小5国語「銀色の裏地」板書の技術

今回の教材は、「銀色の裏地」です。本単元の目標は、「人物の心情や人物どうしの関わりをとらえ、印象に残ったことを伝え合おう」になります。そのため、主人公・理緒の心情や他の登場人物との関係を読み取り、図に表したり、主人公・理緒と「高橋さん」との関係の変化をまとめ、理緒の心情の変化を矢印の色で捉えたりするなど、中心人物とその他の登場人物の関係や心情の変化を理解しやすくする板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校主幹教諭・田中崇亮(せせらぎの会)
単元名 人物の心情や人物どうしの関わりをとらえ、印象に残ったことを伝え合おう
教材名 「銀色の裏地」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全6時間)
- 教材の「銀色の裏地」を読み、登場人物や物語の設定を確かめ、学習計画を立てる。
- 主人公・理緒の心情や他の登場人物との関係を読み取り、図に表す。
- (※2と同様)
- 主人公・理緒と「高橋さん」との関係の変化をまとめ、理緒の心情の変化を捉える。
- 物語の中で共感したことや印象に残ったことについて、自分の経験と重ねながら感想をまとめる。
- 感想を伝え合い、学習のまとめをする。
板書の基本
〇中心人物とその他の登場人物の関係が分かりやすくなる板書
登場人物の関係を図で表すときに、物語の中心人物が一目で分かるように板書すると、関係の変化を理解しやすくなります。
2・3/6時間目では、物語を「始業式の後」「席がえの日」「放課後」と3つの場面に分け、時系列に合わせて登場人物の関係を図に表します。2時間続きで授業を行い、2時間目では、「始業式の後」の場面について丁寧に指導し、教師と一緒に人物の関係を図に表すことができるようにします。3時間目では、「席がえの日」と「放課後」の場面について、人物の関係を子供たち自身が図に表していきます。どの場面でも、主人公である理緒の名前を黒板の上部に板書し、それぞれの場面で主に理緒と関わる登場人物の名前を黒板の下部に板書することで、「理緒が中心人物であること」「理緒と他の登場人物との関わりの変化を読み取っていくこと」が分かりやすくなるようにします。
〇物語を通した心情の変化を理解しやすくする板書
心情の変化を線で表す「心情曲線」を使うと、視覚的に変化が捉えやすくなり、理解が深まります。
4/6時間目では、2・3/6時間目でまとめた図を手がかりにして、それぞれの場面での理緒の心情を想像し、板書します。3つの場面について板書した後、後ろ向きな気持ちのときは青色チョークで下向きの線をかき、前向きな気持ちのときは赤色チョークで上向きの線をかくことで、高橋さんに銀色の裏地の話を聞いたところから理緒の気持ちが大きく変化していることを理解しやすくします。
板書を利用した授業の進め方(2・3/6時間目)
1 学習の見通しをもつ
日付・題名・作者を板書し、本時では登場人物の関係を図で整理しながら理緒の心情を想像することを確かめ、めあてを板書します。理緒の心情を想像しやすくするために、場面ごとに「○○な理緒」の○○に当てはまる心情を表す言葉を考えていくことを伝え、板書します。また、人物同士の関係や理緒の心情を想像するには「様子や表情の表現」「心の中のセリフ」「対比」に着目するとよいことを指導し、黄色チョークで板書します。
2 「始業式の後」の場面について、登場人物の関係を図に整理する(教師と一緒に共同で取り組む)
「始業式の後」の場面について登場人物の関係を図に整理するときは、以下の手順で指導します。
子供には、場面の見出しと人物の名前を書き入れる枠を示したワークシートを配ります。
①「 始業式の後」と見出しを板書し、物語の中心人物である理緒の名前を上部に板書する。理緒と大きく関わる登場人物を確認し、理緒の名前の下に間を空けて「希恵 あかね」の名前を板書する。
②3人が「仲よしグループ」だったことを確かめ、全体を点線で囲み「仲よしグループ」と板書する。
③希恵とあかねは「同じクラス」になり、理緒が「別のクラス」になった状況を確かめ、それぞれの名前のそばに板書する。
④「始業式の後」の場面で、理緒や希恵、あかねの心情が分かる叙述に線を引かせる。その際、前向きな気持ちが表れているところは赤い線で、後ろ向きな気持ちが表れているところは青い線で引かせる。
⑤線を引いた部分を発表させ、白色チョークで板書する。発表された叙述をもとに、理緒や希恵、あかねがどんな心情かを想像し、発表させ「イライラ」「不満」「さびしさ」「やさしさ」「はげまし」などと黄色チョークで書き足す。
⑥黄色チョークで書いたことをもとに、理緒から希恵やあかねへは、クラスが離れて寂しい気持ちや不満に思う気持ちがあるため青色チョークで矢印を引く。希恵やあかねから理緒へは、励ましや優しさの気持ちがあるため赤色チョークで矢印を引く。
⑦板書した図を手がかりに、「始業式の後」の場面の理緒はどんな理緒かを想像させ、「一人ぼっちの理緒」など、理緒の心情に合致する言葉を発表させて、名前の近くに黄色チョークでかっこを付けながら板書する。
※(2/6時間目はここまで進める。)
3 「席がえの日」「放課後」の場面について登場人物の関係を図に整理する
(「始業式の後」の場面の学習を生かして、子供自身で取り組む)
「始業式の後」の場面をまとめたときと同じように、見出しと理緒の名前を板書します。この場面で、理緒と大きく関わる高橋さんについては、場面の途中で(理緒がもつ)印象が変わるところがあるため、黒板の下部に「となりにすわる高橋さん」「給食のときの高橋さん」と名前を並べて書き、矢印でつなぐことで変化が分かるようにします。お母さんや希恵、あかねについては理緒の名前の横に小さめに板書します。
ここまで進めたら、2の手順を想起させながら、子供が自分自身で、心情が表れている叙述や心情を想像した言葉、赤い矢印(前向きな気持ち)、青い矢印(後ろ向きな気持ち)を図に書き込む1人学習の時間を取ります。
1人学習で書き込んだことを発表させ、学級全体で共有しながら板書していきます。板書したことを手がかりに子供が想像した「○○な理緒(板書では「もやもやな理緒」)」を発表させ、名前の近くに黄色チョークでかっこを付けながら板書します。
「放課後」の場面についても、同じ手順で学習を進めます。
※前向きな気持ちと後ろ向きな気持ちが入り混じる部分は青色チョークと赤色チョークを重ね、点線で板書しています。
板書を利用した授業の進め方(4/6時間目)
1 本時のめあてを確かめる
前時にまとめた登場人物同士の関係を表した図の板書を大型テレビなどで表示し、本時ではその図を手がかりにして理緒の心情の変化を理解していくことを確かめ、めあてを板書します。
2 前時の学習からそれぞれの場面の「○○な理緒」を振り返る
前時にまとめた、それぞれの場面の「○○な理緒」(本原稿では、一人ぼっちの理緒・
もやもやな理緒・
新しい友だちをみつけた理緒)について、前時の学習を振り返りながら確かめ、間を空けて見出しとして板書します。それぞれの場面の理緒の状況について確かめ、見出しのそばにかっこ書きで板書します。
3 それぞれの場面の理緒の詳しい心情を確かめる
前時の板書を手がかりに、3つの場面でそれぞれ理緒がどんな心情かを発表させ、箇条書きで板書します。後ろ向きな心情には青い点を付けて板書し、前向きな心情には赤い点を付けて板書します。
4 3で書き出した心情をもとに、心情曲線を書き込む
それぞれの場面で、理緒の心情が全体的に後ろ向きであるか前向きであるかを考え、発表させ、後ろ向きであれば青色チョークで左に下がっていくように線を板書し、前向きであれば赤色チョークで左に上がっていくように線を引きます。前向きな心情と後ろ向きな心情が入り混じっている場合には赤色・青色両方のチョークを重ねて線を引きます。
5 心情曲線から、理緒の心情が大きく変わったところを確かめる
4で書き込んだ心情曲線で、理緒の心情が大きく変わっているところを全体で確かめます。高橋さんと「銀色の裏地」について話をしたところから大きく変化していることに気付かせ、心情曲線が上向きに変わっているところに赤色チョークで「銀色の裏地」と板書します。
6 理緒の変化をまとめた文を考える
箇条書きで板書した理緒の心情や心情曲線をもとに理緒の変化を文にまとめます。
「( )だった理緒が、( )して、( )なった。」と板書して、かっこに当てはまる言葉を考えさせます。その際、かっこをつなげる言葉はかっこの中に合わせて変えてもよいことを伝えます。子供が考えた文を発表させ、全体で共有します。
【子供の考えの例】
・(仲よしだった2人とクラスがはなれて落ち込んでいた)理緒が、(高橋さんに銀色の裏地の話を聞い)て、(高橋さんと仲よくなれそうと前向きに)なった。
・(クラスがえに不満でさびしい気持ちだった)理緒が、(高橋さんと話したことに)よって、(明るい気持ちに)なった。
など
構成/浅原孝子