小1 国語科「こんなことがあったよ」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「こんなことがあったよ」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:こんなことがあったよ
(光村図書・こくご 一上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/お茶の水女子大学附属小学校・廣瀬修也

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、「書き言葉」によって自分の体験や思っていること、考えていることを表現します。
読み手にわかりやすく伝えるには、文字としてどう書けばよいかを考え、実際に書く力を身に付けたい単元です。

学習指導要領解説国語編B書くこと(1)アには「経験したことや想像したことなどから書くことを見付け、必要な事柄を集めたり確かめたりして、伝えたいことを明確にすること。」と記されています。
この「伝えたいことを明確にすること」がポイントです。何を伝えたいのかをはっきりしないままだと、読み手に伝わりやすい表現にはなりません。必要に応じて、教師が児童の伝えようとしていることを汲み取り、声かけをするとよいでしょう。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元での言語活動は、自分が経験したことを書き言葉によって伝えることです。「書くことは考えることでもある。」という言葉があります。まず、書こうとすることによって児童の思考が促されます。

「これまでの経験で楽しかったことや印象に残っていることを発表し合う」「文章に書いて読み合うという学習課題を知る」「書き方を知る」「経験したことを知らせる文章を書く」「書いたものを読み合う」「学習を振り返る」、以上が本単元の流れとなります。

「書くこと」が主な言語活動となりますが、「話すこと・聞くこと」「読むこと」も関わってきます。書くためには、題材を思い浮かべる必要があります。「最近、学校やお家で楽しかったことはありますか?」と問うことで、すぐに想起できる児童もいるでしょう。一方で、なかなか思い出せない児童もいます。単元の導入において、お互いの話を共有することで、自分の経験を思い浮かべるきっかけにしたいと思います。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 出来事を伝える楽しさを知る

1年生にとっては「初めて」がたくさんあります。その初めて経験したときのワクワクした気持ちを伝える楽しさを、本単元で感じてほしいものです。4月当初から、登校してすぐに「今日学校に来るときに、すっごく大きな犬を見たよ」「昨日ね、家でピザを焼いたんだよ」というように、話し言葉で経験したことを伝えようとする姿が見られたかもしれません。話すことによって、自分の経験を伝えようとしているのです。それに加えて、文字によって自分のことを伝えることができることを体感し、伝わったときの喜びを感じることが、「主体的な学び」につながります。

〈対話的な学び〉 経験したことを伝え合う

「書くこと」における対話的な学びはどこにあるのでしょうか。
まず、書くことの前段階として、楽しかったことや印象に残ったことを伝え合います。伝えて終わりではなく、聞いたことに対して質問をする時間も設けましょう。
例えば、ある子が「昨日、家でぶんぶんごまを作りました」と発表したとします。そこで、聞いていた子たちが「どうやって作るのですか」「何を使って作るのですか」という質問をします。すると、ぶんぶんごまの作り方が学級全体に共有され、さっそく作り始める児童もいるかもしれません。経験を共有することで、その後の学びが広がっていくことに、「対話的な学び」があると言えるでしょう。

また、経験したことを描いた絵や文章を見合いながら話を広げるのもよいでしょう。経験したことを絵と文章でかき上げたらお互いに見合います。「もっと知りたいことはありますか」と声をかけ、児童同士で話ができる場を設定していきます。「対話的な学び」が生まれるための教師のしかけが重要となります。

〈深い学び〉 書き方のよさを共有する

児童一人一人が書いているとき、書いたことを共有するときに深い学びが生まれます。まず、何を書くかを選びます。決まったら、どのように書くかを考えます。「日付があった方がわかりやすいか」「誰と過ごしたのか書いた方がいいか」等を考え、分かりやすく伝えるための文章を考えます。

書いた内容を共有するとき、児童は様々なことを思ったり考えたりするでしょう。
「あ、私も同じ公園で遊んだことある」「この作品はどうやって作ったんだろう」「この遊び、僕もやってみたいな」といった内容についての考えをもつ児童がいるかもしれません。それに加えて、「最初に日付が書いてあると分かりやすいな」「花にたとえているのがいいな」といった書き方についても目を向けることで、言葉に対する見方を見直すことができます。言葉の見方・考え方を共有することも、国語における「深い学び」へとつながります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

カメラ機能を活用する

出来事を伝えるとき、実物を見せることでより伝わりやすくなります。1年生でも、スピーチをする祭に、実物を提示しながら話をするという事例が多くあります。1人1台の端末が導入されたことにより、児童自身が撮影した写真を提示することが可能になりました。自分の経験を紹介し合うときに、端末で撮った写真を見せながら話をする活動が考えられます。「校庭にアジサイが咲いていました。いろいろな色があってとてもきれいでした」という話と同時に、端末で写真も提示することで、聞いている周りの子たちはどんな様子なのかをイメージしやすくなります。

本単元では、絵と文章に表すことによって、自分の経験を伝え合います。可能であれば、児童が端末で撮影した写真をプリントアウトして、絵と一緒に掲示することも考えられます。もちろん、児童が描く絵のよさもありますので、絵と写真をバランスよく提示することも考えるとよいでしょう。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: みたこと、きいたこと、やったことをつたえよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学校や家庭で経験したことを発表し合う。発表が終わったら、きいてみたいことを質問する。

・第二次(2時3時4時
② p.96の絵日記を見て、書く内容をつかむ。
③ 学校であった出来事を、文章や絵でかく。〈 端末活用
④ 休みの日にあった出来事を、文章や絵をかく。〈 端末活用
※実態に応じて、端末で撮影した写真をプリントアウトしたものを貼ってもよい。

・第三次(5時6時
⑤ 書いたものを読み合い、感想を交流する。
⑥ 学習を振り返る。

全時間の板書例、教師の発問・児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

「伝えることの楽しさを知る」ことを、本単元における主体的な学びとしています。
1年生にとって、見るもの聞くものは初めてのものが多いでしょう。その「初めて」を経験したときに「誰かに言いたい!」と感じる子が多いものです。そして、実際に経験したことを話したときに、周りの友達が反応してくれることで、伝えることの楽しさを実感します。楽しさを実感すると、「また伝えたい」「今度はあのことを話したい」「友達はどんなことを話すのかな」と意欲的になることでしょう。これが「主体的な学び」のきっかけにもなると考えられます。最初は、教師が質問をすることで話が広がるようにするとよいでしょう。

また、友達の話を聞くことで「自分も話してみようかな」と思い始める児童もいます。ともに学んでいることで、伝えようとする意欲が喚起されることもあるのです。

今日は、学校やお家であった出来事を伝え合います。楽しかったことや、これをみんなに言いたいなという事はありますか。

この間の土曜日に、折り紙でお花を作りました。

折り紙で作ったのですね。作ってみて感じたことはありますか。

お花を作ったのは初めてだったから、お花の形にするのが難しかったです。

Aさんに、他に聞いてみたいことがある人はいますか。

だれに折り方を教わったのですか。

お母さんに教わりました。あと、本も見ました。

何色の折り紙を使ったのですか。

青とピンクと黄色です。


他にも、出来事を伝えたい人はいますか。

今日の中休みに、校庭で鬼ごっこをしました。

鬼ごっこをやって思ったことや感じたことはありますか。

鬼に1回もつかまらなかったから嬉しかったです。

では、Bくんに質問したい人はいますか。

どういう鬼ごっこをしたのですか。

氷鬼です。

何人で遊んだのですか。

10人で遊びました。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
「主体的な学び」のために

児童は未知なものに出会ったり、心が動く出来事があったりしたときに「誰かに伝えたい」と思います。この「伝えたい」という思いが、主体的な学びにつながります。
1年生は、日常生活の中でたくさんの経験をしています。出会ったことを自然と伝えようとする児童もいますが、中には自分からは伝えようとしない児童がいるかもしれません。あるいは、話すことでしか伝えられないと思っている児童もいるでしょう。そこで、教師から「出来事を伝える文章を書こう」と投げかけます。「主体的な学び」のためには、教師の関わりも必要なのです。

最初は、教科書の絵日記を参考にしながら書き方を知る時間を設けるとよいでしょう。題名・名前の書き方、文の始めは一文字空けること、また読点や句点を打つ場所等、書き方の指導もこの学習で行うことができます。「書き方を知る」ことも、児童の主体性を育むことに必要なことです。

イラスト/横井智美、小野寺裕美

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