小3道徳「言葉で伝えよう-暴力を許さないクラスづくり」指導アイデア

大学教員

佐藤幸司

執筆/山形県公立小学校校長・佐藤幸司

暴力を排除して仲のよいクラスをつくる

新年度、どんなクラスをめざしてスタートしましたか。言葉の表現に多少の違いはあれ、担任は、子供たちどうしが仲よく生活できるクラスをつくりたいと思っているはずです。

仲のよいクラスを壊してしまうのが、暴力行為です。この時期の子供たちは、三年生に進級したとはいえ、まだ低学年児童のような幼さが残っています。友達とトラブルがあると、言葉で伝える前に、「パンチした」「キックした」という子も少なくないでしょう。

乱暴なのは、「個性」ではなく、ただの「野性」です。問題行動があれば、担任は、その場で毅然とした態度で指導しなければなりません。

けれども、問題が起きてから指導するのは、道徳授業ではありません(生徒指導上の問題です)。困った問題が起きないように事前に指導するのが、道徳授業の役目の一つです。

4月にこの教材を使って授業を実施して、暴力ではなく言葉によって自分を主張するカッコよさを伝えましょう。

小3道徳 言葉で伝えよう|力を許さないクラスづくりを!

資料 平成29 年度 暴力行為の発生状況
平成29年度 小・中・高等学校における、暴力行為の発生件数……63,325件
・小学校 28,315 件(前年度 22,841 件)↑5,474
・中学校 28,702 件(前年度 30,148 件)↓1,446
・高等学校 6,308 件(前年度 6,455 件)↓147
・全体 63,325 件(前年度 59,444 件)↑3,881

平成29 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
平成30 年10 月25 日(木)文部科学省初等中等教育局児童生徒課

教材1

教材1
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教材2

資料2
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実際の授業展開

タイトル
言葉で伝えよう

指導目標 
暴力をふるっとしまう理由を考え、怒りの感情をもったときにそれをどう表現すべきなのかを判断できる力を育てる。

内容項目 
A 善悪の判断

準備するもの 
・教材1( 「ぼう力」は、伏せて提示)
・教材2(3人の肖像画など 提示用)

指導の概略(板書計画例)

指導の概略(板書計画例)
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ここがアクティブ!授業展開の補足説明

この授業の構成は、前半と後半の大きく2つに分けられます。前半で使用するのは文部科学省発表の暴力行為数についての統計資料、後半で使用するのは歴史上の人物の言葉(格言)です。

平成29年度、小中高生の暴力行為が6万件以上あったという事実があります。この事実に、ハンムラビ王とリットンの言葉を結び付けて考えさせます。ペン(言葉)で戦えば、暴力行為は起こらなかったはずです。

どんなに感情が高ぶったとしても、暴力は許されません。それは、学校生活でも大人の社会でも同じことです。揉めごとが起きたときには、暴力ではなく言葉によって解決していくことの大切さを、「目には目を歯には歯を」と、「ペンは剣よりも強し」の二つの言葉を対比して考えさせることで伝えていきます。

さらに「終末」では、ジェファーソンの「腹が立ったら10まで数えよう」という言葉を知らせ、感情が激化したときは、少しの時間をおくと気持ちが落ち着くことを教えます。

4月の道徳授業は、おそらく3時間で計画されているのではないでしょうか。

第1時は教科書を使った「授業開き」的な学習になると思われます。

第2時または第3時の授業では、一年間の学級づくりを意識して、この教材を使った授業をぜひ実施してみてください。

授業をするうえでの注意点・ポイント解説

ハンムラビ王の言葉に対しては、ほとんどの子が批判的な意見を述べると予想されます。けれども、少数ながら「ハンムラビ王の考えにも、いいところはある」と答える子も出てきます。

その場合は、「確かにやられて黙っていると、またやられるかもしれません。では、それは誰が悪いのですか」と聞いてください。先に暴力をふるったほうが悪いのです。

暴力に暴力で対抗しても、何も解決はしません。けれども、子供どうしの関係(特に男子)においては、ときには実力行使も辞さないという強い心構えも必要です(実際の生活場面では、先に手を出したほうが先に謝る、というぶれない方針を決めておきます)。

暴力は許されない。

これが原則です。言葉で自分の感情をうまく表せない子供が増えています。だからこそ、道徳授業と日常の生徒指導とを結びつけた指導が必要であり、効果的なのです。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

「なんでも話せる雰囲気づくり」

道徳が特別の教科となって、授業ではどのような変化が見られるでしょうか。

「対話的な学び」や「多面的・多角的に考える」という言葉が注目され、授業ではペアやグループなどの話合いの場を設定することが多くなってきたように思います。

道徳科では、これまで以上に物事を一面的に捉えるのではなく、さまざまな視点から物事を理解するために、互いに考えを伝え合う主体的な学びが求められているのは確かなことです。だからと言って、ペアやグループの場を設定すれば子供たちが話せるようになるかと言えば、そんなたやすいものではありません。

大切なのは4月から始まった道徳科の授業で、誰にでも話せる雰囲気づくりをしていくことです。授業の導入で簡単な発問をし、隣の子と伝え合わさせたり、身近な発問をして座席の一列全員に発表させたりするなどを意図的に行っていくと、だんだん雰囲気が和らいでいきます。

また、友達の考えをしっかり聞くという指導も不可欠です。自分とは違う考えを否定せずに受け止める。教師も子供の発言を目を反らさずに聞く。道徳科の授業は発言がすべてではありませんが、一人の発言を、頷いたり「なるほど」とつぶやいたりしながら聞いてくれる教師や友達がいれば、自ずと子供たちは発言するようになります。

そんな雰囲気づくりを心がけて、年度当初の道徳科の授業を行ってみてください。

イラスト/うえだ未知

『教育技術 小三小四』2019年4月号より

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