小4理科「季節と生物(春)」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小4理科「季節と生物(春)」の板書例、教師の発問、想定される子どもの発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。なお、今回は「季節と生物(春・夏)」のうち、「春」の授業の詳細を掲載します。

執筆/福岡県北九州市立清水小学校教諭・大西彩那
福岡県北九州市立新道寺小学校教諭・山田和樹
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立祝町小学校長・平川信乃
福岡県北九州市立鞘ヶ谷小学校教頭・安田愛
目次
単元目標
動物を探したり植物を育てたりしながら、動物の活動や植物の成長の様子と季節の変化に着目して、それらを関係付けて、身近な動物の活動や植物の成長と環境との関わりを調べることを通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や生物を愛護する態度、主体的に問題を解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①動物の活動や植物の成長は、暖かい季節、寒い季節などによってちがいがあることを理解している。
②身近な動物や植物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①身近な動物や植物について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
②身近な動物や植物について、観察などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①身近な動物や植物についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②身近な動物や植物について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
【春】総時数 5時間
第1次 春の生物のようすを調べる。
1~2 春の生物のようすについて問題を見いだし、予想し、観察計画を立てる。(授業の詳細【春】①)
思考・判断・表現①
身近な動物や植物について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
3 気温と動物のようすを関係付けて調べる。(授業の詳細【春】②)
思考・判断・表現②
身近な動物や植物について、観察などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈行動観察・記録分析〉
4 種をまき、気温と植物のようすを関係付けながら調べる。(授業の詳細【春】③)
知識・技能②
身近な動物や植物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈発言分析・記述分析〉
5 調べた結果をもとに、気温と春のようすの関係についてまとめる。
知識・技能①
動物の活動や植物の成長は、暖かい季節、寒い季節などによってちがいがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
身近な動物や植物についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
【夏】総時数 5時間
第2次 夏の生物のようすを調べる。
1 夏の生物のようすについて問題を見いだし、予想し、観察計画を立てる。
思考・判断・表現①
身近な動物や植物について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
2~3 気温と生物のようすを関係付けて調べる。
知識・技能②
身近な動物や植物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈発言分析・記述分析〉
4 気温と夏の生物のようすの関係についてまとめる。
思考・判断・表現②
身近な動物や植物について、観察などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈行動観察・記録分析〉
5 春と夏の生物について調べた結果をもとに、気温と生物の関係についてまとめる。
知識・技能①
動物の活動や植物の成長は、暖かい季節、寒い季節などによってちがいがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
身近な動物や植物について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細【春】①
第1次 春の生物のようすを調べる。
1~2 春の生物のようすについて問題を見いだし、予想し、観察計画を立てる。
身近な動物や植物について既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現できる。
①問題を見いだす
〈観察後〉
この前よりも、生物がたくさんいたよ。
サクラは葉をつけていたね。様子が変わっている生物がほかにもいそうだね。
渡り廊下にツバメが巣をつくっていました。ツバメのひなが顔を出しているのを見ました。
動物も植物も春の始まりと様子が少しちがうようですが、どうしてなのでしょうか。
冬から春、そして夏に向かっているから、やっぱり季節によって生物の様子も変化するのかな。
季節が関係あるのなら、気温が関係しているんじゃないかな。
生物の様子は季節によってどのように変わるのだろうか。
②予想する
ヒマワリやアサガオは夏に向けて大きく育ったから、植物は夏になると成長すると思う。
夏にたくさん虫とりをしたよ。あたたかくなると虫も増えると思うな。
生物の様子の変化は、夏になってあたたかくなることが関係しているのかもしれないね。
これまでの生活科や理科で学習したことや観察したことなどをもとにして、予想や仮説が発想できるようにしましょう。生活科で飼育した動物や栽培した植物、観察した生物を指導した教師に確認することで、これまでの学習とつなぐことができるようにしましょう。
③解決方法を考える
気温と生物の様子に関係があるのか、季節ごとに調べていこう。
ヒマワリみたいに植物は夏に近づくと大きく育つのかな。何か植物を育てれば、季節ごとの成長の様子がわかるね。
ツルレイシやヘチマという植物があります。種から育てて観察することができますよ。
生物の様子や気温も記録していこう。
観察の記録方法としては「観察カード」だけではなく、ICT端末を利用して写真を記録する方法もあります。「観察カード」と「写真記録」のどちらにも利点がありますので、併用することがおすすめです。動画を撮影しておけば、動物の行動も記録することができます。また、観察カード自体も撮影しデータ化すれば、ICT機器上で観察カードを並べて季節による変化を比較したり、交流したりする際に便利です。
授業の詳細【春】②
3 気温と動物のようすを関係付けて調べる。
身近な動物について観察などを行い、得られた結果を基に考察し、表現できる。
④観察をする
春の動物や植物について観察を行う。(安全指導)

⑤結果の処理

⑥結果をもとに考察する(気温と動物のようすについて)
ツバメのひなが生まれていたよ。
モンシロチョウがアブラナの周りを飛び回っていて、気温が上がるにつれて数が増えていたよ。
どの動物も活発に動くようになってきたことや数が増えてきたっていえるかな。
子どもは自分の調べた動物を中心に考察しますが、観察結果を大型モニターなどに並べて表示したり、それぞれの動物のようすを伝えあったりすることで、他の動物についても合わせて考察するようになります。また、春になって、気温が上がってきたときの動物のようすについて差異点や共通点を見いだすことにつながります。差異点には着目しやすいのですが、共通点に着目した子どもの発言を価値づけたり称賛したりすることで、どの子どもも共通点について見いだすことができるようにしましょう。
授業の詳細【春】③
4 種をまき、気温と植物のようすを関係付けながら調べる。
身近な植物について、種をまき、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
ツルレイシ(ヘチマ)は、植える前に種の観察をします。観察を終えた種は、牛乳パックでつくった鉢などにまきます。
ツルレイシの種は、観察の前夜から一晩水につけておくと発芽しやすくなります。また、植える前には、種を下の図のようにカットしておくことでも発芽しやすくなります(種の数に余裕があれば、観察するものと、一部カットして植えるものを別に準備するのもよいです)。
また、種の袋には「発芽率」が示されています。植えれば必ず発芽するわけではありませんので、事前に確認し、1人2個くらい植えるとよいでしょう。数に余裕がないときは、教師が予備の種をまいておくと安心です。

今後も継続して観察し、記録していくことを全体で共有する。
早く芽が出るといいな。これからも、お世話と観察を続け、記録していきます。
ツルレイシの記録が2~3枚たまった頃、次時の学習を行います。(発芽→成長)
ツルレイシ(ヘチマ)は順調に成長していますか?
子葉の後、違う形の葉も出て、ぐんぐん大きくなっています。葉の数も増えました。
つるがのびてきているので長さもはかっているよ。気温と関係がありそうだね。
気温も記録していますが、変化はありましたか。
春の始まりの頃は肌寒かったけど、少し暖かくなってきました。これから夏に向けてもっと暖かくなると思います。ツルレイシももっと成長するかな。
では、今日の様子を観察し、カードやタブレットに記録しましょう。
結果の交流では、具体的な数値などの記録をもとに継時比較を行い、成長や変化をとらえます。


植物の成長を記録する際には、気温と葉や茎などの長さや太さ(成長の様子)を必ず残すことを子どもと確認しましょう。植物の観察のポイントはほかにも「葉の数」「葉の色」「手触り」などが考えられます。それらをもとに、成長の様子と季節や気温と関係付けて考えていけるようにしましょう。記録において大切なことは、その記録をもとに、予想や仮説が検証できるのか、問題を解決することができるのかといったことです。記録は何のためにするのかを子どもと話し合うことで、どのような記録がよいのかを確認するようにしましょう。
安全指導
観察の際は、毒やトゲのある生物と遭遇する可能性があります。見かけてもむやみに触らないよう、十分な安全指導を行います。下見を行ったうえで、どのような生物が危険かを事前に指導し、近づかないように注意しましょう。
動植物へのアレルギーがある子どもの確認も必要です。また、野外観察を行う際は、安全のため長袖・長ズボン・帽子を基本にします。ただし、外は暑いので脱着可能なものを選び、水分補給を適宜行うように指導しましょう。
放課後や休日に見付けたものを記録する際は、①危険がない場所であること、②人に迷惑をかけないことなどを確認し、事故にあったり、ICT端末を破損したりすることがないよう、十分に安全指導を行いましょう。可能であれば保護者へ協力を呼びかけましょう。
イラスト/難波孝