次年度の成長を見据えた〈低学年〉三学期のあるある学級トラブル対応法
イライラが態度に出る、暴言や暴力、教師のいないところでの嫌がらせ…など、一・二年生の三学期に表れがちな学級トラブルの対応法をていねいに解説します。
執筆/北海道公立小学校教諭・鹿野哲子
目次
トラブルが完全になくなる日は訪れない
三学期は、年間でもっとも短い学期ですが、1年間の指導の成果が花開く時期であり、次年度に向けてさらなる成長を後押しする時期でもあるでしょう。私たち教師は、これまでの関わりやさまざまな取り組みを振り返りながら、個や集団のよりよい変容に期待をかける時期でもあります。
しかし、これまでの努力の先に「トラブルが減った」という現象を見とることができたとしても、「トラブルが完全になくなる」日は訪れない、ということを肝に銘じる必要があります。つまり、子供たちの成長を過小評価も過大評価もしない、ということが重要です。
三学期であろうとも、どんなに成長を遂げた学級であろうとも、集団生活にトラブルはつきものです。危機管理能力に優れている教師のみが、小さなサインを見逃さず、機敏に動き、最悪を想定しながら痛みを最小限に抑え、トラブルを次の成長へとつなげることができるのです。
次項から、具体的なトラブルを例に説明していきます。
ネガティブ発言が多い
もう次の学年が見えてきているというのに「めんどくさい」「できない」「どうせ私(僕)なんか……」といった後ろ向きな言動がなくならない子がいます。
①寄り添いながらも、突き放す
本人の思いを受け止め、気持ちを代弁するなどのていねいな対応が大切な一方で、いじける行為の背景には「やさしくしてもらいたい」「先生を独り占めしたい」という感情がいまだに隠れている場合があります。
本人の意欲の低下を受け止めつつ、授業中であるならば、何事もなかったかのように振る舞い、よい意味でスルーすることも重要です。「いじけてもかまってはもらえない」という経験を積み重ねていきます。
②スペシャルタイムをつくる
授業中は突き放す態度でスルーしても、休み時間には二人きりで手をつないで校内をお散歩したり、図書室で絵本を一緒に読んだりするなど、教師と「特別な時間」を共有することで、気持ちが切り替わるように努めます。

③徹底してほめる
ネガティブな言動の裏側には、自己肯定感の欠如や大きな不安感が存在することを念頭に指導にあたります。
○○さんは、先生の目の奥を見て、話を聞いているね。うれしいなぁ
今日の音読は声もいいけれど、顔の角度がすばらしい
などのように、具体的にほめます。「この先生は見てくれている」という喜びや安心感で心を満たします。
家庭との連携を密にする
いじけたり泣いたりするなどで授業時間内の学習に取り組むことができない事態が続く場合は、家庭への連絡を行います。
教室での行動の事実や指導の経過を、本人のがんばりや長所とセットにして伝えます。「ご家庭では、こうしてください」との依頼ではなく、「現在、このように関わっています」というように、担任としての指導の方針をていねいに伝えることで、保護者の理解と協力を得られるように努めます。