海外コロナ休校下の家庭学習事情:アラブ首長国連邦では…
新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、世界の教育を揺るがしています。日本では自宅学習用課題の作成、オンライン授業など、学校は子どもたちの学力保障に苦心していますが、海外ではいま、どのようなことが試みられているのでしょうか。小学生の子供を持つ海外在住ライターからのリアルな現場リポートです。

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アラブ首長国連邦「一流の教育制度」をめざして
アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに住んでいるライターのアルカッサブ幸子です。新型コロナウイルス感染症拡大のため、アラブ首長国連邦では3月8日から前倒しで春休みに入りました。2週間の休みの間に、学校の先生たちはオンライン学習の準備をしました。ディスタンス・ラーニングは3月22日から始まり、5月17日現在で9週目を迎えています。

政府主導で進化する教育ICT環境
アラブ首長国連邦は、1971年に建国、2021年に建国50周年を迎えます。この節目に向けて、今から10年前に「UAEビジョン2021」が採択されました。世界最高の国をめざし、「一流の教育制度」を含む6つの国家優先事項が示されました。幼稚園から大学まで、当初から教室にはスマートボード(電子黒板)が設置され、現在の子どもたちは最新のICT環境の中で育っています。タブレットは学校に常備され、管理されているので、自宅から持参する必要はありません。
アラビア語で学ぶ eラーニングプラットフォームは2018年に公開されました。「Madrasa」という名称で、アラビア語で「学校」という意味です。対象はUAEのみならず、世界中に暮らす幼稚園から高校3年生までのアラブ人学生です。国語、算数、生物、化学、物理を含む5000もの教育ビデオが無料で公開されています。このプロジェクトには「教育こそが君の未来、人生を導く術になる」とのメッセージを込められており、オンライン、またはアプリを利用してパソコンや携帯電話からアクセスできるようになっています。
そしてUAE教育省は高校2、3年生を対象に「Duroosi」(アラビア語で「研究」を意味します)も開発しました。UAEのカリキュラムに沿った600のチュートリアルが公開されています。
また、学校の先生たちと子どもたちのオンライン学習のためのサイト「Diwan ebook」では、いつでもどこでもUAE教育省の教科書を読み、教科書に沿った学びが可能になっています。