小6外国語:「思考・判断」の見取りのポイントを教科書編集委員が解説
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外国語の授業において、子どもがどのように思考・判断しているのかを見取るポイントとは? 小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生が具体的に教えてくれました。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子
目次
Q1 「夏休みの思い出を紹介しよう。」では、どのように思考・判断を見取ればよいでしょうか。
(東京書籍『New Horizon Elementary6』P.38・39)
A. 文の順番や内容の精査をしている場面で思考・判断を見取ります。
夏休みの思い出を紹介する活動です。事前に、「行った場所・楽しんだこと・食べたもの・感想」の4つを書き溜めて、発表原稿を準備します。4つを紹介する場合、使う動詞が決まってきますが、
言いたいことを伝える文にするには、どんな言葉を当てはめて文をつくろうかな
と、子どもは、思考を重ねます。また、実際に紹介する場面では、
どの順番で発表しようかな
どの部分をふくらませて伝えようかな
と、考える場面があります。
それらの取り組みから、思考の様子が見取れます。
具体的には、言いたいことをどのように英語にしたらよいのかを先生に聞いたり、自分で調べたり、間違えていないかをALTに確認したりしている様子や、記録メモから、「思考・判断」を見取ります。
十人十色の状況となるので、時間内に全員を見取ることができないかもしれません。その時は、発表原稿やノート、プリント等を集めて、授業後に確認してください。
算数で、解き方を「わたしの考え」という形でノートに書くことがあると思います。この場面でも、それをまねて、思考・判断を記述するという方法もあります。
Q2 夏休みの話を聞く活動があります。「聞くこと」では、どのような様子を、思考・判断していると捉えればよいのでしょうか。
(学校図書『Junior TOTAL English 2』 P.56・57)
A. 聞こえた言葉と自分が知っている情報を結び付けて、概要をつかもうとしながら、思考・判断しています。
英語の音声を聞いて、子供たちは、
何か言葉が聞こえてきた。知っている言葉だ
○○って言っている
このように、知っている言葉と照らし合わせて考えます。また、音声の他に、絵などの情報があれば、そこから予測して、
この絵の話かな?
と思考し、音声を聞きながら、概要をつかもうと思考します。
このように、聞く活動では、知っている情報を頼りに、瞬間的に内容を推測しながら、情報を取捨選択しながら判断しています。
つまり、
- 聞くことができた
- 内容が分かった
- 聞こえてきたことの概要がつかめた
という時、思考・判断できていたということになります。
これらは、頭の中で繰り広げられるものなので、なかなか他者からは見えません。
そこで、概要をつかみきる手前で(話を一度だけ聞いた段階、数回聞いたけれど、まだ理解できていない段階など)、どんな言葉が聞こえたのか、発問してみましょう。
聞こえた言葉と自分が知っている情報を結び付けて思考し、概要をつかもうとしている様子が見取れます。教室で数十人いる全員に聞くことは難しいのですが、思考しながら聞いている子どもの様子を気にしていきたいところです。
Q3 「どんなことが書かれているかな。読んでみよう。」という活動があります。「読むこと」の思考・判断のポイントは、何でしょうか。
(三省堂『CROWN.Jr6』P.47)
A.どう読むのか考えながら読んでいるとき、また、読んで内容を理解していったとき、子どもたちは思考・判断をしています。
「読むこと」では、文字の読み方を考える場面や、文章の意味を捉えようとするときに、思考・判断が求められます。例えば、単語をアルファベットがただ並んでいるものではなく、音で読み理解しようとするときに、子どもは思考します。例えば、Happyという単語について、
どんな音で読むのだったかな? Hはエイチって読むのではなくて、確か、驚いた時にハッとしたときのような”ハッ”っていう音だった。そうそう、さっき聞こえたし、ハッピーって読むのだろうな
このように思考しながら読んでいくことになります。
文章の意味を捉える場合にも、思考が働きます。
例えば、いきなり読むのは難しいので、最初は音声を聞きながら目で文字を追いかけますが、その時、知っている言葉を見つけて、
songと書いてあるから、歌に関係するのかな
と、話の内容を一人で考えたり、
パーティーの絵から、
歌を歌って楽しんでいるのかな
ケーキがあるよ
と、友達と話してみたりしながら、内容をつかんでいきます。
繰り返し文字を読みながら、子どもは読めるところを頼りに内容理解を深めます。この時、「読めるところを読む」ことができるのは、読む手掛かりを持っている子どもです。その手掛かりを増やして、概要をつかもうと思考します。
このように、様々な場面で、子どもは思考しながら、読むアクティビティに取り組んでいます。しかし、なかなかその思考の過程を見取ることは難しいものです。そこで、
何について書いてあった? どの文字を手掛かりに読んだのかな?
など、積極的に子どもとやりとりして、子どもの思考の実態を把握するようにしてください。
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長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)
イラスト/横井智美