学校専門の整理収納アドバイザーが指南「教師のための年度末整理整頓術」

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文部科学省が推進する「学校における働き方改革」により、2020年度からは、公立学校でも残業規制が始まり、時間外勤務( 残業)の上限が原則月45時間までとなりました。勤務時間が限られてくると、必然的に効率的に仕事をしなくてはなりません。効率よく仕事をするうえで、仕事環境を整った状態に保つことは非常に大切です。今回は、元教師で現在学校専門の整理収納アドバイザーとして活躍する丸山瞬さんが、年度末の整理整頓術をアドバイス。春休みを利用してデスク周りやパソコンのデータをスッキリ整理し、新年度からさらなる仕事効率化を図りましょう。

教師のための年度末整理整頓術

デスク周りモノを減らすテクニック

デスク周りを整理するときに、問題になるのが、「物の量」です。小学校ではたくさんの資料が配付され、教材も文具も日々増えていきます。だからこそ年度末には1年で溜まってしまった「物の量」を減らしてから、必要なものだけを整理することが重要です。ここでは、デスク周りのものを減らすための五つの手順を紹介します。

Step1

まず最初に、文具やファイルなど、デスクの中の物をすべて机の上に出します。引き出しの中に一つも残っていないようにすべてのものを机の上に並べます。

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Step2

机の上に出したものの中から、壊れている物や使っていない物、いらないものを選び、捨てます。

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Step3

残ったものを、ファイル、紙の資料、文具など、グループ分けして固めておきます。

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Step4

グループ分けしたものをさらに仕分けします。例えば「鉛筆が10本もある」「使っていないファイルが2冊もある」など、必要ないものや、多すぎるものを減らしていきます。

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Step5

最後に減った物を、机の中に戻します。

「机の中のものをすべて出す」
Step1で机の中のものを残らずすべて机の上に出すのがポイント。引き出しを一つずつ整理しようとすると、他の引き出しにどれくらいのものがあるのか分からず、減らそうという動機付けになりません。机の中のものすべてを見渡し、「こんなにたくさんのものがあったのか」と気付くことが重要なので、必ず「全部」出して整理をしましょう。

デスク周りの整理術

気が付くと机の中の物が増えて、取り出すのに一苦労……ということもあるのでは? デスク周りは、使用頻度別で収納するのがポイント。それぞれの引き出しに何をどのようにしまうと使いやすくなるのかアドバイスします。

デスク周りの整理術

左1段目 よく使う資料類

よく使う物は、自分の手元に近いところに置くのが原則。左の薄い引き出しには、今週使う資料や、遠足のしおり、校務分掌やスケジュールなど、すぐ使う物を入れておくと、さっと確認することができます。

右1段目 文具や個人情報を含むもの

右側の一番上の引き出しもよく使う物を入れます。鍵が閉まるので、個人情報などを含む、児童関係の物を入れておくとよいでしょう。文房具やハンコなどもこの場所が便利ですが、ハンコの量が増えてくるような場合は、学年の棚を活用することも検討しましょう。

2段目 空きスペース

2段目はフリースペースとして活用する人も多く、お菓子など、物が溜まりがち。しかしここはあえて何も入れずに空けておくと便利。机の中に空きスペースがあれば、とりあえず少しの間だけ、机の上の物をどこかに移したいときなど、「一時避難場所」として活用できます。また、比較的深さもあり、A4サイズのカゴがぴったり収まるので、カゴに入れて教室から持ってきた連絡帳やテストなどを、カゴに入れたまましまうこともできます。

3段目 教科書や資料類

右下の一番大きい引き出しは、時々見る書類や教科書、プリント類、書籍類などを入れるとよいでしょう。

足元のBOX、棚など 使用頻度の低いもの

やや使いづらいスペースなので、体育館で使う体育館シューズなど、週に1度使うものや年に1回使うような物など、使用頻度が低い物を入れておくとよいでしょう。

「学年の棚も有効活用する」
国語や算数の指導書や解説書などは、常に手元に置いておかなくてもよいので、学年の棚を利用するとよいでしょう。さらにテストや理科・家庭科などの子供が使う教材なども学年の棚へ。ただし、ここも物が溜まりやすいので、時々整理整頓しましょう。また、個人で買った参考書や教育関連の本、教材なども、学年の棚に置いて共有するとよいでしょう。自分が買った本や自分が使った教材などは手放せないという人もいますが、学年の棚に入れて他の先生と共有すると、自分の机に新たなスペースができて整理もしやすくなります。ぜひ「シェア」という視点をもってみてください。

パソコンのデータ整理術

学年末にはパソコンのデータも整理したいものです。個人で使う資料を管理する七つのルールと、学校全体で使う資料データの整理術を紹介します。

ルール1 フォルダ名に2~3桁の数字を付ける

フォルダ名の頭に001_校務分掌や、002_写真など、2 ~ 3桁の数字を付けます。この数字があると、表示したときにその数字の順に並び替えてくれるので便利。自分が一番上に表示させたい物は、001に分類しておくとよいでしょう。

ルール2 階層を深くしない

ファイルの階層は、4クリックで目的の書類にたどり着くようにつくります。これ以上増やすと探すのが大変なので、階層はなるべく3階層にして、3つのフォルダをたどると欲しいファイルが見つかるように階層を工夫します。

ルール3 フォルダ名を重複させない

「写真」と「行事写真」というフォルダをつくってしまうと、写真の中に行事写真を入れてしまうなど混乱して、後から探す手間が増えてしまいます。「写真」というフォルダをつくったら、その中は「2020年学芸会」「2020年運動会」など細かくふり分けると探しやすいでしょう。

ルール4 「_Oldフォルダ」をつくる

「_Oldフォルダ」をつくり、前年度のデータなど、古いデータはすべてこのフォルダに入れるようにします。そうすると前年度のものはいったん整理でき、前年度をふり返るときはOldの中から探せばOK。

_Oldフォルダ

ルール5 「とりあえずフォルダ」をつくる

「とりあえずフォルダ」をつくり、後から分類したい書類やデータは、とりあえず、このフォルダに入れておきます。「とりあえずフォルダ」は後日整理分類が必要ですが、つくっておくとデスクトップの上がきれいになります。

教師「とりあえず『とりあえずフォルダ』に入れよう」

ルール6 フォルダ名を工夫する

フォルダ名を工夫します。2021年3月7日なら、「20210307_〇〇式」などとフォルダ名を付けると、時系列での行事に使う資料なら並べ替えてくれるので使いやすいでしょう。また、「★はじめに読む」「★年度のはじめに読む」などのメッセージふうのフォルダ名にして、その中に年度はじめに準備するものを入れるのもおすすめです。先生方との共有フォルダでも、「★体育主任の先生、はじめに読んでください」というフォルダを一番上に置いておくと、伝言付き引き継ぎフォルダになります。

学校全体で使う資料データの整理術

学校全体で使う資料は、毎年すべて保存してあるはずなのですが、学校によっては各資料がバラバラに保存されている場合もあり、いざ使おうとすると困ってしまう……ということもあるようです。おすすめは、校務分掌表に合わせてフォルダをつくることです。毎年4月に配付される校務分掌表に合わせてフォルダ名や階層をつくっておくと、使いたい資料を探すときに、校務分掌表を見ながら、階層をクリックしていくことで簡単に探すことができます。また引き継ぎのときにも便利です。

校務分掌表に合わせてフォルダをつくる

紙資料・教材などの整理術

職員会議の資料や遠足のしおりなど、学校はとにかく紙資料が多いもの。ここでは紙資料の整理のコツを伝授します。

紙資料には期限がある

紙の資料は、クーポン券と同様に期限がどんどん切れていくものです。期限が切れた物は手放すという考えをもつと整理がしやすくなります。運動会や保護者会などの資料は、その行事が終わったらデータ以外は捨てる、もしくは学年で1冊保管し学年の棚に入れておくなど、自分自身では保管しないほうがよいでしょう。

所持品はこまめにふり返る

ぺーパー類や教材は溜まりやすいので、こまめにふり返りをすることが大切。学期ごとに整理する時間をつくるとよいでしょう。一度にすべてを減らせなくても、ふり返りの機会を設けることで、「前回は必要だと思ったけれど、半年たっても使わないなら今後も必要ないだろう」などと判断でき、物も徐々に減っていくはずです。

後で使う資料を細分化

給食指導や生徒指導の方法の資料など、今は使わないけれど、後日使うような資料は、細分化して整理します。「今使っているもの」「今使っていないもの」の他に「半年以内に使うもの」や「1年後に使うもの」などと細かく分類。そして「半年以内に使うもの」は共有ロッカー、「1年後に使うもの」は個人ロッカーなどで保管すると机の中がスッキリ!

コミュニケーションを取る

自分は物を減らしたいタイプなのに、同僚が物を捨てたがらず困っている……という場合は、物を減らす目的をしっかり相手に伝えることが大切。物を整理してほしいと伝えるのではなく、「資料や教材をもっと使いやすくするためにはどうすればよいか」というところから話し合い、「物を減らしたほうがいい」とお互いに納得できればうまくいくはずです。片付けへのモチベーションが高くなる長期休みの前などにコミュニケーションを取るとよいでしょう。

トレーを活用する

トレーを2つ用意し、それぞれ「いる」「いらない」とラベルライターで印刷したテープを貼ります。資料が配付されたら目を通し、「いる」か「いらない」かを判断して、各トレーに分けて入れておきます。2 ~ 3日に1度トレーを確認。「いらない」トレーの中の資料は捨てるか、リサイクルボックスに入れます。「いる」トレーの中の資料ですぐに使うものは、左上の引き出しへ。すぐに使わないものはファイリングして右一番下の引き出しへ入れて整理します。このトレーを机の上に置いておくと、紙資料が配られたときに自分が不在でも、トレーの中に入れてくれるので、机の上が散らかりません。

トレーを活用する

丸山さんおすすめの整理グッズ

無印良品のファイル

プリント類の整理には無印良品のバインダーを使用。A4サイズ、30穴で50枚の透明なリフィルファイルが入り、片面印刷のプリントが100枚綴れます。リフィルファイルは、順番も簡単に変えられ、リフィルポケットの数も増やせるので便利です。

無印良品のファイル

ラベルライター

何がどこにあるのか、物の置き場所を示しておくと、探し物が減るので効率的に仕事ができます。手書きでもよいですが、視認性が落ちてしまうのでラベルライターを活用しています。個人の持ち物にたくさんラベリングをしたい場合は『ピータッチキューブ』がおすすめ。スマホから入力できるので便利です。またラベルは物の置き場所だけでなく、注意喚起など、さまざまな用途に使えます。

ラベルライター
ラベルライター「ピータッチキューブ」(ブラザー)

学校整理収納アドバイザー 丸山 瞬さん 
丸山瞬さん(学校整理収納アドバイザー )

丸山 瞬(まるやま・しゅん)●学校整理収納アドバイザー。小学校教諭として働きながら、整理収納アドバイザーの知識を生かして職員室や学校全体の整理収納を実践。その後「全国の学校を片付ける」ことを目標に学校整理収納アドバイザーとして独立。現在は、片付けによって快適で効率的な職場づくりのサポートをするため、新聞・テレビの取材や講演活動など多方面で活動中。著書に『職員室のモノ、 1t 捨てたら残業へりました!』(学陽書房)がある。

取材・文/出浦文絵 イラスト/柴田亜樹子

『教育技術 小一小二』2021年3月号より

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