子どもたちの意欲を高めることにつながりますね。
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
境 孝●さかい・たかし 神奈川県公立小学校教諭。同校研究主任。理科を中心に日々研究に励みながら、社会科の教材研究で宮城県、岐阜県、山形県、沖縄県など、全国を飛び回る。時間を見つけては、インテリア探し、洋服探しに出かける。最近は、美術館巡りをして絵画の鑑賞を通して観察力を鍛えている。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。