「改正少年法」とは?【知っておきたい教育用語】
2022年4月1日に「改正少年法」が施行されました。何がどう変わり、学校教育にどのような影響があるのかを把握しておきましょう。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
成人年齢の引き下げを受けて少年法が改正
「少年法等の一部を改正する法律」(改正少年法)が、2021年5月21日に成立し、2022年4月1日に施行されました。
同日に「民法の一部を改正する法律」も施行され、選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18、19歳の者は、責任ある主体として社会に参加することが期待される立場となりましたが、一方で成長途上の年齢でもあり、罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待されます。
そこで今回の少年法改正では、18、19歳の者も引き続き少年法の適用対象とし、17歳以下の少年とは異なる特例を定めることとなりました。
少年の健全な育成を図るための法律
そもそも少年法は、少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続きなどについて定める法律です。同法第1条では、その目的を「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」としています。
少年事件については、検察官が処分を決めるのではなく、すべての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。家庭裁判所は少年に対し、原則として刑罰(懲役、罰金など)ではなく、保護処分(少年院送致など)を課します。
18、19歳は「特定少年」と位置づけられる
今回の改正の重要なポイントの一つは、18、19歳の者が「特定少年」に位置づけられることです。特定少年については、改正少年法第5章(第62条~第68条)で、「特定少年の特例」が規定されています。
少年法では、少年を「20歳に満たない者」と定義しており、今回の改正においてもこの点に変更はありません。18、19歳の者は「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる取り扱いがなされます。
なお、特定少年には「ぐ犯」が適用されません。ぐ犯とは、性格または環境に照らして、将来的に罪を犯す、あるいは刑罰法令に触れる行為をする恐れがあるという意味で、少年法特有の制度です。
特定少年は実名報道が一部解禁される
また、特定少年については、実名報道が一部解禁されることも重要なポイントです。
少年法では、少年のときに犯した事件については、少年の更生に資するため、氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどによって本人を推知できるような記事・写真などの報道が禁止されています。しかし、今回の改正によって、特定少年のときに犯した事件について起訴された場合には、その対象外となり、実名報道が解禁されます(略式手続の場合を除く)。
「原則逆送対象事件」が拡大
さらに、特定少年については、「原則逆送対象事件」が拡大されました。
逆送とは、家庭裁判所が、保護処分ではなく、懲役、罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に、事件を検察官に送ることをいいます。原則逆送対象事件とは、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件のこと。改正前の少年法では、16歳以上の少年のときに故意で被害者を死亡させた事件にのみに適用されました。
この原則逆送対象事件に、特定少年のときに犯した死刑、無期または短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮にあたる罪の事件が追加されました。具体的には、現住建造物等放火罪、強盗罪、強制性交等罪、組織的詐欺罪などが該当します。
原則逆送対象事件の拡大は、成年年齢の引き下げによって責任ある立場となった特定少年が重大な犯罪に及んだ場合には、17歳以下の少年よりも広く刑事責任を負うべきと考えられたことによるものです。
少年法改正により、同じ高校3年生でも、18歳の生徒と17歳以下の生徒では少年法上での扱いが異なり、特定少年が起訴された場合には、実名報道がなされる可能性が出てきます。今後はこうしたことを踏まえて、学校教育や生徒指導を考える必要があるといえます。
▼参考資料
法務省(ウェブサイト)「少年法が変わります!」
衆議院(ウェブサイト)「少年法等の一部を改正する法律案」
NHK(ウェブサイト)「4月1日「改正少年法」施行 どう変わるのか 課題は」
田中博之編著『図解でマスター! 実践教育法規2022』(小学館)