小四道徳科 「より遠くへ―谷 真海」自分との関わりで考える
コロナ時代であるがゆえに、特に道徳性を養う道徳科の授業が重要視されています。今回は、道徳教育の研究に取り組んでいる東京都にしみたか学園三鷹市立第二小学校、中学年の授業実践を詳しく紹介します。
目次
教材
教材名:「より遠くへ―谷 真海」(光村図書)
主題:目標に向かって〈A 希望と勇気、努力と強い意志〉
導入
本時のねらい
夢や目標に向かうことの大切さについて考えさせ、目標に向かってあきらめずに粘り強くやり抜く強い意志をもとうとする心情を育てる。
1 自分の目標を思い起こす
2 学習課題を知る
学習課題
目標に向かってがんばるために大切なことは何だろう。
子供たちのアンケート結果
指導の工夫
自分の目標に対するアンケート結果を導入で提示。一人ひとりが今の自分の目標を思い起こすことで、自分自身との関わりで学習課題を捉えられるようにします。義足になって谷さんがもう一度目標をもち、挑戦しようとした気持ちについて、自分の考えをワークシートに書いて可視化してから話し合わせます。ペアや全体で話し合うことを通し、多面的・多角的に考え、目標をもつこと、努力を積み重ねることのすばらしさに気付かせ、道徳的価値について深めたいと思います。
浅見先生のここがポイント
「前もって子供たちにアンケートをとることで、子供たちはより自分事として捉え、考えられる状況になっています。」
展開
3「教材」を通して本時の学習課題について話し合う
発問
足を手術した後の谷さんはどんな気持ちだろうか。
子供たちの発言
もう一生やりたいことができない。
もう走れない。
悲しい、さみしい。
中心発問
足を手術した後、もう一度スポーツを始めたのは、どんな思いからか。
子供たちの発言
生きていく中で一番楽しいことができないのはいや。
悲しいと思うと、もっと悲しい。
足がなくてもスポーツをしたい(やめられない)。
チャレンジ。
自分もできるかも。
浅見先生のここがポイント
「中学年の発達の段階に着目し、ただあきらめずに努力することではなく、どのような気持ちから目標が生まれ、努力しようとする思いがもてるようになるかというポイントを押さえられた学習になっています。」
発問
谷さんが手にした大切なものとは何だろう。
子供たちの発言
まだスポーツができるという自信がある。
やりたいことができる。楽しい生活がある。
あきらめない気持ち。
自分にもまだできる。
自分を信じる。心を信じる。
できると信じる。
浅見先生のここがポイント
「ワークシートに書く際に、導入のアンケートの内容に少し触れた千葉先生の声かけによって、子供たちがより自分事として考えられるようになりました。」
4 目標に向かってがんばるために大切にしたいことについて、 自分の考えを書き、交流する
子供たちのふり返りのワークシート
終末
5 説話を聞く
6 学習のふり返りをする
文部科学省教科調査官 浅見哲也先生からのアドバイス
発達の段階を踏まえた指導と教材吟味
千葉先生の授業では、子供たちの実態を踏まえながら教材を吟味し、特に導入や終末では、問題意識をもたせたり、身近な上級生の作文を紹介したりするなど、自分との関わりで考える工夫をされていました。また、書く活動、交流し発表するという活動を随所に取り入れ、一人ひとりの子供たちがしっかりと自分の考えをもって授業に参加していました。中学年の[希望と勇気、努力と強い意志]では、「自分でやろうと決めた目標に向かって」という内容項目に示されている言葉がキーワードとなります。現状維持ではなく、さらに前を向いて上をめざして生きていきたいという気持ちが夢や目標につながっていきます。このような原動力について考えられる授業にすることが大切です。
取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗
『教育技術 小三小四』2021年6/7月号より