小2算数「2けたのたし算」指導アイデア《2位数+2位数の繰り上がりのある計算》
執筆/東京都立川市立幸小学校教諭・小泉 友
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、東京都目黒区立八雲小学校校長・長谷 豊
単元の展開
第1時 35+12の計算のしかたを考える。
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第2時 32+4の計算のしかたを考える。
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第3時(本時)35+29の計算のしかたを考える。
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第4時 2位数+2位数(繰り上がりあり)の筆算のしかたをまとめる。
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第5時 2位数+1、2位数=2位数(繰り上がりあり、答えの一の位に空位あり、欠位あり)の筆算のしかたを理解し、その計算ができる。
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第6時 加法について、交換法則が成り立つことを理解する。
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第7時 学習内容の定着を確認するとともに、数学的な見方・考え方をふり返る。
本時のねらい
2位数の繰り上がりのある計算について、前時までの筆算で働かせた位ごとの数の見方を活用して、計算のしかたや筆算のしかたを考えることができる。
式などの数学的表現を用いて考えた過程をふり返り、そのよさに気付き、生活や学習に活用しようとする。
評価規準
35+29の計算のしかたを数の見方(位ごとの数)を活用して、操作や図、式を用いて考え、説明している。
ひろしさんは35円のドーナツと2□円のグミを買います。だい金はいくらになりますか。
※問題場面を提示する。
先生、グミが何円なのか分かりません。
先生もグミがいくらだったのか、忘れてしまったのです。でも、21円か29円か、どちらかだったんですよ。
21円だったら簡単です。前にやった筆算でやればいいです。
21円だったらすぐにできるのですね。
29円でもできそうだけど……。
では、21円だったら、どうすれば答えを求めることができますか。
35+21でできます。
では、35+21は筆算を使えばできると言っていましたね。ノートに計算してみましょう。
できました。

どうやって計算したのか、教えてください。
まず、一の位の5+1をして6。次に十の位の3+2をして56になります。
今の説明が、もう一度できる人はいますか。
※1人の発言で終わらず、解釈したことを伝え合ったり、発言を途中から発言させたりして、前時までのたし算の場面を確認する。
35+21は筆算でできましたね。では、29円のときはできますか。
できそうです。式は35+29になります。
でも、一の位を足すと10を超えてしまうよ。
35+29は35+21よりも難しいところがあるのですね。答えを求めることはできませんか。
35+29の計算の答えの求め方を考えよう。
見通し
どうすれば答えを求めることができそうですか。
筆算みたいに一の位から足せば、答えを求めることができそうです。
一の位と十の位を分けて計算すればいいです。
筆算でもできます。
自力解決の様子
A つまずいている子
筆算では書いているが、繰り上がりを忘れている。

B 素朴に解いている子
筆算で書いているが、一の位と十の位の部分和を書き、非形式の筆算の形で解いている。

C ねらい通り解いている子
筆算形式で書き、その説明も書いている。

5+9=14
30+20=50
14+50=64
答えは64になる
自力解決の様子から、子供たちの状況を評価します。そして、子供たちの学習の状況によって個別指導を行ったり、一度全員の手を止めさせて、「ヒントを言える人はいるかな」と困っている子供へのヒントを出させたりするなどして、全員が解決に向けて動き出せるよう指導します。
今、答えが出せずに困っている人がいますね。その子たちにいいヒントはありませんか。
十の位は十の位、一の位は一の位で足せばいいです。
学び合いの計画
学び合いのねらいは、繰り上がりのたし算の場面において、前時までの筆算形式での数の見方である、「位ごとの数を足す」というアイディアの基、一の位を足すと10を超えてしまう繰り上がりのあるたし算の場面でも、位ごとの数の和を考えれば解決できることに気付かせることです。
そして、素朴に、十の位は十の位、一の位は一の位どうしでたし算をして、その和を求めている姿と、筆算形式で解決している子供とを比較・関連付けることで、筆算形式へと高めていくことができるとよいでしょう。
ノート例
例1
ノートに記述させる際には、ただ計算を書かせるのではなく、自分がどうしてその答えを求めることができたのか、その根拠や説明も書かせるようにします。特に例1の子供については、こうした視点を与え、少しずつノートにも自分の考えを書く習慣を身に付けていくようにします。
また、友達の考えを書くときにも、「十の位と一の位を分けて筆算をしている」というように、その解決の糸口となるポイントを板書し、それをノートにも書くように促すことができるとよいでしょう。
例2
最初の35+21の場面では、繰り上がりのない既習の計算なので、ただ機械的に筆算をしても正答することが予想されます。これが35+29の場面になったときに、ただ2つの数を足し、繰り上がりを処理せずに間違えると54と答えてしまいます。
そこで、友達の考えを書く際に、この筆算と部分和の計算や、一の位と十の位を分けて計算することで、繰り上がりができることなどをノートに書くように促します。そうすることで、評価問題の場面において、友達の考えを生かして、26+48の計算に取り組むことができるようにしましょう。
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
Cさんは、ノートにこのような式を書いていました。

あ、私と同じです。
僕とは違うよ。
Cさんがどのように答えを求めたのか分かりますか。
一の位をまず計算して、5+9=14。そして、十の位を足して30+20=50。その14と50を合わせて、答えを求めたんだと思います。
違うやり方をした人はいますか。
Bさん
私は筆算をしました。

※式のみ板書する。
筆算をしたと言っていますが、どういうことか分かりますか。
さっきのCさんのやりかたと似ているよ。
筆算と横に書いた式だから、違うんじゃないですか。
だって、ここの14は5+9でしょ。
分かった。それでここは30+20だ。
Cさんと同じで、5+9と30+20をしているね。
なるほど。CさんとBさんは、5+9と30+20をしているんですね。

※板書に部分和を付け足す。
35+29は難しいと思っていたけど、答えを求めることができましたね。どのように考えると、答えを求めることができるのですか。
一の位と十の位を分けて計算すればいいです。
筆算でもできました。
全体発表後半で、「一の位と十の位に分けて計算する」という言葉を板書し、価値付けます。このように、見方・考え方に当たるものを吹き出しなどで板書に残したことを基に、子供の言葉でまとめをつくっていくとよいでしょう。さらに、次に示す評価問題に取り組むことで、次時の筆算のしかたとしてまとめることにつなげていくことができます。
評価問題
どうやって、答えを求めたらよいでしょうか。

十の位と一の位を分けて足せば答えを求めることができるんじゃないかな。
僕は、筆算の形で書いてみよう。
子供に期待する解答の具体例

感想
- 一の位どうしを足して10を超えてしまうときも、前までの筆算で勉強したことと同じように、一の位どうし、十の位どうしを足せば、答えを求めることができることが分かりました。
- Cさんの横の式で書いている考え方とBさんの筆算で考えていた考え方に同じところがあることに気付きました。
イラスト/横井智美
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