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「学校現場のAI活用実践コンテスト2025」応募実践8事例の紹介

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2025年秋に開催された「学校現場のAI活用実践コンテスト2025最終選考会」(共催:小学館「みんなの教育技術編集部、一般社団法人教育AI活用協会)では、全国から46件の素晴らしい実践応募が寄せられました。最終選考会には、その中から選ばれた9組の審査が行われましたが、選外となった応募実践にも素晴らしいものがありました。

本記事では、惜しくも選外となった応募実践のなかから、8つの事例をお伝えします。先生方のAI活用の参考にしていただけると幸いです。先生方みずから制作したプレゼン動画表現にもご注目ください。

ファイナリストの先生方の実践発表は下記記事でご覧ください
「学校現場のAI活用実践コンテスト2025」最終選考会レポート
https://kyoiku.sho.jp/413085/


1. 奈良市立鶴舞小学校:吉水 崇 先生

国語科「詩」の導入:AI活用ラップで言葉のパッション!

奈良市立鶴舞小学校の吉水崇先生は、国語科の「詩」の単元導入において、児童の学習エンジンがかかりにくいという課題を解決するため、生成AIによるラップ作成を導入しました。

この実践では、先生が作成したラップを授業の冒頭5〜10分で利用し、言葉の楽しさやリズムへの関心を高めることを想定しています。具体的には、ChatGPTなどの生成AIに自身の名前に似た言葉を教えさせ、その言葉を使って自己紹介ラップの歌詞を作成させます。この歌詞を音声合成ツールでラップ化することで、リズムに乗って質の保証された教材を迅速に用意できるようになりました。

また、児童自身にラップを作成させる場合もワークシートを活用し、学年ごとの発達段階と学習指導要領(低学年の音のまとまり、中学年のリズム、高学年の反復)に準拠した学習につなげました。

このAI活用により、従来のラップ作成で課題となっていたリズムに乗らない、質に差が出る、時間がかかるといった問題が解消され、肝心の国語活動にスムーズに移行できるという成果が得られました。一方で、授業が盛り上がりすぎるため、学習への切り替えや生徒指導の工夫が必要となるという課題も見られました。


2. 新宿区立富久小学校:小林 耕子 先生

国語科「修飾語」の学習:AIイラスト生成で言葉を演技!

東京都新宿区立富久小学校の小林耕子先生は、小学校三年生の国語科「修飾語を使って書こう」の単元において、生成AIによるイラスト生成を活用した実践を行いました。

この実践は、「修飾語」という言葉に苦手意識を持つ児童や、学習活動の途中で諦めてしまう特別な支援を要する児童への対応が課題となる中で、児童が主体的に楽しく取り組める手段として生成AIに着目して始まりました。具体的には、「花が咲く」という文に対し、児童が考えた修飾語(例:赤い、そっと)をAIにプロンプトとして入力し、そのイメージをイラスト化しました。生成されたAIイラストを学級全体で共有することで、視覚的に修飾語の働きを捉えることができました。その結果、実践前に8割の児童が「難しそう」と感じていたのに対し、実践後には9割の児童が「楽しかった」と回答し、すべての児童が主体的に活動に取り組めるようになりました。

この手法は、意味の理解が難しい文章や視覚的にイメージさせたい文章を扱う際に幅広く応用可能であり、操作手順も難しくないため、様々な発達段階の児童が使うことができる汎用性の高い実践であると考察されています。


3. 八尾市立龍華小学校:平尾 勇樹 先生

外国語授業:AI作成アプリでキャッシュレス決済を疑似体験

大阪府八尾市立龍華小学校の平尾勇樹先生は、外国語の買い物学習において、生成AIを活用した革新的な授業を実践しました。

これまでの授業では、電卓操作に時間がかかり英語でのやり取りに十分な時間が取れないことや、現代に合ったキャッシュレス決済のリアルな体験を授業で再現することが難しいという課題がありました。そこで、平尾氏はGoogleの生成AIツール「Gemini Canvas」を使用し、特別な知識なしで注文アプリと支払いアプリを自作しました。このアプリにより、メニューのQRコードを読み込むだけで合計金額が算出され、支払い金額のQRコードが生成されるシステムを構築。児童は客側と店側に分かれ、英語でのやり取りとともに、アプリを使って所持金から支払いを差し引くキャッシュレス決済の疑似体験を行いました。

授業後のアンケートでは、半数の児童が計算機よりも間違いが減ったと感じ、半数以上がキャッシュレス決済の疑似体験ができたと回答しました。平尾氏はAIは教材を自動で作成するものではなく、教師の発想を基盤に具現化を支援し、教師の創造性を下支えできるということを示しました。


4. 二宮町立一色小学校:安藤 通晃 先生

社会科「未来の五円硬貨」:AI画像生成で子どもの思考を可視化

二宮町立一色小学校の安藤通晃先生は、社会科で五円硬貨を題材とした学習に、生成AIによる画像生成を組み込みました。小学生は生成AIを利用できないという自治体のルールがある状況下で、教師が積極的にAIを使う場面を見せることで、子どもたちの情報活用能力や言語能力、そして適切なAIの使い方を学ぶ機会としました。

授業では、五円硬貨のデザインの意味を学んだ後、「今後デザインを変更するならどんなイラストを追加したいか」と子どもたちに問いかけました。子どもたちから出た「宇宙」「人工知能」「地球温暖化対策」といった意見をもとに、教師はその場でCanva AIにプロンプトを入力し、未来の五円玉の画像を生成して提示しました。生成された画像に対し、子どもたちからは「今の方がいい」という納得しない反応が多く見られ、この現象が、生成AIを批判的に捉える上で非常に良い機会になったと考察されています。また、生成物を見たことで、新しい考えが浮かんだり、昔の五円硬貨を調べようとしたりするなど、子どもたちがより深く考え、学びの深め方を知るきっかけにもなりました。

安藤先生は、教師がAIを積極的に授業で見せていくことで、子どもも教師もこれまで以上に深く考えるようになり、学びの選択肢が増えると述べています。


5. 宝仙学園小学校:尾形 英亮 先生

国語科:AIとの対話で「思考の過程」をメタ認知

宝仙学園小学校の尾形英亮先生は、小学3年生の国語科の授業で、AIの仕組みや特徴を理解させるために「使いながら考えさせていく」というスタンスで生成AI(スクールAI)を導入しました。

このAIは、教師が事前に「答えを教えず、思考を促す質問を返す」ように具体的なプロンプトでカスタマイズされており、子どもたちの思考を深めるパートナーとして機能しました。例えば、「お化け」のイメージをAIと対話する中で、AIは「どんな?」「どうして?」といった質問を返し続け、子どもたちの思考を促しました。また、担任の先生のイメージをAIに尋ねた際に「分からない」という回答を得ることで、AIは大量のデータを持つが、「気持ちや思い出」といった人と人との関わりでしか作り出せないものがあるというAIの限界を理解しました。さらに、小説の読解で色に関する言葉をAIに尋ね、抽象的なイメージを教えてもらうことで、物語を読解する新たな視点を発見しました。AIとのやり取りのログは、子どもたちのメタ認知や教師のフィードバックに活用されました。

子どもたちの振り返りからは、「考える過程は人にしか作れない」「いつまでも人であり続けたい」といった、人間として生きる意味を深く考察する言葉が見られ、AI時代だからこそ「好きや得意を伸ばす」教科教育の意義を再確認する実践となりました。


6. 豊橋市立二川小学校:石黒 敦士 先生

総合:AI動画生成でリアルな災害仮想体験と危機感の醸成

豊橋市立二川小学校の石黒敦士先生は、総合的な学習の時間における防災学習で、OpenAIの動画生成AI「Sora 2」を活用し、リアルな災害の仮想体験を提供しました。

従来の防災学習では実際の体験が難しく、子どもたちが災害の危険性を自分ごととして肌で感じることが難しいという課題がありました。そこで、石黒氏は所属校の写真とプロンプトを使用し、校舎が倒壊し、体育館が避難者でいっぱいになった南海トラフ地震後の避難所の様子のイメージ映像をSora 2で生成し、授業で提示しました。子どもたちは、見慣れた体育館の光景が一変した映像を見て、災害を自分ごととして捉え始め、避難所の密集した空間から「人に関わる不安」を中心に様々な視点から不安を語り出しました。

この実践により、「リアルな仮想体験によって心が動く」「視覚的な理解による学びの進化」という生成AI活用の利点が確認されました。Sora 2は、比較的思い描いた動画を生成し、音声も自動で加えてくれるため、防災学習において効果的な教材作成が可能となりました。今後は、この仮想体験から得た危機感を、実際の校区防災訓練などの現実での体験に繋げ、子どもたちが「災害に強いまちづくりのために自分にできること」を考え、自己決定できるように支援していくとしています。


7. 柏市立風早中学校:鴇田 正樹 先生

国語科「枕草子」:AIによる古文生成と画像生成で古典を自分ごと化

柏市立風早中学校の鴇田正樹先生は、国語科の古典学習における「学習者自身との距離感」という課題を是正するため、生成AIを活用し、「現代版枕草子」の作成を試みました。

この実践の主テーマは、「現代の風景を古文の世界に反映させるためにAIをどのように活用できるか」というものでした。具体的には、古文生成にはGemini、画像生成にはCanva AIを使用し、生徒が作成した現代の季節の魅力を表現した現代文をプロンプトとして入力することで、枕草子の特徴を活かした古文を生成させました。さらに、生徒が細かく指示を出すことで、自身の想像する形に近い古文へと改良していきました。その後、確定した古文の内容に合う情景を画像生成AIで出力し、古文と画像を組み合わせた作品を完成させました。

この「現代版枕草子」の作成を通じて、生徒は古典学習を自分ごととして捉えることができ、現代と言語感覚が共通する部分や相違する部分を確認できました。また、生成AIを自身の思考を広げるためのツールとして認識し、文章生成や画像生成の特性を理解するという効果も確認されました。

鴇田先生は、このリライトの経験を古典だけでなく、生徒が書いた自身の作文などの修正・改良にも生かしていきたいと展望を述べています。


8. 奈良市立一条高等学校付属中学校:北側 真敬 先生

AIバディ活用:探究学科教員としての挑戦

奈良市立一条高等学校付属中学校の北側真敬先生は、「ICTを最大限に活用した探究的な学びの創造」を研究主題に掲げ、生成AIを生徒一人ひとりに寄り添う学習パートナー(AIバディ)として活用する挑戦を行いました。

この実践は、生徒の約81%がAIを利用経験を持つ一方で「考える力が弱くなる」という懸念を抱えているというギャップ、そして数学授業における一斉授業の受け身になりやすいという二つの大きな課題を解決するために着想されました。具体的には、Geminiを活用して教科書から対話形式の台本を生成し、音声合成機能で教材化することで、生徒が自分のペースで学んだり、仲間との対話を通じて理解を深めたりする「AI音声解説」を導入。さらに、方程式の解法をAIに作詞・作曲させた「方程式攻略AIソング」で、思考のプロセスを楽しく記憶に定着させました。また、「AIに教えるチャレンジ」では、あえて間違えるAIの先生役を生徒が担うことで、自身の理解の曖昧さに気づき、メタ認知能力を育成しました。

その他にも、生徒の好きなことと教科書の問題を掛け合わせた「世界に一つだけのオリジナル問題」の作成や、自作の関数学習アプリなどを集約したウェブサイト「Gemini Hub」の開設を通じて、学習意欲を飛躍的に向上させました。この結果、アンケートでは生徒の100%が「これまでの授業より良くなった点があった」と実感し、97.4%が授業が楽しい、92.3%がAIは学習の役に立つと回答しました。

この実践は、特別な環境や設備は不要で、教員と生徒がともに試行錯誤する姿勢さえあれば、どの学校、どの教科でも応用できると北側先生は評価しています。


以上、ご応募いただいたすべての先生方の情熱と先進性に心より敬意を表します。この貴重な知見を明日からの教育実践につなげ、共にAI時代の新しい学びの場を創造していきましょう。

(編集部)

次回「学校現場のAI活用実践コンテスト2026(仮)」は2026年秋に開催予定です。準備が整い次第、本サイトにて概要をお知らせいたします。

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