「子供を主語にした学びの実践」現場教師が語るこれからの授業デザイン(第4回)〈デジタル×深い学び〉
東京都教育委員会が取り組む「デジタルを活用したこれからの学び(以下:これまな)」は、子供たち一人ひとりが主体的に学び、自らの力で未来を切り開いていけるように育てることをめざしています。今回、東京都教育庁が発信したデジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』にも登場された先生方の座談会を4回に分けてお届けしています。
前回の第3回では、「これまな」の授業実践を学校全体へ広める方法やその過程での苦労や工夫についてお聞きしました。最終回は先生方の理想の教師像、教室像ついてお話を伺いました(全4回)。

この記事は、連続企画『「デジタル×深い学び」の授業デザインReport』の18回目です。記事一覧はこちら
- 座談会メンバー紹介
●東久留米市立本村小学校
副校長 池田 守 先生

●台東区立上野小学校
倉澤貴文 先生(3年生担任)

●西東京市立上向台小学校
戸原真彦 先生(2年生担任)

●東京都立三鷹中等教育学校
仁田勇介 先生(数学科・6年生[高校3年生]担任)

目次
理想の教師・教室像
先生たちが思い描く理想の教師像や教室像について、日々の工夫や考えを交えながらお話を伺いました。今回、参加してくださった先生方はどんな未来を思い描いているのでしょうか。
仁田先生:教師として昔から変わらず大事にしていることがあります。それは、生徒が「学ぶことは楽しい」と感じられる授業をつくることです。新しい課題を出したときに「えー!」と嫌そうな声が出たり、やらされ感のある雰囲気になったりする授業は、本当の学びではないと思っています。
子供にとって、新しいことができるようになるのは本来とてもうれしいことです。例えば、私の息子もドアノブが開けられるようになったとき、何度も挑戦しては「できた!」と喜んでいました。その「できた!」という感覚を、授業でも大切にしたいです。

「デジタルを活用したこれからの学び」の形が、今のやり方で正しいかどうかは分かりません。ですが、教師が教室に入ってきた瞬間に、生徒が「今日は新しいことがあるぞ」とワクワクできる学校でありたいと考えています。さらに言えば、教師が入る前から自分たちで学び始めている。そんな教室が理想です。
倉澤先生:教師として、子供を楽しませることだけを目的にはしていません。大切なのは、教師の有無に関係なく、子供たち自身が教室や学校という空間でのびのびと学び、生活し、友達と一緒に生き生きと過ごすことです。そのために学校を第二の家庭のように感じ、安心して活動できる環境をつくりたいと思っています。

毎年、学年ごとに「ファミリー」と呼ぶグループをつくっています。今年は、もう一人の3年担任とともに、教師という立場ではなく、父代わり、母代わりという立場で子供たちと関わっています。
仁田先生:学級ではなく、学年全体で一つの「ファミリー」という考え方は素敵ですね。隣の学級の友達も大切な仲間として意識できますね。
倉澤先生:ありがとうございます。また、教室は全員が黒板を向く形ではなく、班ごとに向き合って話せる配置にしています。教師も前に立つだけでなく、様々な場所で子供たちと他愛のない話をしたり、授業の中で問いを投げて一緒に考えたりする場を設けています。そこからいろいろな知識や経験を得て、子供たちが自信をもって成長してくれることを願っています。
知識や理解も大切ですが、それだけでは十分ではありません。自分から考えて行動し、人のためになったことが自分に返ってくる喜びや充実感を味わえる学校生活を送ってほしいと考えています。
子供も教師も自分らしく学べる教室に
池田先生:戸原先生はいかがですか?
戸原先生:「これまな」の授業スタイルの前から強く意識していたのは、多様な子供たちがいる中で、お互いを認め合えることが教室の土台として非常に大切だということです。最近は「これをやったら体罰になる」といった知識だけが先行してしまうことがあります。だからこそ、今の時代、一斉指導だけでは対応しきれないと感じています。多様性が求められる中で、「自分たちでやっていいんだ!」という安心感を与えることが重要だと思います。