小3道徳「なかよしだから」指導アイデア
執筆/千葉県公立小学校主幹教諭・小泉洋彦
監修/千葉県公立中学校校長・大舘昭彦、文部科学省教科調査官・浅見哲也
使用教材:なかよしだから(東京書籍)
目次
授業を展開するにあたり
道徳科における「深い学び」とは何か。全国各地の先生方が、今でも研究会などで議論していることの一つです。その手がかりが、平成29年告示の「小学校学習指導要領解説 総則編」第3章第3節に、次のように記されています。
『習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点』
文部科学省「小学校学習指導要領解説 総則編」より(太字は筆者)
では、「道徳科の特質」についてはどう捉えればよいのでしょうか。同じく平成29年告示の「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」第4章第2節では、次のように示されています。
「児童一人一人が道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深めることで道徳性を養うという特質を十分考慮し、……」
文部科学省「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」より
教科化された頃、評価についての不安から、道徳的価値の理解のみに留まるような授業が散見されてはいなかったでしょうか。「学習を通して学んだこと、考えたことのみを書く活動」で終わる授業です。
今回は、自己を見つめ、生き方についての考えを深めるという側面を大切にした「深い学び」を実現することを意識しました。
展開の概略
教材「なかよしだから」
本教材は、主人公「ぼく」が登校後に、宿題をするのを忘れたことに気付くことから始まります。困った「ぼく」は、仲よしで、前日にカーブの投げ方を教えてあげた実に、宿題の答えを教えくれるよう頼みます。
ところが、実から「なかよしだから、なお教えられないよ」と断られます。怒った「ぼく」はなんとか宿題を間に合わせましたが、納得していない様子です。放課後に実が声をかけてきても、知らないふりをしました。
しかし、家に帰って「ぼく」は実から言われた言葉を思い出し、考え込んでしまいました。
出典:「新しいどうとく3」(東京書籍)
1 「よい友達」について考える
①「よい友達」とは、どんな友達だと思いますか。
2 教材を読み、話し合う
①宿題を忘れたことに気が付いたとき、「ぼく」はなぜ、実に教えてもらえばいいと思ったのでしょうか。
②実に「なかよしだから、なお教えられないよ」と言われ、「ぼく」はどんなことを考えたでしょうか。
③「ぼく」にとって、実はどんな友達でしょうか。
④ここまでみんなで話し合ってきて、「よい友達」とは、どんな友達だと考えていますか。(価値理解の発問)
3 自己を見つめ、自己の生き方を考える
①授業中に学習したことを基に、よい友達、よい友達関係をつくっていくために一番大切だと思うことについて、これまでの自分をふり返ってみましょう。
4 教師の説話を聞く
▼ワークシート
ワークシートについて
①授業の最初に子供それぞれの友達観に目を向けさせます。口頭で答えさせるだけでなく、授業を通しての変容に児童自身が気付けるようにあえて書かせます。
②友達について多面的・多角的に考えられる発問です。
③価値理解の発問「ここまでみんなで話し合ってきて、『よい友達』とはどんな友達だと考えますか」の後に出された意見のうち、自分が一番大切にしたいと思うことについて、これまでの自分をふり返らせます。その際、ワークシートの①に書いた内容と授業で学習したことを比較しながら考えるよう伝えます。