図工で中学年の子供たちが発する「見てほしい!」の声には、制作意図をくみ取るリアクションを!

埼玉県公立小・中学校教諭

坂齊諒一(さかさい りょういち)
いちばん楽しいアートバナー

低学年段階での見てほしいという気持ちを満たす声掛けに続いて、今回は中学年編です。低学年であったような「先生見て見て!」という声は少し減って、恥じらいや、声を掛けられることに対しての嫌悪感などが顔を見せ始めますが、心の奥底には「見てほしい!」という気持ちがあります。今回の記事では前面に出てこない、見てほしいという気持ちを満たす声かけについて考えていきます。

題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一

連載【いちばん楽しいアート】#10

1、「先生見て見て!」の声は減るが、見てほしい気持ちは変わらない

低学年での授業では、子供たちから話しかけられたときの内容は、そのほとんどが「ねぇ見て見て!」というものです。これに対して、中学年では少し様子が変わってきます。
やはり「見てほしい、関わりたい」という気持ちを持っていることは変わらないのですが、低学年に比べてストレートな表現は減る傾向にあります。
(先生と児童の関係が良好であれば、関係なく「見て!」と言われますが、、。)
これは子供たちの気持ちが、「ただ単に褒められる言葉がほしい」という段階から、もう1段ステップアップしたと捉えられるでしょう。
それは言い換えれば「根拠がほしい」ということです。
低学年の場合は高めのテンションと大げさな身ぶり手ぶりがあれば、勢いでなんとかなってしまう部分があります。しかし、中学年段階ではより具体的な「見て欲しいを満たす声掛け」が必要となります。

2、筋の通った「素敵を見付けた声掛け」をしよう

基本的な声掛けの方法は変わりませんので、どのような声かけをしたらよいのかは、以下の記事をご覧ください。
>>児童への図工的「ほめ言葉」をトレーニングして、楽しく自由な図工の授業をつくろう!
低学年段階では、「見て!」とだけ伝えてくる場合が多いです。そのため、こちらが作品を見て素敵を見付けて声かけをする必要があります。
しかし、中学年では「見てほしい」だけでなく、「こんな風に描きました」と説明する子も出てきたりするのです。子供は、そんな自分の制作意図をどう捉えてくれるか、という具体的なリアクションを求めています。
「これを描きました!」「こんな風にしてみました!」という声に対しては、それに対して素敵を見付けると児童の気持ちがより満たされるでしょう。

例えば、

この色の合わせ方がきれいだと思うんですよね。

本当だ! きれい! 緑と黄色と赤がいい具合に混ざって、クリスマスを連想するね!

木が踊ってるみたいに描いてみたんです。

面白いことを考えたね! 踊っているように見えるよ! 先生も踊りたくなってきた!

のように、会話ができると児童の満足度がより高まります。

イメージ 先生に絵を見せる子供

3、少し砕けた言葉遣いが出てきたら、チャンス

中学年になってくると生意気、礼儀がなっていない、と捉えられるような言動が端々に出てくるかもしれません。先生に「見てください!」と声を掛けたけれど、返ってきた反応が思ったものと違った、先生が言ったことがよく理解できなかった、そのような理由で「何言ってんの?」「違うんだけど」のような返事が来るかもしれません。
しかし、これはチャンスです。砕けた反応があるということは、距離が縮まったということです。
先生を馬鹿にしているということではありません。
冷静に捉えると、本当に馬鹿にしている態度と、距離を縮めたいがための砕けた言動や態度との違いは感じられることと思います。授業のルールや雰囲気を壊さないように、その反応から楽しい雰囲気を作っていけるといいですね。

イラスト/坂齊諒一


坂齊諒一

【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。

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