子供たちの「対話する力」を伸ばす方法と手立て
「対話的な活動」においては、子供たちが知識だけを伝え合うのではなく、自分の考えや気持ちを意欲的に伝えることができるようにすることが大切です。そのためには、日常的な発言訓練で個々の表現スキルを鍛えることや考えを明確にしたり互いに共有できるようにしたりする教師の手立てが必要です。
執筆/福岡県公立小学校教諭・藤井龍一
目次
対話活動に向けて発言スキルを磨こう!
日常的な言語活動の中で、対話活動に必要な発言スキルを子供一人一人に身につけましょう。
「朝の挨拶」で、言語スキルを高める!
教室での「朝の挨拶」は、相手意識や場面意識を身につけるのによいチャンスです。
挨拶する対象を友達、先生と変えたり、ペアでの挨拶や全体での挨拶など、場面を変えることで、相手や場面に応じた発言ができるようになります。
対話活動のための形態を工夫しよう!
交流の形態を変えることで、たくさんの子供たちの発言の機会を保障することができます。また、対話に抵抗がある子供も段階的に話すことや聞くことに慣れることができるようにします。
ペア対話(一対一での対話活動)
授業での様々な場面で、このペア対話を仕組むことができます。このペア対話を仕組むことで、話すことに慣れさせたり、自分の考えに自信を持たせたりでき、対話活動に積極的に参加させる基礎を育てる場となります。様々な授業場面で取り入れていくことが大切です。
ペア対話での約束
- 相手を見て話す。
- 聞き手は返事やうなずきをする。
- 応答の話型で話す順番に話す。
- 時間いっぱい話す。
答え合わせをするだけのような対話にならない配慮が大切です。読書の感動や行事の感想など知識のみにならない対話をしましょう。
グループ交流(3、4人での対話活動)
ペア対話の次は、学習班などグループでの対話活動で学びを深めていきましょう。
ペア対話より聞き手が増えますので、声の大きさや姿勢などの指導が必要になります。
グループ交流での約束
- 順番に聞き手を見て話す。
- 返事やうなずきをする。
- 応答は1つずつする。
- 質問は順番にする。
- 時間いっぱい話す。
全体交流(学級全体で対話活動)
最後は、学級全体での話し合いを行いましょう。質問に対しては、グループで答えるなどの工夫をすることで発言に抵抗のある子でも発表できるようになります。
全体交流での約束
- みんなを見て話す。
- 全体に聞こえる声で話す。
- 返事やうなずきをする。
- 手を挙げて話す。
- 応答は1つずつする。
ペア → グループ → 全体と対象を段階的に増やしていくことで、交流活動に苦手意識を持つ子も場の雰囲気に慣れ、発言への抵抗が少なくなり、対話活動に参加できるようになります。
対話活動をより活発にする手だて
対話活動でホワイトボードや思考ツール等を活用し、子供たちによる活発な対話活動を仕組んでいきましょう。
KJ法を用いた交流活動
自分の意見と同じ人、違う人など、考えの立場を明らかにして話し合う方法として、KJ法を用いた話合いがあります。「つけ加え」や「反対」など、立場がはっきりすることで対話活動が活発に行われます。
付箋紙、画用紙、サインペンさえあればできるのも、この活動のよさです。
KJ法の流れ
- 話題に対する自分の考えを付箋紙に書く。
- 自分の考えを紹介しながら台紙に付箋紙を貼る。
- 次の人が続き、付箋紙を貼る。
- 同じ意見の付箋紙を近くに貼りサインペンで分類する。
ミニホワイトボードを用いた交流活動
まとめた自分の考えを覚えられないために、発表になるとノートから目を離せない子がいませんか? そんなときは、ミニホワイトボード(以下、ボード)にまとめさせることで、よりよい姿勢で発表ができます。
1人1個ずつボードとボードマーカーを準備して、ペア交流、グループ交流、全体交流に活用することができます。
学習の手順
- 自分の考えをボードにまとめさせます。その際なるべく簡単にまとめます。
- それぞれが書いたボードを見せ合いながら、交流を始めます。それぞれのボードを比べることで、考えの相違が視覚的にわかりやすくなり、交流が活性化します。
- 全体交流では、ホワイトボードを黒板などに提示して使います。ボードの言葉を指示しながら交流することで、内容がより伝わります。
ボードを使うことで、自己の考えをまとめる、互いの考えを比較する、自他の考えを黒板に残すなど、音声言語では不十分な場面を補うのに、効果があります。
思考ツールを用いた交流活動
出された意見を整理、分類することで、「賛成」「反対」「つけ加え」など意見がつながります。
たくさんの思考ツールが研究され、いろいろな場面で紹介されています。ここでは、小学校の授業場面で使いやすいツールを紹介します。
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2020年10月号より