単元丸ごと!板書&ノート④ 小5国語「大造じいさんとガン」
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 国語の授業について単元全体の板書とノートの具体例を紹介するシリーズ4回目の教材は、「大造じいさんとガン」(光村図書5年)です。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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目次
「大造じいさんとガン」椋鳩十 作(光村図書5年)
(全8時間)
今回は、2018年に行った「大造じいさんとガン」の実践について単元丸ごとお伝えします。
今年度から使用されている教科書では、指導計画時数が6時間となっています。「大造じいさんとガン」は非常に長い物語で、内容の深みもあります。6時間で行うのは、決して容易なことではないでしょう。紹介する実践から、短くできるところはないか、考えながら読んでくだされば幸いです。
第1次
1時間目 すぐれた表現や物語のみりょくについて、既習内容と結びつけて考える。
単元の言語活動は、「すぐれた表現に着目して読み、物語のみりょくをまとめよう」となっています。
まず、「すぐれた表現」や「物語のみりょく」とは何か、これまでの学習と結びつけて考えました。
児童
- 「すぐれた表現」や「物語のみりょく」について話し合う。
- 「大造じいさんとガン」を読み、すぐれた表現や物語のみりょくを見つける。
- 深く読みたい場面を考え、ネームマグネットを貼り、自分の立場を明らかにする。
- 深く読みたい場面において、どのような問いがあるかを話し合い、個人の問いをもつ。
授業者
- 単元の言語活動を既習事項と結びつけることで、構造や表現の工夫、作者の伝えたいことにも迫れるようにする。
- 深く読みたい場面にネームマグネットを貼って視覚化することで、他者の感じ方に関心をもったり、なぜその場面を深く読みたいと感じたのか議論が生まれたりすることを促す。
- 問いをもたせ、全体で出し合うことで、読みの方向性を確かめる。
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第2次
2・3時間目 物語の設定を確かめる。
1時間で物語の設定を確かめるつもりでしたが、2時間かかりました。子供たちと場面ごとに確かめながら進めていきましたが、子供だけで読み、ワークシートやノートに設定をまとめる時間(グループで読む・一人で読む)、全体で交流する時間という2時間設定にしたほうがよかったと感じました。
児童
- 本文を読み、「時・場所」に線を引く。→出来事を考える手立てとする。
- 物語の中で、経過している時間とその間に起きた出来事を理解する。
授業者
- 設定を押さえながら、時の経過とともに大造じいさんの心情が変化していることに気づかせる。
- 大造じいさんのわなに名前をつけ(つりばりの計略・タニシ五俵の計略・おとりのガンの計略)、出来事を捉えやすくする。
- 設定をまとめていく過程で出てきた児童の気づきはできるだけ板書し、次の時間からの読みへとつなげる。
4時間目 大造じいさんのガンに対する呼び方の変化と、そのわけをとらえる。
初読の交流のときに、児童から「残雪の呼び方が変わっている」という気づきがありました。そこから、どの場面で、どの呼び方がされているかを確かめることを目的に、本文を読んでいきました。
この1時間で残雪の呼び方が変わったわけの答えを出すのではなく、最後に主題を考えるときに、一つの手立てにしてほしいと考え、この1時間を設けました。
児童
- 大造じいさんがガンのことをどのように呼んでいるかを本文から探し、印をつける。
- 呼び方の変化にともなう、大造じいさんの心情の変化を考える。
授業者
- 呼び方の変化について、「なぜ変わったのだろう」や「みんなは鳥に対してどうかな?」と大造じいさんの心情に迫ったり、自分ならどうかと人物の心情と重ねて考えたりできるように補助発問を行う。
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■国語の構造的板書① ~子どもの気づきを引き出す~
■国語の構造的板書② ~二段対応表で比較する~
■国語の構造的板書③ ~逆Yチャートで考えを広げる~
■国語の構造的板書④ ~イメージマップで考えを広げる~
■国語の構造的板書⑤ ~考えを整理する~
■国語の構造的板書⑥ ~感想マトリクス~
5時間目 3場面後半の、大造じいさんの気持ちの変化を読む。
子供たちが読み深めたいとしていた3場面後半を丁寧に読みたいと考えました。そこで、5時間目は大造じいさんを中心に、6時間目は残雪を中心に読み深めました。
児童
- 気持ちの変化が文章にどのように表れるかをとらえる。(情景描写・行動描写・接続詞・呼び方・会話文等)
- 演劇を取り入れて、大造じいさんと残雪、はやぶさの位置関係を考える。
- 大造じいさんの銃を下ろす動作に着目し、本文の書き方や大造じいさんの心情に迫る。
授業者
- 演劇を取り入れることで、語り手の視点を意識させる。
- 演劇によって読み深めた大造じいさんの様子や心情を、「ひきょうなやり方」とは何かを考える具体的な手立てとなるようにする。
6時間目 3場面後半の残雪の様子を読む。
残雪は、野生の鳥として最初から最後まで描かれているため、心情が書かれていません。しかし、大造じいさんの目を通した残雪の様子から、残雪の思いを感じ取ることができます。
前時に大造じいさんを演じたことから生じた、「なぜ、銃を下ろさざるを得なかったのか」という疑問を、残雪の勇ましさや仲間を思う気持ちを結びつけて解決している児童が印象的でした。
児童
- 本文を読み、大造じいさんの目から見た残雪の様子に線を引く。
- 線を引いたところを全体で交流する。
- 線を引いた残雪の様子から読み取れることをグループで話し合い、全体で交流する。
授業者
- 残雪の意志や思いを考えるために、大造じいさんの行動や、残雪の行動を読み取らせる。
7時間目 1時間目に考えた問いと向き合い、4場面の大造じいさんの行動と心情を読む。
この時間は、子供たちに1時間を預けました。これまでの学習を振り返り、問いがどのように解決されたか、また新たな問いは生まれていないかということを投げかけました。また、4場面の大造じいさんの行動と心情についてグループで考えたことを全体で交流する時間をとりました。話合い活動のみだったため、板書はありません。
8時間目 作品の主題に迫る。
児童
- 主題に迫るために、必要な観点を確かめ、話し合う。
- 大造じいさんの心情を中心に、主題を考える。
- 主題についてノートに書いたことを、コラボノートで共有する。
- 一人ひとりの感じ方の違いを知る
授業者
- 主題に迫るために必要な観点について共有することで、これまでの学習と主題をつなげる。
- 児童が全体で交流する内容を板書に残し(ファシリテーターとして進める)、児童の意見の重なりや深まりを色チョークを使って視覚化する。
- 主題について考えたことをノートに書き、その内容をコラボノートで共有することで、多様な考えに触れられるようにする。
次回は、国語の教材分析の方法についてお話しします。
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以下の記事では、綾香先生が「板書」の基本を教えてくれます!
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■「板書」の基本① ~見やすい文字の書き方~
■「板書」の基本② ~低学年の板書のポイント~
■「板書」の基本③ ~児童の意見を広げるポイント 前編~
■「板書」の基本④ ~児童の意見を広げるポイント 後編~
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。