単元づくりにおける「展開~終末」の構成とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#7】
この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。
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前回、ゴールの設定と導入の工夫についてお話をしてきましたので、今回は、展開~終末の構成について説明をしていきたいと思います。
目次
展開は音声言語で広げ、終末は文字言語で刻むという感じ
展開については、大きく単元で考えるよりも45分や50分の単位時間で説明をしたほうがイメージしやすいのではないかと思います。ちなみに、単位時間で導入・展開・終末という構造を考えたときに、先に説明をした単元における導入の工夫は単位時間でも同様にイメージしやすいと思います。子供たちが学習材・教材とどのように出合えば興味・関心をもち、問いをもって、自ら問題解決に向かうかということは、単位時間でも単元でもほぼ同様でしょう。
では、単位時間における展開と終末についてはどうするのかということですが、端的に言えば、展開は広がる感じで、終末は深まる感じです。展開場面でいろんな意見が出てきたり、考えが出されたりして、広がっていく対話があり、終末では個々がそれを見つめ直したり、ふり返ったりして収束し、深まっていくということです。
つまり、展開のところに対話があって広がり、終末のところでふり返って書いて深まるというイメージで、展開のところで多く使われるのが音声言語であり、終末のところで使われるのが文字言語です。
実際に社会科の授業で、ある事柄について子供たちが調べて分かった多様なことを発表していき、それらを分析した結果、新たに分かったことを各自でまとめてノートに書いていくということは、よく行われていると思います。
あるいは算数の授業で、複合図形の面積を求め、それぞれが考えた多様な方法を出し合った後、そこから、「既習の図形の形に切り分けて合わせるとできる」と、分かったことをまとめていくこともよく行われることだと思います。
ですから、乱暴に言えば、展開・終末にはアウトプットが用意されていて、さらに乱暴に言えば、展開は音声言語で広げ、終末は文字言語で刻むという感じだと私は説明しています。1単位時間で考えていけば、このように展開~終末のイメージがしやすくなると思います。
総合的な学習の時間は、小さな問題解決が連続して単元が構成されていく
単元の流れを考えていくときにイメージしやすいのは、私の専門である総合的な学習の時間の「探究のプロセス」ではないでしょうか。単元の中で、「課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現」というサイクルがクルクルと回っていく感じです。最初は、あることに興味をもって追究し、次にはもう少し異なることを追究し…というように、徐々に課題が更新されながら深まっていく感じです。最初の1サイクルが第一小単元となるひとまとまりで、次のサイクルのまとまりが第二小単元で、その次が第三というように、一個一個の小さな問題解決が連続して単元が構成されていくというイメージです。
そのような小さなひとまとまりの問題解決のパッケージ、つまり小単元が連続して構成されるというイメージがもてるとよいと思います。
このような小単元による構成のイメージは、その展開が確実にめざすゴールに向かっていくうえでも有効だと思います。例えば、総合的な学習の時間ならば何十時間という大きな単元があります。それをひとまとまりで考えると、壮大であるがゆえに、途中でめざすゴールに向かって学びが連続しているかどうかが曖昧になる場合もあります。
そうなったときに、小単元という小さなパッケージがあったほうが、先生にとっても子供たち自身にとっても、小刻みに自覚的に展開をすることができます。一つ一つの小単元の節目で、「およそこんなふうになれば、めざす方向に進んでいるな」という小さなゴールをイメージすれば、それぞれがチェックポイントになるわけです。
小単元が連続しながら深まっていくというイメージをもてれば、展開が構成しやすい
具体的に教科で考えてみると、算数や理科、あるいは総合的な学習の時間ならば、問題解決がはっきりしています。ですから、一つの課題を1時間、あるいは2、3時間程度で解決していくし、総合的な学習の時間の場合はもう少し長く、6、7時間といった時間をかけて、このサイクルを回し、それを繰り返していくわけです。
例えば体育なら、最初にボールゲームによる遊びのようなステージがあり、次のステージではそこで得た技術を使って、大人数でボールゲームを行い…というようにステージが上がっていき、それぞれにめあて1、めあて2といったものがあるようなイメージでもよいかもしれません。
教科の特性によって、小さなサイクルやステージにかかる時間は異なりますが、いずれにしても小単元が連続しながら深まっていくというイメージをもてれば、展開が構成しやすいと思います。
最初にゴールを明確に描き、導入、展開、終末でしっかり見とる
さて話を少し戻しますが、最初に展開のところに対話があって広がり、終末のところでふり返って書いて深まるというイメージについて説明をしました。この深まった子供の姿(あるいは文字言語で子供が刻んだもの)がはたして、最初に思い描いていたゴールの姿になっているかということが重要です。
もしその通りになっていれば、デザインが適正であったということでしょう。そうでなければ、導入で子供たちを間違った方向へミスリードしていたとか、展開でめざす方向に進めなかったなど、授業をふり返ってデザインし直し、次の授業改善に生かすとよいでしょう。どちらの場合も教師にとっては貴重な学びの機会になります。
だからこそ、最初にゴールを明確に描いたうえで、導入を工夫し、展開を構成し、終末で深めたものを、子供の姿としてしっかりと見とっていくことが必要なのです。
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この展開~終末と設定したゴールについては、学習評価ともつながるところですから、改めて詳しく説明をしていきたいと思います。
現行学習指導要領の「三つの資質・能力」とは?①【田村学流 単元づくり・授業づくり#8】はこちらです。
執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之