「作家の時間」はじめてみませんか
連載|ayaya先生のすてきやん通信
「作家の時間」という学び方を知っていますか? 子供が「書くこと」に夢中になるその実践について、Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生に教えていただきました。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
子供が夢中になる「作家の時間」
私は現在、国語の授業づくりの研究加配を務めています。国語授業づくりを通して言語能力を育成し、その取り組みを発信するのが私の仕事です。これに関わって、勤務校ではさまざまな取り組みを行っています。その一つが、朝の学習時間に行っている「作家の時間」です。
みなさんは、「作家の時間」という学び方を聞いたことがありますか?
私が「作家の時間」を知ったのは、今から6年前の2014年、学習会でお世話になっている大阪教育大学教授の住田勝先生に教えていただいたことがきっかけでした。
物語創作について熱心に研究されている住田先生は、「物語を書くこと」を通して、構造的に読む力を身につけたり、お話の仕掛けを読み解いたりする力がつくだけでなく、何よりも楽しく書く子供たちの姿に出会えるとおっしゃっていました。
お話を聞いているうちに、どんどんとやってみたい気持ちが高まり、翌年の2015年、3年生を担任しているときに「作家の時間」をスタートさせました。
作家の時間を始めた子供たちは、いつも目を輝かせて書くことに夢中になっていました。朝の休み時間に書いていたり、夏休みに何冊も作品をつくってきたりと、私が思う以上に子供たちは進んで書くことに取り組んでいました。
「作文を書くことが苦手」と言っていた子供たちは、いつの間にか「作文が得意。お話をつくることが大好き」と話すようになりました。
2015年以来、毎年「作家の時間」をしており、2016年には「読解力・表現力を育成する多読を基にした言語活動のカリキュラム開発」のテーマで科学研究費助成事業も行いました。今年は、研究加配として全学年の朝の学習を運営することになったので、3〜6年生で6月から「作家の時間」を始めています(二学期からは1・2年生でも始める予定です)。
『作家の時間−「書く」ことが好きになる教え方・学び方(実践編)』(2008・新評論)を熟読し、実践を行う中で、自分なりにアレンジした部分もあります。本連載では、うまくいったことや、そうでないことも含めて、「作家の時間」をどのように進めているか、具体的に子供たちに教えるように紹介していければと思います。
しかし、まずは「作家の時間とは何か」ということについての説明が必要ですね。
欧米で広まった「ライティング・ワークショップ」
「ライティング・ワークショップ」は、1980年代から欧米で広がり始めた授業法で、「書く活動」をワークショップ形式で取り組ませるものです。
日本では、「国語」の教科の中に、物語文や説明文を読んだり、文章を書いたり、言葉の決まりについて学習したり、話すことや聞くことの力も養ったりと、多くの内容が含まれます。
一方、アメリカでは、「作文の時間(ライティング・ワークショップ)」と「読む時間(リーディング・ワークショップ)」に分かれ、それぞれ60分の授業時間になっています。
日本で実践するにあたり、『作家の時間−「書く」ことが好きになる教え方・学び方(実践編)』(2008・新評論)を熟読し、45分の授業時間に合うように進めていきます。
「作家の時間」の1単位時間の流れ
- ミニレッスン(5〜10分)
- ひたすら書く時間(30分程度)
- ふりかえり(5分程度)
「ミニレッスン」は、書くために必要な知識や技を短時間で教える時間です。
「ひたすら書く時間」では、子供同士や子供と先生との相談はいつでもOKです。アドバイスや相談をすることで、思考を刺激しあって、より想像力を広げたり、書く力を高めることにつながります。
「ふりかえり」は、よい作品を書いている子や、意欲的に取り組んでいる子をさらに勇気づけるために行います。子供たちの中から一人選び、その児童がレッスンを聞いて工夫したことや、今書いている作品についての紹介、出来上がった作品を読み聞かせたりする時間にします。この代表して話してくれる児童を私は「作家先生」と呼び、子供たちは「作家先生」になることをとても楽しみにしていました。
現在、勤務校で取り組んでいる朝学習では、5分のミニレッスン+10分の書く時間、 別の日の15分を書くために読んだり、続きを書いたりする時間、というように進めています。
次回からは、さらに具体的にお伝えしていきます!
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。