小学生の読解力を伸ばす最良の方法【先生のための学校】

小学校教育の最大の課題とは何でしょうか。 それはひと言でいうならば、「文から情報を得、自分の思いを文で表すことのできる子に育てること」です。 そのために「問い直し・読み直し」と「逐語的読解」とをきっちりと行って身に着けてさせていく必要があります。
執筆/「先生のための学校」校長・久保齋

校長・久保 齋
くぼ・いつき●1949年、京都府京都市生まれ。京都教育大学教育学部哲学専攻卒業。教育アドバイザー。40年以上にわたり「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)」において《読み書き計算》の発達的意義について研究するほか、どの子にも均質で広範な学力をつける一斉授業のあり方を研究・実践し、現在も講演活動を中心に精力的な活動を続けている。
目次
一人ひとりの弱点を見抜く
就学前、親の愛情に育まれて話し言葉・聞き言葉を獲得してきた子が、小学一年生で文字を習い始め、小学校を卒業するときには、本を読み、本から学び、文で自分の思いを表わせる子に育っていきます。
言葉を通しての伝達方法は、音声言語の「話す・聞く」と、文字言語の「読む・書く」の二通りしかありません。私たち小学校の教師は、たった6年間で、子供たちを大人と同じ伝達方法と学習方法をもった人間に育てあげているのです。この点については、私たち小学校教師はもっと自分の仕事に誇りをもち、アピールしていくと同時に、自分たちの仕事の重大さに襟を正さなければなりません。
低学年のとき、とても活発でものしりだった子が、中学年くらいからさっぱり伸びないことがあります。それは、この子が「耳学問・見る学問」のまま止まってしまったからです。知的好奇心は旺盛なのですが、知識獲得の方法をテレビや図鑑などの映像文化に頼り、文字を通して獲得することを怠ってきたのだと言えます。
私たちは、子供たちの表面上の活発さだけに目を奪われず、その子ができるだけ速やかに、しかも確実に「読み言葉・書き言葉」での学習、すなわち文章の読解による知識の獲得へ移行するように導いていかなければなりません。
子供たちを見てみると、明らかに国語力のない子がいます。このような子には読解の初歩からの指導をもう一度行う必要がありますが、読書が好きなのに読解力がないという子もいます。 そのような子は、文章からイメージを追うのは好きなのですが、自分勝手な読みをしています。
文を読むことに抵抗がなく、読書を心地よく感じているのはとてもいいことですが、このような子には、文学教材において自分勝手な読みではなく、作者の意に即した正確な読みを指導することで読書の質を高めてやることと、説明文をしっかり学習させ理論的思考力を養うことが必要です。
私たち小学校教師は、国語の学習を通してクラス全体の読解力を高めるだけでなく、子供たち一人ひとりの弱点を見抜き、その改善の手立てを考えていかなければなりません。
教師の設問で「問い直し」と「読み直し」の力をつける
では、読解力をつけるためには、どのような力が必要なのでしょうか。まずは「音読する力」が必要です。国語の苦手な子は本当によく読み違いをします。間違った読みからは正しい読解はできないので、ゆっくりでよいので、正確な読みの指導が必要です。
次に必要なことは、「問い直す力」です。これが読解力の低い子にはついていないのです。
「問い直す力」とは、こういうことです。
『野原に黄色の花が三本さいていました。』という文を読んで、筆者の言うことがすぐに読み取れなかったら、
「野原に何が咲いていた?」(問い直し)
「花」
「どんな花?」(問い直し)
「黄色」
というふうに、「問い直し → 読み直し → わかる」ということを何度も繰り返して、 読解していくのです。
読解力の低い子は、自分が読解できているのかどうかもわからないのです。だから「問い直す」ことも「読み直す」こともできず、結果として読解できずにいるのです。
この「問い直し」を教師が小さなステップで、 設問として子供たちに出してやります。そうすると、子供たちは設問に答えようとして、「問い直し」「読み直し」をし始めます。こうして、そういうことを何回も何回も繰り返すことによって、ようやく自分で「問い直し」「読み直し」 のできる子、すなわち、読解力のある子に育っていくのです。