体育が苦手な子も楽しい授業【ぬまっち流】
運動神経のよい子供だけが活躍する体育の授業にならないように工夫するも、なかなか難しいのが実情かと思います。クラス全員が楽しく参加できる体育をめざす、沼田晶弘先生(ぬまっち先生)の授業のコツを教えてもらいました。「タッチバスケ」 「マット台上前転」など、体育が苦手な子でもどんどん取り組める指導法を紹介します。
目次
子供たちが得意分野で活躍できるシステムづくり
高学年になると、体育が苦手で嫌いな子も増えてきます。そこで、みんなが楽しめるためのシステムを考えます。
例えば、「タッチバスケ」。ゴールにボールを入れると得点が入るというルールはバスケットと同じですが、ドリブルなし。ボールを持って走ってOK。敵にタッチされたらストップというルール(仲間にパスはOK)。
このルールを考えた理由は、ドリブルをさせると、経験者ばかりが活躍するようになるから。でもボールを持って走ったり、タッチするだけならみんなができます。それでもゴールは難しいので、得点を決めたら、控えの子と選手交代するというルールをプラス。そうすると上手な子は交代したくないので、ゴール下までボールを持ち込み、ゴールは他の子に譲ります。上手な子はゲームメイクする役割に回り、上手ではない子が得点を決めて、笑顔で選手交代するのです。このように、できる子もできない子も、楽しめるようなシステムに変えるのです。
跳び箱は「恐怖」を取り除く工程を
跳び箱も実力差が出やすい種目。できない理由は「怖い」から。
そこで、台上前転は、まずマットを二つ折りにして、跳び箱と同じ高さまで積み重ねます。そして跳び箱の幅にテープを貼ってその上を前転させます。するとほとんどの子ができるのです。なぜなら横に体がそれてもマットが広くて落ちないのを知っているから。
次に、跳び箱の横にエアマットを置き、落ちても痛くないことをわからせてやらせると、やはり成功するのです。
跳び箱を跳ぶ場合も、苦手な子は跳び箱に手をついて腰を上げた後、ぶつかるのが怖くて顔が立ってしまい、お尻が落ちてしまいがちです。そこで、腰が上がった瞬間に、僕はお尻を前に押し込んであげます。するとそのままビューンって前に勢いで跳んでいきますよね。でも着地の場所にエアマットを置いてあるので、顔から落ちても怖くありませんし、大抵の子は跳び箱を越えると自然と着地できます。
まずは恐怖を取り除くシステムを考え、しっかり手をついて腰を上げて跳ぶ感覚を覚えさせるのが大切なのです。
ちなみに僕は体育時間に、子供たちにお手本を見せる指導はしません。僕がやると、子供たちが見て喜ぶだけ。でも上手な子がみんなの前でお手本を見せれば、周りの子が喜ぶだけでなく、上手な子は自信がつき、やる気も出ます。つまり一石二鳥の効果が出るからです。
「できない理由を考え、その課題を取り除くシステムを考えよう!」
取材・文/出浦文絵
沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学付属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
『小五教育技術』2018年10月号より